2021年9月7日
1日1話、実話怪談お届け中!
【今日は何の日】9月7日:(眼鏡の)クリーナーの日
さて、本日の1話は――
「大学の噂」
和田の携帯に電話帳登録のない携帯番号からの着信があった。
「はい。和田です」
『あ……あのぉ。返してもらえませんか?』
聞いたことのない女の声だった。
「ええと。こちら和田です。間違い電話じゃないですかね」
『……返してほしいんです。形見なんです』
弱々しい声だが滑舌は妙に良い。
「多分、間違いですよ。話が分かりませんよ」
『その眼鏡なんですよ。眼鏡掛けてますよね?』
和田は確かに眼鏡を掛けていた。ここ一年の間に近視が酷くなり、最近眼鏡を新調したばかりだ。といっても、中古で買ったフレームではなく新品のものだ。
「お前、誰? イタズラだろ? 面白くないからやめろ」
知人の差し金と踏み、それだけ告げると和田は電話を切った。
その後、大学中で〈眼鏡返せ電話〉の噂が広がった。
和田の友人の眼鏡利用者複数名がその電話を受けていた。
女が話す内容も皆一致しており、着信履歴が残らないという点も一致していた。
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――「大学の噂」高田公太『恐怖箱 百眼』より