2022年2月16日
【今日は何の日?】2月16日:寒天の日
寒天の生産高日本一は長野県!その全国シェア率はなんと90%近く。
そんな長野県の茅野商工会議所や寒天加工業協同組合が2/16を寒天の日としたのは、NHKの人気番組だった「ためしてガッテン」が、2005(平成17)年2月16日の放送回で寒天を取り上げたからなんです。この放送を機に、寒天が大ブームとなりました。
さて、本日の怪談は――
「モニター」
辻口はパソコンのモニターを睨んでいた。
「こないだ夜中に残業してたんだよね」
在庫管理、伝票整理、査定評価。昇進とともに仕事が増えたのだ。
スタッフが帰った後、延々と自主残業しなければ仕事が片付かない。
ともかくこれを終わらなければ家には帰れない。
延々モニターを睨んでいるうちに、モニターの右端がもやもやと変色していることに気付いた。
〈……にじみ? いや、焼き付きか?〉
二十四時間ほとんど電源が入りっぱなしだし、モニターのヘタりが早いのもしかたない。が、このままではどうも使いにくい。
「ラッキーって思ったね。明日あたり総務にかけ合って新しいのに交換させようって。ほら、CRTモニターは熱いからな。次は液晶モニターにしてもらおうって」
そんなことを考えつつ変色しているところをよくよく見直してみた。
目が映っている。
モニターのガラス面に自分の目が映り込んでいるのだと思った。
が、そうではないことに気付いた。
瞳孔が開いている。
モニターに映り込んでいるというより、モニターの上に貼り付いているようだ。
目は、ひっきりなしに動いている。
何を追っているのか、視線が定まらない。
辻口の目ではない。
「俺の目じゃないってわかった瞬間さあ、思ったんだ。〈今、俺は異常なものを見ている! 滅多にない体験をしてんぞ!〉って」
辻口は考えた。
〈もし目が合ったら俺はどうなるんだろう?〉
そう思った途端、モニターの中の目は辻口を見た。
恐怖感より好奇心のほうが勝ったのはわずかな時間だった。
辻口は思わず手が出た。
「持ってたボールペンで、その目玉を〈ぐさっ〉て」
――カツン!
ボールペンはモニターに当たって固い音を立てた。
〈やっぱり気のせいか〉と、安堵した瞬間。
課内のすべての電話が一斉に鳴った。
呼び出し音は一度だけ鳴って、切れた。
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「モニター」加藤一『禍禍―プチ怪談の詰め合わせ』