2022年1月13日
【今日は何の日?】1月13日:ピース記念日
高級たばこPeace(ピース)が発売された日をご存じですか?1946(昭和21)年1月13日です。このことにちなんで、愛煙家たちが記念日に制定しております。
さて本日の怪談は……
「喫煙所 二編」
占い師のリョウカさんは、昔から〈強い〉と自負している。そういうこともあって、時に〈お祓いの真似事〉を頼まれることもあるのだそうだ。
「最近だとね、良くないところは会社とか公共施設にある喫煙所よね。あんなもん淀むに決まっているのよ。ストレスの溜まり場なんだから」
ある企業の社長に風水に関するアドバイスを請われ、会社を訪れたときのことである。「ああ、これが良くない」
リョウカさんが真っ先に指摘したのは、ガラス張りの喫煙室だった。
「社長、あの煙どうして消えないか分かります?」
「ああ、確かに煙っているが、誰かが煙草吸ってたからじゃないのかね」
よく見ててください、とリョウカさんは社長に言い、二人で暫く喫煙室の様子を窺った。
うっすらと舞う白い煙はいつまでも消えることはなく、右に揺れ左に揺れ、時にガラス壁にふぅっと全体が当たると、またユラッと散るばかりだった。
「あ、あれ……煙草の煙じゃないのかね……? まるで生きているみたいだ……」
「あれを放っておくと、会社は潰れます。喫煙所は外に置いたほうがいいです。外だと、ああいうモノが向かう先がいくらでもありますからね」
※
コウイチがその昔アルバイトをしていた物流倉庫には、やけに汚い喫煙所があった。 二交替、二十四時間態勢で動く倉庫では喫煙所の使用頻度がとても高く、壁全面に茶色いペンキでも塗ったかのようにヤニの色が付いていた。「……でね。ここからなんですけど、ある日からその喫煙所に関して夜勤連中の間で噂が立って」
――休憩時間外に喫煙所に行くと、明かりの点いた部屋の中に一人の男が煙草も吸わず、ただ突っ立っている。無視して煙草を吸うと、近付いて副流煙を吸おうと口をスースーさせてくる。
「聞いたときは、何じゃそりゃ! っていう殆ど笑い話だったんですけど」
コウイチ君も夜勤シフトのときに喫煙所で男の姿を見ることになった。
男は昼勤で少しの間一緒に働いていた中年の派遣社員だった。
「あなたどっか身体悪くして入院してたんじゃないの?」
と声を掛けると、男は「あっ」と声を上げ、パッと消えた。
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「喫煙所 二編」高田公太『恐怖箱 百眼』