【東大理一】姜 大模(かん ても)さんの合格体験記「現役は京大受験。『何も準備しないで華麗に合格してやるよ』と言って本番を迎えたら華麗に落ちました」
東大合格note 第9回
姜 大模(かん・ても)さん(通名:吉川 大模(よしかわ・だいも)
東京大学理科I類入学
東京大学工学部物理工学科卒業
現在東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻修士課程1年 24歳
東京大学出身者を紹介する東大合格noteの第9回。
今回お話を聞いた姜大模(かん・ても)さんは戦前から代々関西に住んでいる在日コリアン。これまでにお話を聞いた人の中で一番、紆余曲折を経て東大に合格した人だ。中学受験をして京都の進学校・洛星に入学した後、一浪して東大理科Ⅰ類に合格するまでのお話を聞いた。
<基本情報>
京都府京都市出身
お父さんは同志社大学に入学した後進路を変更して歯科医師
両親は子供の頃に離婚し、父・妹・祖父母と暮らしていた
小4のときに進学塾「成基学園」に入塾
野球少年で中学時代はプロ野球選手を目指していた
中3のときに野球部を引退し本格的な勉強がスタート
高1で「鉄緑会」に入会
高2のときにハーバード大学での研修に参加して、アメリカの大学を目指す決意をし、受験勉強をやめる
物理に興味を持ち、やはり日本の大学を受験することに決める
現役で京大理学部を受験して不合格
東大を目指して駿台予備校へ通い、理科Ⅰ類合格
1. 京都の洛星中学・高校へ
姜大模さんは日本で生まれ育った在日コリアン。幼稚園のときにご両親が離婚して、お父さんとおじいさんとおばあさんと妹と一緒に暮らしていた。
「小1のときに公文に入り、英語と数学と国語を習っていました。公文は実際の学年に関係なく、どんどん勉強を進めていくシステムなので、小3のときには2~3年先の教材を先取りしてやっていました。
小学校ではやんちゃな子供でしたね。授業中も『はーい、はーい』と手を上げて発言したがり、自分の知っていることをずっとしゃべるような子供でした。父が歴史が好きなので家に『日本の歴史』の漫画本があり、僕もよく読んでいました。だから社会はほとんど勉強しなくてもわかるアドバンテージがあったと思います」
小4のときに中学受験を視野に入れて、公文を退会して成基学園(京都・滋賀で有名な進学塾)に入塾。洛星中学を受験して合格した。
「小4と小5のときは、週2~3回の塾で友達と会うのが楽しくて通っていました。野球も続けてたんですけど、小6になって土日も塾があるので野球は一旦やめてがっつり勉強に集中しました。成基学園は進学塾ですけどあまり宿題が多くなくて、自分で好きなように勉強させてくれる塾でしたね。理科が苦手だったんですけど、得意の算数と社会を武器にしてツッコんだら合格しました」
洛星中学は京都ではトップクラスの進学校。
「もうひとつ、洛南という男女共学の進学校があるんですけど、僕が入った洛星は男子校です。校風は自由でのびのびしています。野球がやりたかったので洛星を選びました。
地理的に京大に入る人が多いんですけど、東大にも15人くらいは入る学校です」
2. 中3の4月から本格的に勉強
入学してすぐ、姜さんは野球部に入部。
「ピッチャーで、当時120~130キロの球を投げていたので将来はプロ野球選手になりたいと思っていました。父は歯科医なので、僕にも医者になってほしかったようです」
しかし、中3の夏に野球部を引退。高校のチームの方針と自分の野球への考えが食い違っているような気がして、非常に悩んだんですけど辞める決断を下しました。
「中3になって、学校の雰囲気がガラッと変わりましたね。同級生も塾に入って、急にみんなが勉強をし始めました。クラスの中で、勉強をしない子は端っこに追いやられるようになって、自分も勉強をやってみようかなと思い、やってみたら結構面白かったです」
それというのも、洛星では中3の4月から高校の勉強が本格的にスタートしたからだ。
3. 文化祭の研究発表でアカデミックな活動に目覚める
当時の姜さんは勉強以外に、文化祭での研究発表に力を入れた。
「『近代史』というテーマで、30人くらいのチームを組んで、そのリーダーとして研究をしました。安全保障問題や韓国人のヘイトスピーチや歴史認識のことが社会全体でも話題となり、在日コリアンとしてのルーツもあり、特に興味を持ちました。
歴史認識の問題はちゃんと勉強しないとわからないなと感じたので、時系列に事象を並べ、右派の視点と左派の視点を並列して整理してまとめました。自分たちが歴史の教科書を書くつもりでがんばってまとめて、ポスターを展示して発表したら、右派と左派の視点を並列しながら並べるアイデアの評判がよく、学内の最優秀賞になりました。たくさんの人に褒められたのがうれしかったです。これを機にちゃんと勉強して、アカデミックな方向でやって行きたいと思いました」
野球部を引退後の中学三年から姜さんはバレーボール部に入部。高校入学後は「鉄緑会」という塾に入会した。東大を目指す人たちが通う有名な塾の京都校である。
「鉄緑会に行くと賢い人がいっぱいいるらしいと聞いてたんですけど、友達に聞くと『鉄緑会の進度は速いけど、高1のカリキュラムは高校の範囲の二周目を一からするカリキュラムだからついていけるよ』と言われたので自分も入ることにしました。でも京都校は15~30人の小さい教室で、上のクラスの授業や一部の科目の授業は受けられなかったので、高校2年からは週1,2回は大阪・梅田の鉄緑会に通っていました。
京都には駿台予備校もあるんですけど、駿台の授業は洛星とレベルがあまり変わらないと聞いたので、行く意味があまりない気がしたんです。上を目指すならレベルの高い学生や先生が集まる鉄緑会に入って、京大医学部や東大の理Ⅲを受けるために勉強しようと思いました」
こうして勉強を進めていた姜さんだが、高2の夏に大きな転機が訪れ、受験勉強を一切やめてしまうことになった。
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