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史上初?!阪急電車沿線の地域限定怪談本『阪急沿線怪談』(宇津呂鹿太郎)著者コメント+収録話「公園の女(十三)」全文掲載

京都、大阪、神戸…関西三大都市に潜む怖い話!


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あらすじ・内容

京阪神を横断する阪急電車沿いに発展し、独自の文化圏を擁するこの沿線の街に潜む不思議や怪異が満載の関西ご当地怪談!

男の霊に出くわす大阪梅田近くのホテル

神戸三宮のパチンコ店にある異空間への扉

生者を橋から引きずりこむ西宮北口の悪霊集団

京都河原町にあった呪物的絵画

顔の溶けた女の霊が現れる十三の公園

彼の世へ通ず!?豊中の団地に現れる奇妙なエレベーターのボタン

落書きが動く!?高槻市の小学校にあるトイレ

訪れると正気を失う宝塚山中の廃ホテル

怪奇現象が多発する今津線沿いの最恐物件 …ほか

大阪梅田を起点に西は神戸三宮・新開地、東は京都河原町まで、京阪神間を横断する阪急電車。
その沿線に広がる街に埋もれた数多の怪異譚を怪談作家・宇津呂鹿太郎が綴るご当地怪談集。
・歩道橋に現れた人ならざる異形「鳥肌」(茨木市)
・事故物件か!とあるマンションで頻発する数多の怪奇現象「アウトな物件」(伊丹)
・夜中に通ると果てのない塀が続き抜けられない!不思議な異界譚「阪急西宮スタジアムの跡地にて」(西宮北口)
・ある女性にとり憑く恐ろしい女の霊。話すことすらタブーの危険な恐怖譚「瞼の裏の女」(烏丸)
――など収録。

著者コメント

 阪急電鉄は、大阪、兵庫、京都を結ぶ鉄道である。神戸線、宝塚線、京都線の三つの本線と数々の支線がこの三府県を結ぶ。
 私自身、阪急沿線の土地で生まれ育ったため、電車といえば阪急だった。阪急電車に乗って様々な場所に行ったものだ。幼い頃、毎年行楽シーズンになれば、遊園地があった宝塚、動物園のある王子公園、紅葉に猿に滝と見所も多い箕面みのおなどによく連れて行ってもらった。年末には大阪梅田の阪急百貨店で買い物をし、最上階の大食堂で食事をするのが楽しみだった。高校生になると電車通学になり、毎日降りるのは雲雀丘花屋敷ひばりがおかはなやしきだ。
 大学は茨木市が最寄りだった。趣味として映画を見るようになった小学六年生頃からは、頻繁に大阪梅田や神戸三宮さんのみやに通った。どちらも映画館が集中しているからだ。今ならシネコンがある西宮にしのみや北口や、京都河原町、伊丹いたみも良いだろう。塚口も忘れてはならない。
 全国の映画マニアから熱い視線を浴び続ける老舗映画館がある。会社員をやっていた時は、勤務先が十三じゅうそう蛍池じゅうそうだった。蛍池は大阪空港に繋がるモノレールへの乗り換えが便利なので、旅行や出張の際にもよく利用した。一方、十三と言えば、この竹書房怪談文庫でもお馴染みの作家、伊計翼さんや糸柳寿昭さんが所属する怪談社の事務所があった土地だ。あの当時は私もよく十三で、怪談社の方々に随分とお世話になったものである。
 このように、仕事、趣味、幼少期の楽しい思い出など、阪急電車は私の人生のあらゆる場面において重要な役割を果たしてきた。もし私が阪急沿線に生まれ住んでいなければ、私の人生は全く違うものになっていたことだろう。私にとって阪急電車は最も身近な鉄道である。あの「阪急マルーン」と呼ばれる車体の色を見ると、心の底からほっとしてしまうのだ。

