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「怪談マンスリーコンテスト」から生まれた、新時代の作家らによる鮮烈な怪の記録60篇を収録!『呪録 怪の産声』

怪談新世代、誕生。

歪ゆえに、悍ましく
粗削りゆえに、鋭く
防御0、攻撃100
直球で攻め込む恐怖
思考が止まる変化球
先人への崇敬と野心
踏襲改造目指せ斬新
欲しいのは恐怖だけ


あらすじ・内容

怪を愛し、怪にとり憑かれ、日々怪を求めて尋ね歩く。
何か恐ろしい話、不思議な体験はありませんか、と――。
新時代の書き手が聞き集めてきた生々しき恐怖たち!

出産前の妊婦の腹から響く声。それは助産師だけに聞こえる凶兆…「産声」夕暮怪雨
人生の喜ばしい日に送られてくる不気味なハガキ。そこにはある写真がプリントされていて…「釘を刺すべき」井上回転
門扉の横の木に貝殻を詰めた巾着をつるしていた祖父。その理由は…「貝手形」雨森れに
社員食堂の排水に浮かぶ奇妙な紙人形。拾い上げると突然身じろいで…「油まみれの紙人形」緒音百
井戸と井戸で糸電話のように会話ができるという伝説を試してみた少女二人は…「古井戸フレンド」緒方さそり
親戚の家の裏山にある犬の墓場。そこには子供の頭ほどの石が無数に…「犬の墓石」ふうらい牡丹
古本屋で入手した本の「我」という文字に引かれた線。その夜、奇妙なことが…「われ」千稀
俺が死んだらデスマスクをとってあいつへ送ってほしい。同期の不気味な頼み事は…「死面の報復」おがぴー
幽霊がでると噂の劇場。本番前に舞台袖で肩を叩いてきたのはずぶ濡れの先輩役者で…「先輩の役者」月の砂漠
親友から突然告げられた別れ。明日引っ越しで転校するというのだが、翌日学校に行くと…「安藤くんと松岡くん」ホームタウン
病院の裏口に置かれていた幻の山菜。誰が置いたかわからぬままに町は狂騒に飲み込まれ…「何を売っても食べたい美味しさ」高倉樹
盆栽が趣味だった亡き祖父。通夜の晩、庭の盆栽に異変が…「急逝」墓場少年
閉館する写真館に保存してあったある女性の写真群。それには奇妙な点が…「家族写真」中村朔
限界マンションに暮らす不気味な住人たちの共通点…「ご縁があったら」宿屋ヒルベルト
母と息子二人の数奇な人生。悲劇と別れから、時を経て結ばれる怪の絆…「日曜日のパンケーキ」多故くらら

他、自身の体験または取材による聞き書き怪談の公募「怪談マンスリーコンテスト」から生まれた、新時代の作家らによる鮮烈な怪の記録60篇を収録!

来たれ怪談新世代、闇より咆哮せよ


 怪談マンスリーコンテストは、最恐の語り部を決める話芸のコンテスト「怪談最恐戦」の投稿部門として二〇一八年に始まった。編集部から毎月お題を出し、それに沿った怪談を広く一般から募るコンテストである。ルールは千字以内、創作不可といたってシンプル。毎月の応募数はお題によって多少前後するが平均二百五十作程度が寄せられ、その中でもっとも心に残った一作を最恐賞に、次点の三作を佳作に選出している。
 最恐賞の作品はこれまでその年の「怪談最恐戦」の総集編文庫に収録されてきたが、二〇二三年より本コンテストが「怪談最恐戦」の投稿部門から、「綴り」専門の新人発掘大会として独立することになった。そのため、新たな才能を世に送り出す舞台として本書の発行が企画された。二〇二三年の最恐賞受賞者、佳作二度以上の受賞者、更に少し枠を広げ二〇二二年に最恐賞を二回以上、または最恐賞と佳作をそれぞれ一回以上受賞した新人を対象とし、各々の現時点での最高傑作、自信作を募り収録した。次世代の怪談を担っていく者たちの煌めき、新たな才能の産声を感じていただけたら幸いである。

竹書房怪談文庫編集部

著者紹介

夕暮怪雨(ゆうぐれ・かいう)
神奈川在住の怪談作家。怪談師のおてもと真悟と怪談ユニット・テラーサマナーズ結成。作家業だけでなく、トークイベントやYouTube•テラサマチャンネル、ポッドキャスト(誰も知らない怖い話)にて活動中。

