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史上初!元職員が徹底調査した火葬場の事件記録集『火葬場事件簿 一級火葬技士が語る忘れ去られた黒歴史』(下駄華緒/著)著者コメント+試し読み

史上初! 元職員が徹底調査 
火葬場・葬祭業の事件記録集


あらすじ・内容

「不思議大百科」でお馴染みの人気YouTuber下駄華緒が闇に葬られた昭和の陰惨すぎる火葬場・斎場事件を徹底調査。
・人骨を池に棄て、倉庫でも山積み… 杜撰すぎる火葬場
・遺体の脳みそをえぐりだし、自ら食べた驚愕の職員
・前代未聞! 女性の遺体と××した変態猟奇男
・社長を火葬炉に監禁 紐解くと利権にパワハラ失踪と闇が深すぎた
・倍の値段で骨つぼを押し売り 買わない人には嫌がらせ
・通夜もしたのに違う人 遺族も警察も取り違えた謎事件
――ほか収録。
昭和の斎場で起きた知られざる陰惨な事件が生々しく甦る!

著者コメント

 あなたはどのような思いでこの本を手に取ってくれたのだろうか。
 面白そう! 怖そう……、やばそう……、などいろんな理由があるに違いない。
 どういう理由であれ、この本の内容に興味を持ってくれたことは非常に嬉しく思います。
 なぜなら、火葬場という場所はあまりにも不透明でわかりづらい場所だからです。
 火葬場の事件と聞いて何か思いつく事件はありますか?
 ほとんどの人が知らないと思います。
 ですが、過去に起こった火葬場の事件は、現代の火葬場の運用に大きな影響を及ぼしています。
 そして、その事件があったからこそ改良がなされ、いまの火葬場のカタチになっています。
 しかも、それは火葬場で働く人のみならず、火葬場に赴く皆さんにも関係があります。
 火葬場でこう言われたからこうする、でもなんで?
 その理由には過去の大きな事件が関係していることもあるのです。
 そして、過去の火葬場の驚くべき事件や事故を知ってもらうことで、皆さんが火葬場に目を向けるきっかけになればと思っております。
 いまも火葬場ではミスや事件が時々起こります。悲しいかな、世間の目が向かない限りなかなか実質的な改善に向かわないことがあることも事実です。しかし、皆さんの知識の中に火葬場の過去の事例があれば、自ずと火葬場への関心が強くなります。
 そして目を向けられた火葬場もまた改めて改善すべきところは改善し、より良くなることを期待してこの本を執筆しています。
 この本を火葬場へ赴くすべての人々と、いま現在火葬場で働いてくれている方々に贈ります。

下駄華緒
本書収録「まえがき」より全文掲載

試し読み1話

人骨を池に棄て、倉庫でも山積み… 杜撰すぎる管理をしていた火葬場

現在、火葬場では厳格にお骨を管理している。葬儀場から到着すると火葬炉に運ばれ、
火葬したあとはお骨あげをしてそのままご遺族へお返しするのが基本だ。
 さらに言えば、現在は亡くなると医師から死亡診断書が発行される。事故や医師の診断なく亡くなってしまった場合には検死案件書だ。
 この書類はとても重要な公的なもので、これをもとに役所などで死亡届を提出することができる。そしてその際に火葬許可証を発行してもらい火葬場に提出する。さらにお骨あげが終わったあとは埋葬許可証を渡される。
 このように聞いただけでもいかに日本国民の出生、死亡届がしっかりと管理されていることがわかっていただけるかと思う。
 しかし、昔はとてもひどい管理をしていたこともあったらしい。

 昭和4年(1929)4月の記事に、管理がひどすぎて火葬場に警察の立ち入り調査が入り、主任が警告を受ける事態になったことが記されている。
 事の発端は、東京にあったとある火葬場に対する苦情だった。
 当時、この火葬場について市民たちから批難の声が殺到しており、苦情の投書も相当数舞い込んでいたという。
 そこで三河島署の警部補が火葬場に調査へ赴いたところ、とんでもない光景を目撃した。
 その火葬場は、表向きは通常の火葬場だった。しかし、裏手にある古池に行ったところ、なんと火葬したあとの骨灰が山のようになるまで池に棄てられていたのである。
 人の骨がうず高く積み上げられた地獄のような光景に絶句する警部補。こんな景色、普通に生活していたらまず見なかっただろう。
 その後も調査を進めていくと、さらにその近くにあった物置にも多数の骨が置かれていることがわかった。
 大量の小箱に人骨が詰められていて、そればかりか箱の数が足りなかったのか、かめにも詰め込まれ山積みになっていた。
 その数、箱と甕を合わせてなんと386個。
 しかも、どれも埃まみれの状態で放置されており、表に書かれた記名や番号なども未整理の状態。当時の新聞記事を参照すると「番號記名等はめちゃめちゃになってゐる」と表現されている。
 おそらく名前や番号がある箱もあれば、何も書かれずにただ骨だけ入っている箱など、いろいろな状態のものがあったのだろう。どれが誰の骨かわからず、火葬した年月もバラバラで、それが乱雑にただ積まれていた状態だったのかもしれない。

東京一円から遺体が運ばれてパンク

 当時の報道では、大正12年(1923)9月に起きた関東大震災のあと、この火葬場へ遺体が多数送られてきていたことが一因だったと書かれている。
 その送り元は東京の東側一帯――本郷や下谷、浅草、本所など現在の文京区や台東区、墨田区域のほか、日暮里や三河島、尾久、千住など、その北側の町からも運び込まれたようだ。それらの遺体のなかには、身元がわかる人もいれば、身元不明の人も数多くいた。
 この火葬場では、次から次に運ばれてくる遺体を火葬したあと、身元がわかる人にはお骨あげをして、身元不明者はとりあえず箱や甕に場当たり的に納め、入りきらなかった骨灰は全部池に棄ててしまったというのだ。
 また、身元がわかる人のなかにも、遺族が規定の時間までにお骨あげにこない場合にも同じような扱いをしていたのだという。

 この時間を守れなかったときの対処法から、当時の雰囲気が伝わってくる。じつはいま現在でも少しずつ改善されてはいるが、火葬場職員の立場が不必要に上目線になっているところが散見される。当時はもっとハッキリと天狗になっている者も多かったようだ。
 結果、三河島署では、人道上から見て惨酷な処置であるとして、この火葬場の主任に警告をし、その原因の一端を担っていた遺体の送り元である各区役所の担当者にも注意を促したという。

―了―

著者紹介

下駄華緒 (げた・はなお)

元火葬場・葬儀屋職員。火葬技術管理士一級。
プロミュージシャンでありながら怪談最恐戦2019で優勝し〈怪談最恐位〉の称号を獲得。現在は怪談や火葬場の体験談を語るトークイベントを開催するほかYouTube「下駄のチャンネル」「不思議大百科」を配信中。
著書に『火葬場奇談 1万人の遺体を見送った男が語る焼き場の裏側』『怪談忌中録 煙仏』、コミック原作「最期の火を灯す者 火葬場で働く僕の日常」シリーズ(画:蓮古田二郎)、共著に「怪談最恐戦」シリーズ、『黄泉つなぎ百物語』など。

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