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【1月29日発売】混ぜるな危険!!最恐若手タッグによる中毒性の高いヤバい話『猛毒怪談』(影絵草子+三好一平)内容紹介&著者コメント&試し読み!

脳髄まで蝕む毒の甘い余韻……
毒×毒、人×霊、呪×祟、刺激的な競演をご堪能あれ。

あらすじ・内容

脳髄まで蝕む毒の甘い余韻を最期まで楽しむ…。
遺品整理の現場で目にした家中を移動する影は…「影のまま生き続ける」
制作過程で魂が入ってしまった人形はホルマリンの瓶に漬けられており…「人形剥製師の告白」
カッパ池の祠で子供たちが体験した衝撃怪異…「神に堕ちる」
身体の一部の柄が描かれた不思議なトランプの記憶とは…「ババヌキ」
人の死期がわかるというある駅清掃員の日常…「巣立ちの時」
30年に一人必ず会社の神に捧げられてきたという生贄、おまえはたぶんその後任だ…「苦肉の策」
ほか、体験者の実在するひたすら怖い話全47話! 
読めば「毒」の虜と化す、中毒性怪談集!

著者コメント

~三十五歳、未だ怪談熱に魘されて~
 今年は令和七年、偶然的にプロとして舞台やイベント、お客様の前で怪談を語りはじめて同じく七年目に入ります。作家としては歴は浅く五年目ですが、念願の記念すべき最初の共著が出せてとても嬉しく思います。
 はじめての共著は、絶対に三好さんと決めていたので、無事書き上げて、皆さんのお手元に猛毒怪談がお届けできる幸せで胸一杯です。
 怪談の業界も様々な人たちが活躍めざましい中、私も負けじと語り続け、書き続けています。
 単純に、恐さ、という概念に縛られず、読み始めよりもむしろ読み終わりの読後感や余韻を楽しんでいただけるように仕上げました。
 取材時のエピソードを交えた話、王手をかけるように体験者の人生を大きく左右し、また揺るがすようなおぞましい話、奇妙な味の話、人間の業や欲得にまつわる話まで、勿体ぶることなく選りすぐりの話を、満足いくまで、緻密に構成し、編み上げました。多種多様な話を、ふんだんに書き綴ったつもりです。
 印象深い話としては、それ以上の取材を体が拒みリタイヤせざるを得なかった「呼び笛」、どこかもの悲しさを感じる「聞き耳さん」、底知れない穴を未来永劫落ち続けるような救いなき恐怖談「逃げ墓」、そして奇妙さと狂気が同居した「羊の家」の四話は個人的に好きな話です。
 どうか、私の毒、そして三好さんの毒が、この本を手にとったあなたの心を魅了し、蝕めますように。
 そして、最大のねらい、奇才三好一平氏の怪談がいつでも読める、そして、三好氏の怪談を残せる、何より足並みそろえ、筆をとりあえる素敵な仕事が出来て良かった。
 書き上げた現在ではこの本の読者の感想が既に楽しみでなりません。
 三好一平さん、いろいろご苦労かけて、私のわがままを聞いてくださりありがとうございます。
 お憑かれさまでした!
 またいつの日か猛毒の第二弾がありますように、それこそ、我が命が《灰燼|かいじん》に帰するその日まで生涯を怪談に捧げる覚悟です!!

 怪談、サイコーっっ!!