井上回転(いのうえ・かいてん)
二〇〇二年、山口県生まれ。幼少よりホラーや怪談、幻想小説に傾倒し、濫読の限りを尽くす。背筋の凍るような恐怖が好み。現在は大学に通う傍ら、怪談などを蒐集している。

雨森れに(あめもり・れに)
平成元年生まれ。長野県出身、埼玉県在住。二〇二〇年より執筆活動を始め、参加書籍は七冊。その他、歌詞提供など活動は多岐にわたる。実話怪談では怪異を糸として預かり、布へと織り上げるように取り組んでいる。

緒音百(おおと・もも)
佐賀県出身。大学時代に民俗学を専攻して語り継ぐことの楽しさに目覚め、怪談・奇談を蒐集する会社員。参加共著に『鬼怪談 現代実話異録』『呪術怪談』他。『かぎろいの島』で最恐小説大賞を受賞し、夏頃発売予定。

緒方さそり(おがた・さそり)
群馬県在住。O型。蠍座。趣味、深夜ラジオを聴くこと。小五の頃から超怖い話を愛読している、純情派怪談ジャンキー。本書と同日刊行の『投稿瞬殺怪談怨速』の方にも、「車ピザ」が収録されている。

ふうらい牡丹(ふうらいぼたん)
1991年生まれ、大阪在住。本業は上方の落語家。二〇一八年から マンスリーコンテストに投稿を始める。日常の足場が崩れるような、認識や記憶がずれる体験談を特に好んで蒐集している。

千稀(かずき)
沖縄生まれ沖縄育ち。幼少期から怪談に魅了され、学生時代から沖縄を中心に怪異を探し回っている。怪談やホラージャンルの素晴らしさを広げるべく、現在は怪奇小説執筆も行っている。別名は猫科狸。

おがぴー
千葉県在住。怪談噺や地域の伝説・伝承に出てくる怪異な話が好きな薬剤師。稲川淳二ファンクラブ会員。怪談最恐戦二〇一八・大阪予選出場より怪談語りを始め、翌年から怪談マンスリーコンテストに投稿を始めた。

月の砂漠(つきのさばく)
埼玉県出身。放送作家、劇団脚本家。第四回上方落語台本大賞で大賞。第七回森三郎童話賞で最優秀賞。竹書房怪談文庫での主な参加共著に『実話怪談 怪奇島』『奥羽怪談 鬼多國ノ怪』『実話怪談 犬鳴村』など。

ホームタウン
実話怪談にのめり込み二〇一九年より本格的に怪談蒐集を開始。現在『杜下怪談会』『谷中怪談会』『銀座一丁目怪談』『恐点』等、都内を中心に怪談会の主催や出演など精力的に活動中。

高倉樹(たかくら・いつき)
兵庫県出身。大阪教育大学社会文化研究卒。口頭伝承保存のかたわら「口伝される怪異」に興味を持ち、実話怪談の世界を知る。参加書籍『実話怪談 犬鳴村』『実話怪談 最恐事故物件』など。

墓場少年(はかばしょうねん)
愛媛県出身。コロナ禍のステイホームを機に本格的な執筆を始める。取材の際は体験者の表情を注視。軸となる怪異はもとより、心の内を描くことで血の通った実話怪談を生み出そうとしている。

中村朔(なかむら・さく)
鎌倉在住。データエンジニア・シナリオライターとして活動する傍ら、実話怪談の蒐集・分析を行う。現在noteにて実話怪談および、実話怪談を蒐集する大学生たちを主人公にした夜話を執筆中。

宿屋ヒルベルト(やどや・ひるべると)
一九九〇年、北海道生まれ。本職は文芸編集者。仕事でのリサーチをきっかけに怪談蒐集に目覚め、二〇二二年から本格的に執筆・投稿を始める。最近は「語りの芸」としての怪談を磨くべく怪談会にも出演。

多故くらら(たこ・くらら)
東京都在住。二〇二三年二月より執筆開始。東欧、北欧、アフリカから金沢、東京まで幅広く怪談蒐集中。何方かの人生の脇道や曲がり角、行き止まりの片隅に打ち捨てられていた怪奇が私にとっての大切な宝物です。