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2021年9月4日
1日1話、実話怪談お届け中!
【今日は何の日】9月4日:供養の日
さて、本日の1話は――
「ビスクドール」
神足さんは友達の高沢さんと二人で、以前から目を付けていたアンティークショップに行った。
そのアンティークショップの奥の棚に、一体のビスクドールが佇んでいた。
高さが三十センチ以上あるフランス人形である。
神足さんはその人形を一目見るなり、薄気味悪く感じた。
「ね、出ましょ」
戸惑う高沢さんを急かし、慌てて店を出た。
その晩から、神足さん宅の廊下を誰かが走り回る音がするようになった。
だが、神足さんはその音を無視し続けた。何かが憑いてきたとき、相手をすれば居着くと、ある人から言われていたからである。
数日ほど言いつけ通りに無視し続ける内に、足音は聞こえなくなった。
一方、高沢さんの家でも足音が始まった。その足音を聞いた高沢さんは、
「ねぇ、誰かいるの?」
と気配に対して声を掛けた。
最初の内は時々足音が聞こえる位だった。
しかし、次第に足音は大きく、気配も濃くなっていった。
一週間もしない内に、走り回っているのが〈子供〉だと分かる程になった。
子供の気配は濃くなり、同時に高沢さんのお子さんが日に日に精気を失っていく。
とうとう、お子さんは衰弱のあまり起き上がれなくなった。
「助けて」
神足さんは、高沢さんから相談の電話を受けた。
電話口で子供が喋っている。だが、聞き慣れた高沢さんのお子さんの声ではない。
そもそも日本語ではない。
それを聞いて、自分では手に負えないと直感した。
「あたしじゃ手に負えないから、先生を紹介するね」
先生とは、神足さんに「憑いてきた相手を構うな」と指導した本人である。
「あなた達の見た人形にはね、餓死した子供が憑いているね」
と先生は渋い顔をした。
「高沢さんのお家で声を掛けてもらって、ご飯がもらえると思ったのね。だから勝手にどんどんご飯を持っていっちゃったのよ」
それが、高沢さんのお子さんが衰弱した理由だと先生は言った。
ちゃんと供養してあげないと。
高沢さんはアンティークショップを訪ね、件のビスクドールを買い求めた。
そしてきちんとお祓いと供養をした。
今は足音も聞こえなくなり、お子さんも元気にやっている。
★
――「ビスクドール」神沼三平太『恐怖箱 百聞』より