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2022年1月17日

【今日は何の日?】1月17日:おむすびの日

1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災。大変な状況の中、ボランティアの炊き出しは被災者の励ましとなりました。この時の記録と記憶をむねに、米に関係する民間企業やJA等でつくる「ごはんを食べよう国民運動推進協議会」が記念日に制定しております。

さて本日の怪談は……

「検証実験とその成果について」

 金縛りは神秘の現象ではない、という考え方がある。

 レム睡眠(身体は眠っているが脳は起きている状態)が広く知られるようになってからというもの、「自分の身体を自由に動かせない金縛りは、レム睡眠中の一症状に過ぎない」と捉える人が増えた。また、「動けないという自己暗示を信じ込んだことによるもの」という側面から、全ての金縛りは科学的に説明できるとする人もいる。

 ある晩、三郷氏は寝苦しさからか夜中に目が覚めた。正確には意識深度が浅くなった。

 身体が押し潰されるような圧迫感と入れ替わりに、意識のほうはどんどんはっきりしていく。突然動かなくなるのではなく、意識と身体の支配がじわじわと交替していくといった具合だ。

 やがて身体は完全に動かなくなったが、自分は眠っていたり寝惚けているのではなく、確実に意識が覚醒しているという自覚がある。

「ふむ、これが金縛りか」

 自分の身体を自分で動かせないという経験は初めてだったが、これは科学的に検証できるのでは、と考えた。

 翌晩も同じことが起きた。金縛りへの導入は同じだが、足首を掴まれている感触がある。

 しかしこれは、そんな気がしている、そうと自分が思い込んでいるだけに違いない。

「次は足を持ち上げられるのではないか?」

 そう考えると、実際その通りになった。なるほど、これは「動かないという暗示を、別の暗示で上書きすれば動かせるようになる」というものなのではないか。

 次はどうするか、と決めかねていたら、ベッドの上で身体が横にスライドした。

 これは自分が思考したことではない。

 さらに、自分の足を掴んでいた手と思しき感触が消えた。

 寧ろ、「掴まれていた手が離された」というのが近い。

 自己暗示による「金縛り」が解けたのだと思った。

 ところが――。

 仰向けに眠っていたはずの身体が、ベッドマットの縁を支点にくるりと側転した。

 寝返りではない。もちろん、そんなことは考えていない。

 ベッドから転落するかと思ったのも束の間、自室に敷かれた畳の中央にすとんと腰を落として正座した。

 否、正座させられた。

 金縛りは科学で説明できるという考えには、今も変わりはない。

 ただし、「全て説明できる」かどうかについては確信が持てない。

 なお、追加の検証実験については、今後行う予定はない。

 怖いから。

「検証実験とその成果について」加藤一『恐怖箱 百眼』

☜2022年1月16日 ◆ 2022年1月18日☞