10. LAST ONE
THE UNCROWNEDの作品を聴いて下さっている方達はお察しだと思うんですけど、俺はちょっと押しが強めで濃い味(?)な90年代のJ-POPっぽいメロディーが好きなんです。
そんな俺が「少し薄味なメロディーながらも、自分なりに良いと思える曲に仕上げる」という挑戦をしてみたのがこの曲です。(結果、薄味に仕上がったかどうかはわかりませんが…)
ただ挑戦してみたはいいものの、この挑戦が原因で後々苦しむことになってしまいました。
まぁ、そりゃそうですよね。
そもそも自分の好みから外れた地点を目指そうという試みだったわけですから。
いざ曲を仕上げてみると案の定、納得出来なかったんですよね。
自分のソロ作品だったらこの曲はボツにしていたと思います。
しかしSHALがこの曲のためにかなり思い入れのある歌詞を書いていたので、そう簡単にボツにするわけにはいきませんでした。
「この曲、ボツにしたいんだけど…」と話を持ちかけたときに「私がこの歌詞にどれだけの想いを込めたか分かっているのか!」と彼女がかなり真剣に怒っていたのを覚えています。
SHALが病気でなければ色々な方法を試せたと思います。
例えば、メロディーを変えてみるとか、サビだけキーを変えてみるとか、新たに曲を書いてこの曲はボーナストラック扱いにするとか…。
しかし彼女の体調的に、とにかく新たに歌をレコーディングすることが不可能だったので、この曲も2曲目のWITNESS同様、既に録ってあった歌のテイクを活かしたまま他の部分を変えるしかないという状況でした。
個人的には特にBメロからサビへの流れに納得出来ていなかったので、再アレンジを施したのは主にサビの導入部でした。
1回目のサビ前(0:53~)にはやや長めのワンクッションを置き、2回目のサビ前(2:06~)はやや強引に転調させてみました。
オマケに最後のサビ(3:24~)だけは微妙に他のサビとはコード進行を変えてあります。
完成形に辿り着くまでにとにかくコード進行やアレンジを弄り倒し、曲の世界に入り込みすぎた自分には、もうこの曲の良し悪しを客観的に判断することが出来なくなっていました。
しかしながらレーベルの担当の方はこの曲の完成形を評価して下さっていたし、弟も良くなったと言ってくれていたので、その評価を信じてこの曲を採用する事にしました。
弟と言えば、この曲では(自称)和製マルセル・ヤコブの面目躍如といった感じのベースソロ(3:06~)を弾いてくれています。
特にベースソロの最後の速弾きの部分(3:18~)は、最後のサビに向けて曲の緊張感を高めるのに一役買ってくれていると思います。
この曲の歌録りの日は、抗がん剤の影響でSHALの声が普段より若干かすれていたのが記憶に残っています。
globeのKeikoさんがある曲の歌録りの時に風邪を引いていたけど、普段よりかすれていた声が逆に曲にマッチした、というエピソードを思い出して俺もその日のSHALの歌声を採用する事にしました。
自分のギターに関してもそうですが、決して狙って得ることの出来ないニュアンスというものに何故か惹かれてしまいます。
パッと聴いた感じはあまり分からないかもしれませんが、よく聴くと他の曲の歌声に比べて若干ザラついた質感があるかもしれません。
6曲目のNe-GTのときがつんくさん気取りなら、この曲のときは小室さん気取りなわたくしでした。
そう言えばこの曲のタイトル、初めはカタカナで「ラストワン」でした。
SHALに「何故カタカナなの?」と訊ねると「1番くじのラストワン賞って知ってる?最後の1つには良いものがあるんだよ」と、質問の答えになっていないようなことを嬉しそうに語っていました。(笑)
最終的に曲目を並べてみたときに「LAST ONE」の方が統一感があって良いとのことで、アルファベット表記に変更になりましたけどね。
アルバム、WITNESSの楽曲解説はこれにて終了です。
今回のアルバムは全曲、作詞 : SHAL、作曲、編曲 : Takeshiでお送りしました。
また少しだけ続編を書く予定なのでお楽しみに。