2022年2月4日
【今日は何の日?】2月4日:西の日
2月4日に西の方角へ向かうと幸運に巡り会えるという地域伝承があるのをご存じですか?【に(2)し(4)】の語呂合わせにちなんで制定された記念日です。
「炬燵蜜柑」
森田さんは蜜柑が大好物である。冬になると蜜柑をカゴ一杯積み上げて炬燵に入り、蜜柑を食べ食べ読書するのが一番の楽しみである。
ある日、いつものように炬燵で蜜柑を食べていると、思ったよりも速いペースで蜜柑が減っていく。
――こんなに早くなくなるものだったっけ。まぁ美味しいからハイペースで食べてしまったのだろう。
首を傾げながら再びカゴに蜜柑を補充し、炬燵で読書の続きをしていると、やはり想定より早く蜜柑が減る。これはおかしい。普段なら一日で食べる量を優に越えている。手元にある蜜柑の皮の枚数を数えても、やはり計算が合わない。
再度蜜柑を補充した後で、今度は蜜柑の山に気を付けながら読書を再開することにした。
暫く経つと、炬燵の向かい側から白い手が伸びて蜜柑を鷲掴みにし、再び炬燵布団の向こうに素早く消えていった。
一回ではない。二度三度と手が伸びてくる。
犯人は炬燵の中にいるに違いない。そう直感し、森田さんは蜜柑を食べるのを中断して耳を澄ませた。
炬燵の中から汁っぽい音が聞こえてくる。誰かが炬燵の中で蜜柑を食べているのだ。
勇気を出してえいやっと炬燵をひっくり返した。
炬燵の中には干涸らびかけた蜜柑の皮が何個分も散乱していた。
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「炬燵蜜柑」神沼三平太『恐怖箱 百舌』