         令和七年某日 影絵草子

令和七年一月二十九日。

この日が新たなる記念日として心に刻まれることとなりました。

あるとき影絵先生から「一緒に食事に行きませんか?」との連絡を頂いて、秋葉原のハンバーグ屋へと。
そこでいつか三好さんと共著を出したいという話を聞いたのが、つい昨日の事のように感じます。
本も怪談も好きだが書いたことがない。そんな自分が本を書くことになるのだから人生とは本当に分からないもの。
影絵先生と編集のOさんには、本当に感謝しています。
毒という一つのお題に対して、二人の今出せるモノを詰め込みました。
きっと毒が回って今後、我々二人の新しい本を求め始める…と思います。

感謝
                              三好一平

試し読み

「歩く供養塔」三好一平 より抜粋

 この家に引っ越してきてからすぐ、彼女の家に宗教の勧誘が来るようになった。
 皆様もそういった勧誘が家に来た経験はあるのではないだろうか?
 勧誘は必ず日曜日に訪問してくるため、休みの日に家にいる際はそれを全て無視していたのだそうだ。
 ある日、一人の男が家にやってきたが、それはいつもの勧誘の人とは違う人だった。
 音を立てないように玄関へと向かい、覗き穴から外の様子を確認する。
 玄関の外ではスーツ姿の二十代くらいの男が、腕組みをして笑顔を浮かべながら立っていた。
 まるで覗き穴の先に彼女がいることが分かっているかのように、覗き穴だけをただジーっと見つめている。
 また宗教の勧誘なんだろうな、そう思いそっと奥へ戻ろうとした。
 するとその男はこんなことを言ってきた。
「安心してください、今日は宗教の勧誘ではありません。もし良かったら少しお話を聞いてもらえませんか?」
 まだ何も言葉を発してはいなかった。何で私の思っていることが分かるのだろうか?
 怖くはあったが外の男に向かって返事を返した。
 玄関の扉にしっかりとチェーンロックを掛けたことを確認して、少しだけ玄関の扉を開いた。
 隙間越しに外にいる男と目が合った。男は彼女に向かってにっこりとほほ笑みかけてくる。
「何だかよく分かりませんが、セールスみたいなモノは全てお断りさせて頂いてます」
 そう伝えて玄関の扉を閉めようとした。
 すると男は空を仰ぎながら声を出して笑った。
「あなた数年前○○さんという男性との間にできた子供を堕ろしましたよね?」
 唐突にそんなことを言ってきたのだそうだ。
(え? 何でこの人がそんなことを知っているの? ○○さん本人だってそのこと知らないのに……)
 これは絶対に彼女しか知りえない情報だったため、酷く動揺した。
 男は扉の細い隙間に自分の顔を無理矢理差し込んでくる。
「お前の肩についている赤ん坊、俺に分けてくれよ?」
 さっきの爽やかな笑顔から一転して、突然低い声でそう囁きかけてきた。
 自分の肩を確認してみても当然、赤ん坊のようなモノは肩についてはいない。
 男性のあまりの変貌ぶりに心臓の鼓動は早くなり、足が竦んでその場から動けなくなってしまった。
 あまりの恐怖に玄関の扉をすぐに閉めようとすると、男は扉の隙間に強引に足を割り込ませてきた。
「どうして逃げようとするんですか?」
 男は彼女の髪を鷲掴みにすると、自分の顔面に向かってぐっぐっぐっと、口づけができるくらいの距離にまで無理矢理彼女の顔を引き寄せる。
 彼女は髪を引っ張られた痛みで悲鳴を上げた。
 男と至近距離で目が合った際、男の目を見てとにかく驚いた。
 男の目はまるで底の見えない暗闇のような色をしており、その男の目には何故か沢山の赤ん坊の頭部だけが浮かんでいる。
 すると突然男はあ――――――んと、口を大きく開いたかと思うと彼女の肩にしゃぶりついたのだ。
 まるで赤ん坊が母親の乳房をしゃぶるように、チュパチュパチュパチュパ大きな音を立てながら男は彼女の肩を満面の笑みでしゃぶり始めた。
 あまりの恐怖に声を上げることもできなかった。
 怖い怖い怖い怖い怖い怖いとただ、心の中で声にならない叫び声を上げながら泣き続けた。
 二十分ほど時間が経ってチュポンという大きな音が辺りに響き渡る。
 男は彼女の肩から口を離して自分の口の周りを一周舌を這わせて舐めまわした。
「ああ……水子の霊、美味しかった」

