2022年2月6日
【今日は何の日?】2月6日:抹茶の日
茶道でお釜を乗せて湯をわかす道具のことを風炉といいますね。
これです。この風炉=26の語呂合わせから、愛知県の西尾市茶業振興協議会が2月6日を「抹茶の日」に制定しております。
「ゴロゴロ」
博史は彼女を横に乗せて山道をドライブしていた。
途中で急勾配に差し掛かり、ぐっと車速が落ちた。ギアを低速に入れ、人が走るよりは速いかといった程度の速度で、長い急坂をゆるゆると上がっていった。
そのとき、車体の横を何かがすり抜けてフロントに踊り出た。ヘッドライトに照らされた姿は、白い着物を着た老婆であった。老婆はでんぐり返しでゴロンゴロンと坂を登っていく。老婆との距離がみるみる広がった。最早追いつける速度ではなかった。
呆気に取られた。
今のあれは何だったのかと彼女と二人で話しながら、ようやく坂を登り終えた。
今度は下り坂だ。ぐっとスピードが上がる。次々に差し掛かる急カーブを攻めながら順調に下っていくと、再びヘッドライトの明かりに老婆の姿が映し出された。轢いてしまう訳にはいかないので、そのままアウトサイドからでんぐり返しで転がっている老婆を抜き去った。老婆もスピードを上げ、しつこく食い下がってきた。しかし、広い道に出たところで博史はアクセルをべた踏みしてスピードを上げた。今度は博史の車が老婆を置き去りにする番であった。急加速にさしもの老婆の姿も見えなくなった。
ほっとしたところで、自宅までの途中の道の駅でトイレ休憩を取った。用を足した後、彼女と二人で缶コーヒーを啜っていると、先ほどの老婆が、猛回転をしながら街道から道の駅へと飛び込んできた。
博史と彼女が慌てている横を、老婆は見せつけるようにそのまま猛スピードで転がりながら通過していくと、再び街道に戻っていった。
それ以降、でんぐり返しする老婆には出会っていないという。
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「ゴロゴロ」神沼三平太『恐怖箱 百舌』