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死霊、生霊、生首、鬼… 何が出るか分からぬ奇怪な実話! 内藤駆『夜行怪談』

「人に仇為す者になってしまう…」
土葬が掟の或る地域。
守らぬと恐ろしいことが…
(「土葬」より)

死霊、生霊、生首、鬼、異形…
何が出るか分からぬ暗夜の道行き、奇怪な実話!

あらすじ・内容

一風変わった怪奇恐怖譚を集めた空恐ろしき実話怪談集。

故郷の掟に従い土葬にしてくれと遺言した祖母。さもなくば人に仇為す者になってしまうというのだが…「土葬」
突然家に現れた着流しの男。以来、家の至る所で木刀が見つかって…「木刀の家」
不用品を庭に出していると、裏山から鬼が現れ持っていく。御礼に死んだ愛犬を生き返らせてくれるのだが…「庭の男」
幼少期に幼馴染みの家で見た赤い坊主頭の生首。その後、金銭的な浮き沈みがあるたびに幼馴染みの一家は人相どころかまったくの別人に変わってしまう。だがそれに気付いているのは自分だけで…「今の嫁です」

……ほか、奇怪な25話!

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著者コメント

「無限ムカデ」――題名は、すみません、某有名アニメの映画版から頂きました……。
自分は純粋な幽霊譚や因縁話等も好きですが、やはりこういう正体不明な異形生物?が一番の好みです。
同じような異形生物で、「白蛇達」という話も載っていますので、そちらもお楽しみください。
ちなみに無限ムカデの深谷くんの地元、昔は不定期にムカデが大量発生することがあったそうです。
この無限ムカデと関係があるかどうかは不明ですが。

試し読み 1話

 三年前、知り合いの深谷君が実家に帰ったときに目撃した、不思議な生き物の話。
 年末、深谷君はバイクで実家に帰郷した。
 翌日、朝から実家周辺をツーリングしようとしたが、バイクの調子がおかしい。
 そこで、芝生の広がる庭にシートを敷いて、バイクの修理を行うことにした。
「昨日までは絶好調だったのに、おかしいなぁ……」
 深谷君が工具をバイクの横に広げたとき、庭の隅に生い茂る低木林の少し開けた箇所に、何かが蠢いているのに気が付いた。
 ヌラヌラと黒く光る長い胴、嫌らしく細々と動く、オレンジ色の無数の足。
 かなり大きなムカデだった。
 その大きなムカデの長い胴が、低木林の開けた箇所の地面でたくさんの足を這わせながら、左から右へとゆっくりと移動している。
「今は十二月の終わりだぞ。ムカデが活動しているなんて珍しいな。しかもデカい」
 深谷君は子供の頃から、実家周辺でムカデは嫌というほど目撃しており、親や親族からは見かけたら決して近付くなと何度も言われてきた。
 そんな見慣れたムカデだが、年末の寒い時期に見かけるのは初めてだった。
 深谷君は珍しさから、暫くそのムカデを観察した。
 そして数分経った後、彼は呟いた。
「どれだけ長いんだ、このムカデ」
 低木林の間を這い進むムカデの胴は、まるで終わりがないかのように左から右へと延々と行進を続けていく。
「もしかしたら、複数のムカデが連なって移動し、長いムカデのように見えるのかもしれない……」
 もちろん、そんなムカデの習性は深谷君も聞いたことがない。
 深谷君はバイクの修理も忘れて、延々と左から右に移動するムカデの胴に近付いた。
 そして暫くムカデの胴を観察していたが、途中で他のムカデの頭や尻尾の部分が現れることはなく、やはり一匹のやたら長いムカデが移動しているらしかった。
 深谷君は不気味に思いながらも、好奇心から〈こいつは一体どれだけ長いムカデなのか〉と工具で突いてみようと思った。
 バイクの工具箱から一番長い工具を取り出して、再びムカデのほうを見たとき、深谷君はこいつに手を出すのは止めようと即断した。
 ムカデの行進は終わろうとしていた。
 ムカデの尻尾に当たる部分に人の頭ほどある異様な塊がくっついていて、それがズルズルと音を立てながら引きずられていた。
 塊の正体は様々な昆虫、蝶や蛾、ミミズや芋虫で構成されていた。
 それだけではない。トカゲやネズミ、コウモリなどの小動物も含まれている。
 そして、それらは一つに固められた塊になりながらも、まだ生きて蠢いているのだ。
 深谷君は近くでそれを見て、危うく吐きそうになった。
 人の頭ほどもある生き物達の塊は、ムカデの尻尾にズルズルと音を立てて引きずられながら暗い繁みの中に消えていった。
 庭に現れたムカデのような生き物と、生き物達の塊の正体は未だに分からない。
 そして深谷君は最後に言った。
「塊が繁みに消えていくときにさ、その中に人間の指みたいな物が交じっているのを見たんだよ。耐えられなくて最後は吐いてしまったよ」

(了)

🎬人気怪談師が収録話を朗読!

https://youtu.be/6Wz8xiXTl0Y

8/27 18時公開予定

著者紹介

内藤駆 Kakeru Naito

ホラー映画、ホラーゲーム、怖い話(実話、創作共に)、怖い絵と夜のランニングが好きな男。書き溜めた実話怪談を編集部に持ち込み拾われた。
2019年『夜泣怪談』にて単著デビュー。共著に『現代怪談 地獄めぐり』『黄泉つなぎ百物語』『恐怖箱 怨霊不動産』など多数。

好評既刊

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