※続きは書籍にて

「羊の家」影絵草子 より抜粋

「こんなことを言うと、おかしいと思われるかもしれませんが、私の趣味はいろんな町に必ずひとつある〈隠れ家〉を探すことなんです」
 詳しく説明すると、形や色は様々で、共通した特徴もないけれど、見た瞬間にここだ!
 と思う〈空き家〉がどの町にも必ずひとつだけあって、それを見つけるのが趣味である、とのことらしい。
 この話をしてくれたのは三井さんという女性。
 前述したように〈隠れ家〉に特徴はない。バス、タクシー、自家用車を駆使し、雰囲気だけで見つけ出す。そんな不可思議な能力に長けている。
 役に立ったことがあるかと言えばそうでもない。
 ただし、なにがなんでも探さなくてはいけない理由があるのだという。
 ある日、ある町の〈その家〉を路地の先に見つけた時、誘われるように中に入ってしまった。なぜかはわからない。身体がなすべきことを知っているような感覚であったという。そのまままっすぐに廊下を進み、居間の押し入れを開けると、中に父親が小さく身体を折り曲げて入っている。
 確かに父親だ、間違いない。
「お父さん、こんなところで何やってるの?」
 父親は首を曲げたまま三井さんを見上げ、ニタァと笑って跡形もなく消えた。
 それから、何度も同じようなことがあり、ある日は、母親が風呂場にいたり、弟が床下に寝ていたり、祖父母が天井裏で逆立ちをしていたり、つまり、家族の誰かが家のどこかしらにいて、それを三井さんが見つけ出す隠れん坊の鬼役なのである。
「童話で狼が羊を家の中で探すようなのがあるじゃないですか。だから、私は羊の家って呼んでるんですけど、誰も探せなかった時には家を出る時に声がするんです。確かに聞きまた。『まずはひとり』っていう見知らぬ人の声を」
 そうして、私が一番気になっていた〈探さなくてはいけない理由〉を話してくれた。
「まずはひとりっていう言葉からもわかるかもしれませんが、いろんな町にある羊の家で隠れた家族を見つけられなかったら、家族の一人に何かが起きる。そんな不安をどこかに持っていたんです。かといって探さなければ、もっと悪いことが起きてしまうような気がして……。今までひいおばあちゃん以外は、運よく見つけられていましたが、いつかまた見つけられない日が来るんじゃないかという予感はありました。そして、その日は思ったより早く来てしまいました……」
 ある日、ある町の〈その家〉を路地の先に見つけた時、誘われるように中に入ってしまっ
た。なぜかはわからない。身体がなすべきことを知っているような感覚であったという。
そのまままっすぐに廊下を進み、居間の押し入れを開けると、中に父親が小さく身体を折
り曲げて入っている。
 最近、見つけた〈羊の家〉はなぜか昔住んでいた実家に似ていた。
 空き家にも拘らずまるで葬儀の行われている家のように鯨幕が掛かり、仏間には棺桶が五つあった。
 中は、空っぽ。線香の煙と香りが部屋中を包んでいた。

※続きは書籍にて

著者紹介

影絵草子 Kageezoushi

マンガンジョーの名も持つ。2018年より活動を開始、幼少期より集めた怪談は1,000以上。体験者が実際に存在する怪談のみを集めることをモットーとし、日常的な都市部の現代怪談から土地にまつわる風習怪談までジャンルも多岐に渡り収集している。2024年4月に初怪談独演会-毒演怪-を開催。同年金沢でも独演会を行う。主な著書に『茨城怪談』『屋敷怪談』。

三好一平 Ippei Miyoshi

愛媛県出身。声優。怪談最恐戦2022から怪談を人前で話し始める。ユウプロホラーチャンネルの一員としても活動している。YouTubeチャンネル「三好一平の怖い話」。

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