2022年2月11日
【今日は何の日?】2月11日:建国記念日
建国をしのび、国を愛する心を養うための、国民の祝日です。
さて、本日の怪談は――
「水玉」
反町さんが駅前を歩いていると、ロータリーの向こうに渡る横断歩道に〈カラフルな人〉がいた。
全身を包む白いタイツに散らした、青、赤、黄色、紫の大きな水玉模様。
〈テレビの撮影でもしてるんだろうか?〉
辺りを見回してみるが、カメラもなければディレクターもいない。
横断歩道の真ん中に、色とりどりの水玉全身タイツを纏った姿で立っている。
信号が変わると車列が動きだすが、車列は水玉タイツをうまく避けて往来する。
再び信号が変わる。
横断歩道の同じ場所に、やはり水玉タイツがゆらりゆらりと立っている。
〈撮影にしたって危ないよな……〉
しかし、妙だ。
駅前であれほど目立つ衣装を着ているのに、辺りを行く人々は誰も水玉タイツに注目していない。横断歩道を渡り始めた人々も、誰も振り向かない。
信号を渡りはじめた反町さんは、水玉タイツに近付いてみてようやく気付いた。
全身タイツに水玉……ではなかった。
青、紫の水玉は痣だった。
黄色は裂けてめくれ上がった傷口からはみ出した脂肪だった。
赤は鮮血だった。
それは〈死んでいる人〉だったようだ。
全身を激しく痛めつけられたのであろう水玉の死人は、反町さんが通りすぎた後も横断歩道の真ん中でゆらりゆらりと立ち尽くしていた。
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「水玉」加藤一『禍禍―プチ怪談の詰め合わせ』