【第19話】焼け爛れた頭や手足が超こわい! 火葬される〈友引き人形〉のリアル恐怖!【下駄華緒の弔い人奇譚】
―第19話―
友引き人形ってご存知ですか?
日本では全国的に友引の日の火葬や葬儀を避ける風習のある地域が沢山あります。例えば火葬場自体も友引の日は閉館している、というところもあります。
実は、友引や大安などというのは中国の六曜という文化から来ており葬儀の多数を占める仏教としては「友引き」は教義に特に関係なく、友を引くという語呂に対する何となくの日本国民の中の意識で避けられているだけだったりします。
そもそも現在言われている友引は元々「共引き」と言って、引き分けだとかそういう意味合いのものでした。それが縁起が悪そう…というイメージだけで風習としてずっと残っているというのも、なんとも不思議です。
ですが、僕の働く火葬場では友引の日も通常通り運行していまして、その際に時たま「友引き人形」というのがご遺体と一緒に棺に納まっている事があります。
要するに「友を引く」日なので友の代わりに身代わりとして人形を連れて行ってください、という意味合いです。つまり、身代わり人形です。
この友引き人形、布や紙製の物なら焼失するのですが中には陶器製の立派な日本人形のような友引き人形もあります。陶器の場合は焼失せずに残るのですが、間接稼働部分はプラスチックだったりして最終的に手足と頭がバラバラの状態になって、しかも焼けた後なので全身がマダラ模様のように変色していたりして、なかなかに恐怖を煽ります。
実際、お骨上げの時に遺骨と一緒に遺族さんの前にお出しする際、そんな焼けただれた友引き人形を見て「うわっ!」とびっくりされる方もいます。本当、怖いので陶器製の友引き人形はちょっと……と僕も内心思っていました。
特に怖かったのは、遺族さんに遺骨をお出しする前にその状態をひとりで確認しにいく作業があったのですが、狭く薄暗い空間で焼けただれた友引き人形と一緒に過ごす時ですね。
ある友引の日に先輩の職員がお骨上げ前の確認をしに行った時です。
僕も聞こえたのですが「うわぁ!」と先輩の大きい悲鳴が聞こえました。
どうした! と思ってすぐに声の方に駆け寄ると、その先輩が遺骨を確認する部屋にいたんです。
「びっくりしたー」という先輩が指差す方向には、焼けただれてバラバラになった友引き人形の残骸と、どういう理由でそうなったのかは分かりませんが頭がちょこんと立っていて、確認する部屋を開けたらちょうど職員と目が合うような位置にあったんです。
まるで誰かを脅かすためにでも置いたかのように。
それに驚いてつい声が出てしまった、ということでした。もちろんそんな脅かすような事をわざわざする人はいませんし、火の勢いで転がったりする可能性は十分あるので、もちろん偶然だとは思いますが……。
身代わりとして作られた友引き人形の、何らかの意思を感じてしまうと恐ろしいですよね。流石にその道20年の先輩でも怖かったんですね…。
著者紹介
下駄華緒 (げた・はなお)
2018年、バンド「ぼくたちのいるところ。」のベーシストとしてユニバーサルミュージックよりデビュー。前職の火葬場職員、葬儀屋の経験を生かし怪談師としても全国を駆け回る。怪談最恐戦2019怪談最恐位。