2022年2月17日
気象庁の公式記録によると、日本の過去最低気温は1902(明治35)年に旭川で観測された−41℃。しかし、気象庁非公式ながら1978(昭和53)年2月17日、北海道幌加内町母子里で氷点下41.2℃という最低気温が記録されているのです。このことにちなんで、天使の囁きを聴く会が記念日に制定しております。
ちなみに「天使の囁き」とは、氷点下20℃以下の条件で空気中の水蒸気が凍ってできる氷の結晶=ダイヤモンドダストをさしているそうです。
さて、本日の怪談は――
「停電」
ある工場に見学に行ったときのこと。
操業中の場内を案内をしてくれたのは、工務部の木島課長だ。
部品加工を中心としたこの工場は、プレスの落ちる音とカッターが何かを削る音、モーターとコンベアの爆音で満たされていた。
「停電したらー……!」
「なんですってー?」
「停電したらー、予備電源にー、切り替わりますー!」
「えー? なんですってー?」
この騒音が止むのは、休み時間とメンテナンスのときくらいのもので、それ以外の操業時間中はひっきりなしに轟音が鳴り響いている。
「だからー! 停電したらー!」
木島課長が大声を張り上げて続けようとした、その直後。
どこかで子供の泣き声が聞こえた。
途端に工場内の騒音が止み、照明が落ちた。
停電したのだ。
機械が沈黙していく。
「……またか」
木島課長はそう呟いた。
が、触れたらいけない話題のような気がしたので、それ以上詳しくは聞かなかった。
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「停電」加藤一『禍禍―プチ怪談の詰め合わせ』