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会話から生まれる底なしの恐怖『怪談聖 とこよかいわ』著者コメント・試し読み・朗読動画

「取材者と体験者の「会話」から引き出される「怪話」を、
臨場感そのままに記録した実話怪談集。

内容・あらすじ

「みんな天袋で死んじゃうの」
遺体が出た貸家。
肝試しにきた大学生。
家主の奇妙な告白。
近隣住民の証言。

複数の取材から繋がった因果と戦慄の結末。
恐怖が生まれる瞬間をとらえた会話形式の実話怪談!

庭に開けてはいけない物置小屋がついた戸建て物件の怪…「条件つきの物件」
職人たちに異様なルールが課される危険な現場。その理由とは…「これ守れよ」
踏切横の柵の上に載った奇妙な木箱。友人はそれが人の顔に見えるというのだが…「踏切の箱」
心霊スポットと化した空き家の写真。窓に写る老人の顔をよく見ると…「廃屋の顔」
天袋から病死体が出た貸家に纏わる戦慄の連作「お祓いしてた平屋」「天袋で死んだ」「感染した呪い」「消えた三人」他、軽妙な語りの内に潜む底知れぬ闇を覗かれたし。

著者コメント

 再び会話形式という縛りで書かせていただきましたが、竹書房では様々なスタンスの作家さんたちが怪談を綴っています。お好きなスタイルの怪談本を見つけて、たくさんのひとたちに布教してくださいませ。そうすることによって世のなかにどんどん怪談が満ち溢れ、合理性とかいうものを大切にしているひとたちを窒息させることでしょう。怪談の国へとまた一歩近づくことでしょう。インコも怪談を語り、猫は悲鳴をあげ、犬は太鼓を叩くことでしょう。ウィー・アー・ザ・ワールド。ウィー・アー・ザ・怪談ワールド。

試し読み1話 

万引きの疑いあり

「ボストンバッグに顔を近づけたりしてたよね、コソコソと。万引きっていうのは窃盗ですよ。立派な犯罪なんだから。学生でも許されませんよ。自分でだしなさい」
「パクってないっていってるでしょ、見てないでしょ、パクってないんだからッ」
「あのね、こっちはもう経験でわかるの。すぐバレちゃうの。すぐにピンときたね。あ、コイツやってる、てね。万引きってのはね、動きがおかしいからバレるの」
「お前がおかしいわ、勝手に決めつけてひとを犯罪者みたいにいってッ」
「いいから早くだしなさい。いまなら親呼ぶくらいで許してあげるから」
「うるせえ、親は家にいないわッ。マジでふざけるなよ、このブタ」
「あんたね、そんな態度続けるなら学校と警察に連絡するぞ」
「だからパクってないって、ずっといってるでしょ、何回いえばわかるの、このタコ。せめてパクるところ見てからいってよね、お前こそ訴えてやろうか、クソがッ」
「ブタやらタコやらクソやら。口が悪すぎるよ、キミ。どういう教育受けたら、こんな子に育つんだ。もういいから早くだしなさい。ださないなら、もうこちらで確認させてもらうよ、そのボストンバッグ渡しなさい」
「やめてよッ、パクってないっていってるでしょ、あッ」
「もういいから、まったく。盗んでないならいいでしょ、確認しても。なにかやましいことがあるから抵抗してるんでしょ」
「やめてよッ、かえしてよッ」
「もういいから、いったいなにを盗んだ……わああッ、なんだこれッ!」
「ママ! バッグのなかで笑って見てないで! コイツめちゃムカつくから、はやく殺して、ぶち殺してッ」

ー了ー
※バッグの中の真相は、本書のあとがきコメントでお確かめください。

朗読動画

6/27 20:00 公開予定

著者紹介

糸柳 寿昭 Toshiaki Shiyana

怪談を布教し続けている怪談師。

シリーズ好評既刊

第1弾「怪談聖 あやしかいわ」