2021年9月2日
1日1話、実話怪談お届け中!
【今日は何の日】9月2日:くつの日
さて、本日の1話は――
「変なおじさん」
河原崎さんの実家がある町内には、変なおじさんがいるという。
「変質者の話? それも嫌いじゃないけど」
「いやいや、そういうんじゃないんすよ」
変なおじさんは、昼夜問わず町内の路地一円、そこかしこに現れる。
であるから、変なおじさんは巷で有名となっている。
灰色の作業服に黒いキャップを被ったその姿は、一見するとごく普通のおじさんだ。
しかし、よく見ると妙なことに気が付く。
靴がない、というか足首から下がないまま宙に浮いているのだそうだ。
「ああいうのって〈足がない〉って俗に言いますけど、アレは分かり難いわ」
宙を浮いているのだからスーッと流れるように移動するかというと、これまた何の変哲もなく、右足左足を交互に出すだけなのだという。追いかけると急に消える。
未だ目撃談があるそうだ。
★
――「変なおじさん」高田公太『恐怖箱 百聞』より