見出し画像

私の好きな和菓子


私には好きな和菓子があります。

それは叶匠壽庵(かのうしょうじゅあん)さんの「あも」という和菓子です。


私と叶匠壽庵の出会い

叶匠壽庵さんとは滋賀県に本店を構える和菓子屋さんです。

ホームページでは「老舗」と言っていますが、創業は昭和33年、西暦だと1958年ですね……和菓子業界において、100年経ってない企業は老舗と言っていいのか、私にはわかりません……。



関東の片隅に住んでいる私が叶匠壽庵さんと出会ったのは、西武池袋のデパートでした。


私が高校3年の時、ちょうど受験期真っ只中の1月のことです。

センター試験を終えた私には数多の大学の2次試験がありました。私の母は心配性なので、試験を受ける前に一度、受験会場まで下見に行かないと気が済まない人なのです。しかし受験勉強に追われる日々の中で、下見のために東京へ行くのはいい気晴らしになりました。母ももとは東京の人間なので、都会の華やかさに触れられて嬉しかったようです。

私達は乗り換えで使う池袋駅をぶらぶらしていました。そして辿り着いたのです……西武池袋に店を構えていた叶匠壽庵さんに……。


デパートのお菓子というのは、見ているだけで楽しいものです。ショーウィンドウをする私達に、叶匠壽庵の店員さんは話しかけてきました。


「よかったらご試食なさいますか?」


まあ断る理由はありませんでした。有り難く頂くと…………。



(な、何じゃこりゃああ!!!!!!!!)


口に入れた瞬間にわかりました。

この小豆、めちゃくちゃ美味い。

今まで口にしてきた羊羹やあんこと段違いに違うことが、18年しか生きてない私にもわかりました。

あと一緒に出してくれた梅昆布茶もめちゃくちゃ美味い。お茶の塩っぱさが和菓子の甘さを引き立てている。


衝撃の美味しさに一本買いました。店員さんは試食さえさせれば、客が買うということをわかっていたのでしょう。ものすごい自信! そして和菓子に合わせたお茶も用意しているプロフェッショナル!! 完全に店員さんの手のひらの上でした。


私達が出会ったのは「あも」という名の和菓子でした。


「あも」とは

「あも」はつぶつぶした小豆が残った羊羹の中に、お餅が入っているような和菓子です。

画像1

画像2

羊羹と違ってデコボコしてるのがわかると思います。小豆が入ってるからですね。

画像3

箱から切り出したものです。

私の切り方が下手でグチャグチャになってしまいましたが、真ん中にある白っぽいものがお餅です。


変わった名前ですが、叶匠壽庵さんがちゃんと名前の説明を「あも」の箱に入れていました。

画像4

昔、宮仕えの上級女官を女房といって 彼女たちの女らしさを表した言葉を 女房言葉といいました。 
たとえば寿司は、おすもじ 香物は、おくうのもの 豆腐は、おかべ 饅頭は、おまん
そして餅は、あも。


「女房言葉が彼女たちの女らしさを表した」という一節には首をひねりますが、(何が女らしさじゃクソ喰らえと思ってる人間なので)、女房言葉とはつまり宮仕えの女性が使っていた言葉のことです。

今でも日本語の中に女房言葉は残っています。たとえば「おでん」や「おかか」ですね。

その音の響きの柔らかさに惹かれて「あも」と名付けたのでしょう。


叶匠壽庵さんはとても素材にこだわっている店だと思います(ホームページを見た所感)。

餅(もち)は大和言葉で、そこから変化した女房言葉の「あも」も日本で生まれた言葉です。

つまり「あも」という女房言葉は素朴で純粋な日本語ですから、素材に気を使う叶匠壽庵さんに似合う日本語ですね。


和菓子を食べてくれ

和菓子美味しいよ! みんな食べてくれ!

と私はよく思います。


しかし私自身しょっちゅう和菓子を食べているわけではありません。むしろ毎日チョコレート食べて生きてます。

ですがこのような運命的に美味しい和菓子と出会ってしまったために、しばしば和菓子も食べます。


豊かな生活とは、選択肢のある生活のことです。貧しい人間は選択肢を持ちません。

貧しいとは何も金銭面の話だけに限りません。知識が貧しい人間は、美味しいものを知りませんから、知っている範囲の食べ物しか食べられないということです。

私は「あも」という和菓子を知ってしまいました。だから何かちょっと贅沢した甘いもの食べたいな〜と思ったら、「あも」が選択肢に挙がって来るのです。


正直、叶匠壽庵さんは全国のデパートに入っている割には、有名ではないと思います。

たとえば「とらや」は老舗の超有名店です。みんなが知っていますから、それだけで名前に箔がつきます。あんこが嫌いでもない限り、「とらや」のお菓子をもらって嫌な気になる人はいないでしょう。

しかしそれは「とらや」の名前に価値があるため、たいして美味しくないものだとしても、「とらや」の名前で売れている可能性もあるわけです。

「なんか和菓子贈りたいけど和菓子詳しくないや〜とらやなら有名だし大丈夫っしょ。相手も嫌な気にならないだろうし」と思って買っているお客さんは、たくさんいると思います。

(これは名前が有名だと味自体で評価されるの少なくなるよねって例です。「とらや」の羊羹はとても美味しいと思います)


失礼ながら叶匠壽庵さんは、そんなに有名ではありません。少なくとも関東では知られてないと思います。

それほど名が知られてないわりに、全国展開して利益を上げているということは、和菓子がとても美味しくて固定客がついているということです。私のような。

だから!! 叶匠壽庵さんの「あも」は美味しいです!!! みなさん買って食べてみてね!!!!


最後に、私は叶匠壽庵さんの回し者ではありません。純粋な和菓子好きです。叶匠壽庵の「あも」も、とらやの羊羹も好きです。







いいなと思ったら応援しよう!