 そんな阪急電鉄の沿線には怪異に満ちた世界がそこかしこに存在しているらしい。私がこれまで集めた話の中に、阪急沿線を舞台としたものが無数にあるのだ。時代の先端を行く都会と豊かな自然の残る郊外、深い歴史に彩られた町と新しく生まれた新興住宅地、阪急電車は全く色合いの異なる土地と土地を結んでいる。それが、怪異を呼ぶ要因になっているのだろうか。いずれにせよ、一本の線路が、様々な怪なる土地、怪なる場所を繋いでいるという事実は、百年以上の長い歴史を持つ阪急電車の数ある魅力のうちの一つであることに間違いはない。
 本書は、私が集めたそのような阪急沿線の怪異な体験談をまとめたものである。実業家であり作家、政治家であり茶人、阪急電鉄の創業者でもある傑物、小林一三こばやしいちぞう氏もこのような書籍が刊行される日が来ようとは想像だにしていなかっただろう。
 皆さんも是非、本書を片手に阪急電車に乗って、各駅に赴いていただきたい。その駅で、或いはその周辺で、本書に書き留められた怪異の片鱗が見つかるかもしれない。

本書「まえがき」より全文抜粋

試し読み1話

公園の女 (十三)

 柿本さんがまだ二十代だった頃、事情があって、十三にある一軒家で一人暮らしをしている友達の家に厄介になっていた時期があった。これはちょうどその当時のことである。
 柿本さんは真面目な方で、普段は仕事が終わるとまっすぐ友人宅に帰っていた。しかし、週末などはたまに十三の繁華街を飲み歩くことがあった。仕事は面白くないし、彼女もいない。気心の知れた友達とはいえ、他人の家に厄介になるというのは気を遣うし、そんな状態の自分が情けない。特にこれといった趣味もないので、他にストレス発散のやりようもなく、だから週末の仕事終わりには一人で納得するまで楽しく飲み歩きたくなることがあるのだ。
 その日はそんな夜だった。季節は初冬。何軒かハシゴしてグデングデンに酔っ払い、時計を見るともう日付はとっくに変わっていた。でも大丈夫、今日はいつもよりちょっと遅くなってしまっただけだ。友達は彼が酔って帰るととても嫌な顔をするから、少し酔いを覚ましてから帰った方が無難である。
 そんな考えから、柿本さんは繁華街と帰るべき友人宅の間にある、小さな公園に行った。
 いつも酔い覚ましのために座るベンチを見る。するとそこには、若い女が一人で座っていた。こんな時間にもかかわらず。長い髪、すらっとした長い脚、そばに寄ってみると、これが結構な美人だ。
 公園は狭く、ベンチはこれしかない。柿本さんはどうするか迷ったが、酔った勢いも手伝って、その女の横に座ることにした。
「ここ、いいですか? 座りますよ」
 そう声をかけ、彼は女の横に、少し間隔を取って、どっかと腰を下ろした。
 さりげなく様子をうかがうが、女は嫌な顔一つせず、それどころか彼を見て少し微笑ほほえんだようにすら見えた。
 調子に乗った柿本さんはさらに話しかけた。
「こんな遅い時間にどうしたんですか?」
 女は、飲み過ぎてしまって、終電も逃してしまい、それでどうしようかと考えながら、酔いを覚ましていると答えた。
「そうなんですか。いや実は僕もなんですよ」
 そこからも二人の会話は続いた。初対面の女性とこんなにも会話が弾んだことはないというくらいに盛り上がった。その流れで彼は言った。
「うちに来ますか? と言っても友達の家なんですが、空いてる部屋は他にもあるし、そこで休んだらどうです? 友達もいいって言ってくれますよ」
 それならお願いしますと、女はその申し出に応じた。
 二人連れ立って、夜の通りを歩く。商店街を抜けると、そこはどこにでもある住宅街だ。街灯もまばらで薄暗い。すぐ横を歩く女の顔もよく見えない。
 十分ほど歩いて、友人宅に着いた。
