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『恐怖箱 煉獄百物語』加藤一/編著、神沼三平太、高田公太、ねこや堂/共著、驚怖の実話怪談、百連発!

「なんでそんなに優秀なの?」

天才と呼ばれる同級生。
でも、あの子といると私の骨が外れる…。(「浩江ちゃん」より)

「えっ」「ぞわっ」の百連発
驚怖の実話怪談!!!

内容・あらすじ

加藤一、神沼三平太、高田公太、ねこや堂の4人が独自の嗅覚で聞き集めた全て実話の百物語。
・何でもできる神童のような友人の秘密。彼女の周りで起きる不幸との因果は…「浩江ちゃん」
・暴走族のバイクのリアシートに座る彼女が背負っていたものは…「だって俺、オヤジになるじゃんよ」
・夫婦で入ったギャラリー。出てから感想を言い合うと奇妙なズレが…「絵画展」
・最強の祓い師だった先々代住職の恐るべき手腕…「真似はできない」

…他、恐怖、奇怪、不思議、不気味。この世の異分子が密にひしめく地獄のごとき怪奇録!

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著者コメント

加藤 一
いやあ、千話できちゃいましたねえ。百物語をライヴでやったことがある人は皆、ピンとくるんじゃないかと思いますが、一晩で百話やるのも本当は大変なんですよね。小さくまとまらなかったり、ネタが尽きたり、似たような話ばかりになったり。最近は、怪談文庫のほうでも、他社さんでも、或いは動画配信やなんかでも百物語にチャレンジする人々や百物語系の新刊が次々に出て、百物語の百は百花繚乱の百かな、と思うほどです。
さてさて、恐怖箱百式チームはとうとう千話成就。コンスタントに、しかし選りすぐった百話を十回重ねての千話です。そして、「じゃあ、次は二千話目指そうぜ!」ってんで、我々早くも来年に向けてアクセル踏みこんでますので、今後も引き続き御愛顧の程を。
ねこや堂(「真似はできない」)
 僧侶の方に限らずなのですが、「視える」人々の中には霊に対して成仏を促す際にやや強引な手法に出る方がいるそうです。岩塩の塊を霊の顔面に叩きつけるとか、岩塩を握り締めた拳でボディブローを叩き込むとか。
 正に拳が物をいう、そういう事例は結構あることのようで。力任せの説得ですね。まあ脳筋にも程がありますが。
 そういう意味では、生きている人間が一番怖いかもしれません。

著者自薦試し読み

自動運転レベル5 加藤一

道路の曲がり角から一台のセダンが出てきた。
セダンは下校途中の小学生の脇を走り去っていった。
白地に青の花柄のシートカバーを付けた運転席は無人であった。
一九八〇年初頭頃、テスラ登場以前の話である。

