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怖いのに、惹かれる!東北地方唯一の政令指定都市、杜の都・仙台のご当地怪談集!『仙台怪談』(森野美夜子、藤田りんご、久田樹生)著者コメント、試し読み!

地元を知り尽くした仙台出身在住の著者と
怪談を集めて全国行脚するルポルタージュ怪談作家が徹底調査!

あらすじ・内容

【青葉区】仙台藩刑場跡、お化けトイレの魔
【宮城野区】謎の耳鳴りに襲われる与兵衛沼
【若林区】津波で流された地に残る狐塚の怪
【太白区】秋保大滝の遊歩道に出る父子の霊
【泉区】一家惨殺の噂から生まれた幽霊屋敷

東北地方唯一の政令指定都市、仙台市のご当地怪談集。
五区それぞれの怪奇スポットや本当にあった怪異事件、恐怖体験談を大収録!

仙台藩刑場跡にあった琵琶首公衆便所で頻発した水の怪(青葉区)
江戸時代に六道の辻があった北目町ガード付近。
トンネルを東側に向かって潜ると、霊が背中に乗ってきて…(宮城野区)
お狐様の結界か?津波から唯一守られた狐塚の怪(若林区)
秋保大滝の遊歩道で聞こえる霊の会話。
不動尊の絵馬に書かれた戦慄の内容との因果(太白区)
一家惨殺事件の噂が先行し心霊スポットになってしまった空き家。
だが、やがて噂通り霊が現れ家族を形成していき…(泉区)
他、歴史ロマンと豊かな自然に抱かれた杜の都の怪を徹底調査!

著者コメント

 仙台に生まれ育って半世紀以上。先祖まで遡ると江戸時代末期から仙台に住み続けています。
 そんな私が他県の人と話しをしていて思うのは「仙台に限らず東北って生と死の境が曖昧だな」という事。幽霊話をまるで世間話のよう
に話す人が多いのです。
 そして東日本大震災以降はそれがますます顕著になったかもしれません。
 『仙台怪談』は私が十代後半から今まで聞いた不思議な世間話を書き出しました。興味深く読んでいただければ幸いです。(森野美夜子)

 仙台にゆかりのある人たちへの取材を元に、今回の怪異譚集を書かせていただきました。怖い話を積極的に教えてくださる方、怖い話は苦手とおっしゃる方、様々なスタンスからお話を伺いましたが、興味深いエピソードばかりです。「ここでの出来事です」と、場所がはっきりしている話が多いので、どこか知っている方は面白く読めると思います。知らない方も、いつか通りかかったときに「そういえば」と思い出していただけたら、刺激的な道行きになることうけあいです!(藤田りんご)
 
仙台怪談は〈仙台市を内と外から見た怪異譚集〉になっています。
 一読して頂けたらおわかり頂けると存じます。是非、お手にとって下さいませ。
 本書を読み終えたとき、あなたが仙台市をどう感じるようになったか。私たちに教えて頂けると幸いです。(久田樹生)

試し読み

「秋保大滝」森野美夜子

 心霊スポットと言われる滝は多い。仙台駅から車で四十分のところにある秋保大滝もその一つだ。
 幅六メートル、落差五十五メートルのほぼ垂直に落下する大きな滝で、国の名勝に指定されており、華厳の滝、那智の滝に並ぶ日本三名瀑の一つとも言われている。
 近くには東北三十六不動霊場二十九番札所、みちのく巡礼第二十六番札所の秋保大滝不動尊があり、ここでお詣りをしてから滝に向かう人が多い。

 アマチュアカメラマンの北村さんは四季折々の秋保大滝を撮ることをライフワークとしていた。
 毎週のように秋保大滝の行く北村さんに「同じような写真ばかり撮って楽しい?」と馬鹿にする人もいるが「同じ写真なんて一枚もない。むしろ同じ場所を撮ることによってその違いがわかる」と北村さんは熱弁する。
 実を言うと秋保大滝に行く楽しみは写真だけではなかった。
 滝壺までの遊歩道はなかなか険しく、幅が狭いので並んで歩くことは難しい。北村さんは遊歩道を歩いている最中に前後を歩く観光客の「疲れたあ」「あとどのくらい歩くの?」などの愚痴を聞くのも密かな楽しみだったのだ。

 比較的観光客が少なくない冬の平日。
 滝壺からの帰り道、後ろのほうから親子の声が聞こえてきた。
「運転に気を付けてね」と男の子の声。「わかった。わかった」と父親の声。父親が信用できないのか、男の子は「運転に気を付けてね」と何度も繰り返す。
 男の子の必死な様子がおかしくて、北村さんは声を殺して笑った。

 すると「だってもう死にたくないんだもん!」と男の子。
 驚いて振り返ると後ろには誰もいなかった。

 いつの間にか辺りは暗くなっている。
 後ろどころか前にも人はいない。
 北村さんは走って逃げた。
 翌週は滝壺に行く前にお祓いをしようと秋保大滝不動尊に行くことにした。すると境内にある絵馬の一つが目に入った。
 そこにはたどたどしい文字で「ぶじにいえにかえりたいです」という一言が。

 北村さんは秋保大滝に行くことをやめた。

秋保大滝不動尊(写真AC)
秋保大滝の入り口に座す。不動明王を本尊とする真言宗智山派の寺で、正式名は滝本山西光 寺。東北三十六不動霊場二十九番札所になっている。

―了―

◎著者紹介

森野 美夜子 Miyako Morino

1966年生まれ。仙台市出身・在住。技術職を早期退職し、悠々自適の日々。曽祖父の代からの仙台人で「どんと祭」の火にあたらないと一年が始まらない。仙台で見たり聞いたりした怪異を書き記す。

藤田りんご Ringo Fujita

1969年生まれ。某編集プロダクション所属。神奈川出身・東京都在住。定義山の油揚げと、蔵王きつね村が大好き。今回は仙台を外から見た視点で書き記した。

久田樹生 Tatsuki Hisada

1973年生まれ。実録怪異ルポ、映画、テレビ、ラジオなどのノベライズ、他にて活動中。代表作に『牛首村〈小説版〉』ほか東映「村」シリーズ、近刊共著に『「超」怖い話 卯』『職罪怪談』(以上、竹書房)などがある。

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