2022年1月14日
【今日は何の日?】1月14日:褒め言葉カードの日
君は最高!「良いよ!良いよ!」【い(1)い(1)よ(4)】の語呂合わせにちなんで、日本褒め言葉カード協会が1月14日を記念日に制定しております。
さて本日の怪談は……
「浜より見下ろす」
羽生さんはマリンスポーツが好きで、よく仲間と連れ立って海に行くのだという。
その日も朝から仲間と海に繰り出した。ジェットスキーも所有しており、他にもバナナボートやらバーベキューセットやらの様々なアイテムを車に満載している。
午前中は朝からひとしきり遊んだ。昼を回った頃に、全員が海から上がった。
「誰かさー、俺達のこと浜からずっと見てなかった?」
友達の一人がそんなことを言い出すと、他の数人も同意した。
「あー、それ俺も感じてたわー」
「誰の視線か分かんないけど、見られてたよね?」
そんな話をしていると、先にバーベキューの準備をしていた数人が否定した。
「俺達以外、ここには誰も来てないぜ。駐車場にも車来てないし」
気になるが、そこまで言うなら気のせいなのだろう。
バーベキューに舌鼓を打っていると、一人が「あれ何?」と少し離れた位置を指差した。
そこには筆箱ほどの大きさの黒い長方形のものが海を向いて立っていた。
「位牌?」
「さっきあったか?」
「なかったよ。誰だよあんな所に位牌なんて置いた奴は」
近寄って確認すると漆塗りの位牌である。まだ新しい。浜に流れ着いたものとも思えない。
「誰か木の枝拾ってこいよ。倒しちゃおうぜ」
近くの公園から枝を拾ってきて、位牌を突いて倒した。
昼食を終えて、羽生さんと友人が、腹ごなしを兼ねて海に入って遊んでいると、バーベキューセットから少し離れた所にキラキラと太陽光線を反射するものが見えた。
先程位牌が立っていた場所だ。気になったのでまた浜に上がり、その位置に走っていった。先程倒したはずの位牌が、また海に向かって立っていた。
「誰よ、悪戯してんの」
「誰も近付いたりしてないけどなぁ」
「お前、見過ごしてたんじゃねぇの?」
バーベキューの後片付けをしている一人はその言葉に憤った。
「誰も近寄ってねぇって! 俺ずっと気にしてたしよぉ」
それではもう一度倒そうということになって、先程の枝で再度倒した。
今度は全員で海に入ったのだが、皆位牌が気になると見えて、ちらちらと浜のほうに視線を送る。
一人が悲鳴を上げた。
「今、あれが起き上がった!」
見れば日を受けてキラキラと光っている。
浜を駆け上がる。位牌は再び海のほうを見下ろすように立っていた。
仲間内で何度確認しても、やはりそれを起こした人はいなかったという。
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「浜より見下ろす」神沼三平太『恐怖箱 百眼』