真似はできない ねこや堂

 友人の一人に実家の寺を継いだ者がいる。
 住職になってから大分経つのだが、しっかりとした立派な体躯の割に大層な怖がりで、未だに「そういうこと」に慣れないという。大凡僧に向いているとは思えないのだが、それなりに檀家からは信頼されている。
 仕事柄お祓いを頼まれることもあって、毎回「成仏を願って経を上げる以外何の役にも立てないと思うのですが、それでもよろしいですか」と何度念押ししても、何かしら相談されるくらいには。
 確かに「視える」し「分かる」。彼曰く「視える」ことと「対処できる」こととは別問題であるらしく、「そういうことができるのは一部の選ばれし者達で、拙僧のような平凡な僧には過度な期待はしないでほしい」と切に願っている。
 先々代住職である彼の祖父は、その「一部の選ばれし者達」の一人であったようで、豪放な「手腕」で以て、持ち込まれた問題を解決していた。
 子供の頃の話だが、本堂にうっすらとした霊が出るようになった。気配が薄いくせに何事か小声でブツブツ呟いている。そんな仄かな存在でも怖いものは怖い。なるべく本堂に近付かないようにしていると、気付いた祖父が足音荒く本堂へ。
「声が小さい!」
 一喝。
「そんなだから成仏できんのだ!」
 エクスクラメーションマークが、あと五つくらいは付いていたのではないかと思わせるような音量である。
「もっと! 大きな声でっ! はっきり姿を現さんかあっ!」
「ひぃっ」
 小さな悲鳴を上げて霊が掻き消えた。思わず霊に同情した瞬間であった。
 それから暫く経ったある日、祖父は檀家に呼ばれた。幽霊が出るようだから一度見てほしい、という。果たして、リビングの隅に佇む影。目にした瞬間、数珠を巻いた手でグッと拳を握る。
「いいですか!」
 ゴツン! と重い音がしそうな拳が霊の顔に繰り出された。
「幽霊というものはあなた達の不安が形になったものです!」
 顔は家人に向いたまま、拳は霊に降り注いでいる。
「こんなものはいません!」
 いないと言われたはずの幽霊が、どつき回されている。
「だから私は、あなた達の心が平穏であれと読経致します!」
 そうやって経を唱えながらパンチングマシーンが如く拳を見舞い続けて間もなく。
「ご、ごめんなさい、許してください」
 泣き声を残し、家の者達の目の前で逃走した。お祓い(物理)成功である。因みに祖父は極真空手の黒帯であった。
「親父が行くとな、お盆なのにお墓が静か~になるんだわ」
 父である前住職がボヤいていたのを覚えている。
 そんな祖父も鬼籍に入って暫く経つ。
「祖父ちゃん、俺結婚できるのかなあ」
 独身生活も長い彼が、何げなく仏壇に向かって呟いてすぐ、お供えの花が全部首からポロリと落ちた。全否定である。
「知らせなくていいよ、そういうのは」
 もっともである。

(了)

🎬人気怪談師が収録話を朗読!

【竹書房怪談文庫×怪談社】でお送りする怪談語り動画です。毎月の各新刊から選んだ怖い話を人気怪談師が朗読します。

今回の語り手は 和泉茉那 さん!

【怪読録Vol.96】超豪華!人気怪談本から4話一挙大公開—加藤一編著、神沼三平太、高田公太、ねこや堂共著『恐怖箱 煉獄百物語』より【怖い話朗読】

著者紹介

加藤一 Hajime Kato

1967年静岡県生まれ。O型。獅子座。人気実話怪談シリーズ『「超」怖い話』四代目編著者として、冬版を担当。また新人発掘を目的とした実話怪談コンテスト「超-1」を企画主宰、そこから生まれた新レーベル「恐怖箱」シリーズの箱詰め職人(編者)としても活躍中。主な著作に『「忌」怖い話』『「超」怖い話』『「極」怖い話』各シリーズ、『「弩」怖い話ベストセレクション 薄葬』(竹書房)、『怪異伝説ダレカラキイタ』シリーズ(あかね書房)など。

神沼三平太 Sanpeita Kaminuma

神奈川県出身。O型。大入道。足のサイズ31.5cm。いくつかの大学の非常勤講師の傍ら怪談蒐集と執筆を行う。ロシアンブルーの猫のお父さん。コーヒー焙煎とシフォンケーキ作りが趣味。主な著作に『実話怪談 吐気草』他〈草〉4部作、『恐怖箱 醜怪』他〈憂怪〉4部作(竹書房)など。

高田公太 Kota Takada

青森県弘前市出身。1978年生まれ。O型。サラリーマン。性格は気さく。好きなアイドルは絵恋ちゃん。主な著作に『恐怖箱 青森乃怪』『恐怖箱 怪談恐山』、近刊共著に『青森怪談 弘前乃怪』『東北巡霊 怪の細道』(竹書房)など。

ねこや堂 Nekoya-do

九州在住。実話怪談著者発掘企画「超-1」を経て恐怖箱シリーズ参戦。現在、お猫様の下僕をしつつ細々と怪談蒐集中。B型。主な共著に「恐怖箱 百物語」シリーズ、『追悼奇譚 禊萩』『現代実話異録 鬼怪談』(竹書房)など。

シリーズ好評既刊

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