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『STOPOVER -Dedicated To SHAL- 』楽曲解説 (中編)

04. TEARS ~42589~ (type.R)

この曲のオリジナルは2017年リリースのEP、TEARSに収録されていて、歌詞の内容はSHALのお爺さんの戦争体験談がもとになっていてます。

タイトルの42589は42部隊の589番を意味していて、これは戦時中にお爺さんに与えられた番号に由来しています。

もともとスピードメタル調だったこの曲をこういったシンフォニックなアレンジにしたのは、SHALがお爺さんのお葬式でこの曲を歌いたいと言ったことがきっかけでした。
さすがにお葬式でスピードメタルを歌うわけにはいかないので、原曲よりもテンポとキーを落としてシンフォニック調にアレンジし直したというわけです。

因みにタイトルにある(type.R)のRはRequiem(鎮魂歌)の頭文字から取っています。

原曲を収録したEP、TEARSは制作時間が少なく、個人的には全く満足のいかない仕上がりになってしまったのですが、このバージョンを作ったことでそのモヤモヤが若干解消された感があります。
この曲は本来こうあるべきだったんだなぁ、と。

因みにSHALのお兄さんはSHALがこの曲をお葬式で歌った時に初めて彼女が歌をやっていることを知ったと言っていたような…。

05. KYUBI

この曲は2ndアルバムの制作時の曲なので、書いたのは2021年か2022年で比較的新しい曲です。

THE UNCROWNEDのファンの中にはこういったスピードメタルっぽい曲を期待している人達が一定数いることは理解しているつもりなので、この曲は2ndアルバムのメタル枠の曲として書きました。

それが何故お蔵入りになってしまったかというと、SHALがこの曲をあまり気に入ってなかったからなんですよね。

歌詞を書いて仮歌を録ってみたものの、レコーディング中に「何だか気が乗らない」と彼女が何度も言っていたのを覚えています。
歌い手の気が乗らないならきっと良いものには仕上がらないと判断し、この曲はお蔵入りにしました。
そして代わりに書いたSUSTAINABLEという曲が2ndアルバムに収録される事になったわけです。

そんな経緯や、この曲の仮歌録りのとき既にSHALは闘病中で体調が良くなかったこともあって、自分の記憶の中でこの曲の歌録りは途中で中断したことになっていました。
ところがSHALが亡くなってからこの曲のデモ音源を聴き返していたときに「あれ?歌全部録ってある…」となって今回の収録に至ったわけです。

「デモ音源をちゃんとまとめて何かしら音源を出してあげたいけど、曲数が少ないしなぁ…」なんて考えていたタイミングでこの曲を発見したので、ある意味この曲の存在が3rdアルバム、STOPOVERのリリースを後押ししたと言えるかもしれません。

「SHALちゃん、気が乗らないとか言ってたけどめちゃくちゃカッコいいよ」と思いながらリリースに向けてレコーディングしていました。
そんな彼女の歌に負けないようにギターソロはテンション高めな速くてメタルっぽいテイクを採用しました。

06. SHINING DREAM

数年前に栃木県で開催されたとあるスポーツの大会がテーマソングを募集していて、「応募してみようよ。採用されたら賞金も貰えるみたいだし(笑)」とSHALから提案された事がきっかけで書いたのがこの曲でした。

わりと軽いノリで書いた曲で、初めからTHE UNCROWNEDの曲にするつもりだったらこんな爽やかな曲にはなってなかったでしょうね。(笑)
個人的に爽やか系の曲を書くのはちょっと苦手で、この曲を聴くと何だかむず痒い感じがします。
こんなに爽やかでいいのかなって。(苦笑)

応募してみた結果どうだったかというと、締切日を勘違いしていたため応募できなかった…というふうにSHALからは聞かされていたのですが、実はそうではなかったことが今年1月に開催したイベントの中でSHALのお母様から明かされました。(笑)
実は締切に間に合い、応募は出来たものの採用はされなかったとのことでした。

で、どんな人の曲が採用されたのかを調べてみたところ、テーマソング屋さんみたいな肩書きの人の作品が採用されていました。
その人のことを調べてみると全国各地のイベントのテーマソングを制作した実績がズラーッと…。(笑)
たまたまSHALのお母様がその大会の関係者と知り合いだったらしく、詳細を問い詰めるとその募集自体が出来レースだったとのことでした。
たぶんSHALの性格からするとこういうのは許せなかったんじゃないかなぁって思いますね。

まぁせっかく作ったんだし、ファンの人達に聴いてもらおうということでライブ会場限定で販売していたこの曲がようやくアルバムに収録されたという流れなわけです。

ライブに来れない地方や海外のファンの方達からSHINING DREAMのCDが欲しい!とかなりの数のお問い合わせを頂いていたので、今回やっとこの曲をお届け出来るようになって良かったです。

07. SONG FOR 「S」.Ⅰ ~To Live~

個人的に歌のないインストゥルメンタル作品を好んで聴くわけではないし、これまでにギターでコピーした経験もありません。
それに加えインストゥルメンタル作品を書いたことは一度もなかったので、この曲を仕上げることは自分にとっての1つ挑戦でした。
曲中の数小節だけでギターソロを弾くことはあっても、曲を通して自分のギターが主役であり続けるなんて経験は今までなかったわけですから。
そんな自分が人生で初めて書いたインストゥルメンタルがこの曲です。

何だって初心者が初めからうまくやれるわけがないと割り切り、とにかく今の自分から出てくるものを素直に形にして、SHALに捧げる曲にしようとだけ考えていました。
曲に込めた「想いのようなもの」という点に関しては過去に書いた曲の中でもこのSONG FOR 「S」の Ⅰ と Ⅱ がダントツでしょうね。
「想いのようなもの」と書いたのには理由があって、"この曲のこの場面にはこういう想いが込められている"といった具体的なイメージが自分の中にはないんです。
ただただ曲全体に彼女への想いの塊のようなものが散りばめられている、といった感覚なんです。

もし今後もインストゥルメンタルを書く経験を積んでいったとしたら、数年後には"この曲のここはこうしておけば良かった"と思うこともきっとあるでしょう。
でもこの曲に関してはその時のリアルな感情を封じ込めたことに意味があると思っています。
そして何十年先になってもこの曲を聴けば、誰よりも強く生き抜こうとした彼女の事をリアルに思い出すんだろうなと思います。

サポートして下さるファンの皆様、いつも本当にありがとうございます! 頂いたサポートはバンドの活動費として大切に使わせて頂きますm(--)m