 鍵を開けて玄関に入り、「おーい、上田~」と友達を呼んだ。
「あ、お前また酔っ払って。うっとうしいなあ!」
 嫌悪感もあらわに、奥から友達が出てきた。
「すまんすまん、でもな、困ってる人がいるから、今夜だけこの人を泊めたってくれへんか?」
 玄関まで出てきた友達がさらに嫌そうな顔で女の方を見る。
 うつむいていた女が、お願いしますと言いながらゆっくり顔を上げた。玄関の明かりの下で見るその女はやはり美しかった。
 ところが、友人は「ひっ!」と息を飲み、続けて大声で叫んだかと思うと、慌てて奥へと逃げてしまった。
「おい、どうしてん! 上田!?」
 奥に向かって話しかけるが、友人は顔も出さず「お前、何やねんそれ! どっか行け! 早くどっか連れて行け!」などとわめくように言うばかりである。
 友達の許可がなければさすがに他人を上がらせるわけにはいかない。柿本さんは女に謝って、再び友人宅を出た。
 結局二人はまた先ほどの公園に戻り、ベンチに座って世間話をしながら夜を明かすことにした。話は盛り上がって、とても楽しい夜になったという。
 ところが、もうすぐ夜明けという頃、ふと気が付くと、女は消えていた。今の今までしゃべっていたのだ。居眠りをしたとか、そんなこともない。とにかくどうなったのかよく分からないのだが、二人でしゃべっていて、ふと見るともうどこにもいなくなっていたのである。
 柿本さんは念のため、そこでそのまま女が戻ってくるのを待っていた。しかし、すっかり辺りが明るくなっても女は姿を現さない。それで仕方なしに友人宅へと帰った。
 帰宅すると友人が物凄い剣幕で突っかかってきた。
「昨夜のあの女はなんや! めっちゃびっくりしたわ! 変なもん、連れて帰んな!」
 何を言っているのか意味がわからないので、詳しく聞いてみると、友人はこう説明した。
 柿本さんが泊めてやってほしいというので、女を見ると、上げた女のその顔が突然ドロドロと溶け始めたというのだ。あまりに驚いたので、見たのは一瞬だけだったが、溶けて露わになった眼窩がんかの奥に眼球がズブリと消えていくのを明瞭に覚えているそうだ。
 柿本さんは「こいつ何を言ってるんだ」と最初は思ったが、怯えながら語る友人の様子を見ていると、とても嘘を言っているようには思えなくなった。
 改めてよくよく考えたら、あの女の顔が全く思い出せないことにも気が付いた。美人だったことは覚えているのだが、どんな顔だったかが浮かんでこないのだ。公園に戻って話している時も、顔は見えなかったように思える。最初に見た時と、玄関の明かりの下で見た時はすごい美人だなと思ったのだが、あれは一体どういうことだったのか。
 今ではあの時に会った女は普通の人間ではなかったと、柿本さんは確信している。

―了―

著者紹介

宇津呂鹿太郎 (うつろ・しかたろう)

兵庫県尼崎市出身。怪談作家。NPO法人宇津呂怪談事務所所長。
幼少期より怪談の蒐集を始め、現在に至る。これまで集めた怪談は700話を超える。
怪談作家として自ら聞き集めた怪異体験談を書籍化する傍ら、各地で怪談ライブの主催、出演も行う。
著書に『怪談売買録 死季』(竹書房)、『兵庫の怖い話―ジェームス山に潜む老紳士―』(TOブックス)、『怪談売買所~あなたの怖い体験、百円で買い取ります~』(ライツ社)など。DVDに『怪奇蒐集者 宇津呂鹿太郎』(楽創舎)などがある。また「怪談のシーハナ聞かせてよ。」(エンタメ~テレ)や「怪談テラーズ」(MONDO TV)、「月曜から夜更かし」(日本テレビ)等、テレビ番組にも出演。ABCラジオ「にっぽん怪談紀行~柳田~」レギュラー出演中。

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