【第16話】ネズミだと思いきや… 元職員が明かす、火葬場に潜む恐ろしい怪異【下駄華緒の弔い人奇譚】
―第16話―
どこの火葬場かはここでは言えないんですが、ある火葬場に知る人ぞ知る有名な火葬場職員がいまして、通称「ネズミのおっちゃん」と言われるAさんという方がいました。その人の詳細はこうです。
ある日「職員休憩室にネズミが出た!」とAさんが言いました。
火葬場にネズミが出るというのは勿論好ましくないので職員総出で休憩室を隈なく探します。ですが、どれだけ探してもネズミが見つからないんです。
「Aさん、ネズミいないですよ」と言うんですがAさんは「絶対にいた」と頑なに譲りません。そんな事が月に一回くらい定期的にあるそうなんです。
そんな事が一年以上続き、いつしか噂になって「ネズミのおっちゃん」と呼ばれるようになりました。
※
ですが、もしかしたらその原因が少し判明したかもしれません。
Aさんの働いている噂の火葬場の他の職員と僕は元々交流があり、よく話す機会がありました。彼が言うには
「わたしね、多分あの人の法則がわかったんよ」
「え?法則ですか? どういう?」
「いや、実はねあの人さ…ネズミが出たー! って言う日は必ず死産の赤ちゃんの火葬をした時なんだよね。もしかするとだよ? 考えただけでもゾッとするんだけどさ、あの人の言ってるネズミってもしかして…」
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「ネズミのおっちゃん」にしか見えないので僕たちには真実はわかりません。
でも、もしソレが休憩室の中を「カサカサカサ!」と走っていると考えると……ちょっと怖いです。
著者紹介
下駄華緒 (げた・はなお)
2018年、バンド「ぼくたちのいるところ。」のベーシストとしてユニバーサルミュージックよりデビュー。前職の火葬場職員、葬儀屋の経験を生かし怪談師としても全国を駆け回る。怪談最恐戦2019怪談最恐位。