あとがき - 前編
前回の記事でアルバム「WITNESS」の10曲全ての解説が終了したわけですが、いかがだったでしょうか?
音楽的な事だけでなく、出来るだけSHALとのエピソードも交えて、少しでも皆さんに楽しんで読んで頂けるものを目指したつもりです。
今回のアルバムには3種類の店舗別の購入特典があって、そのうちの2つが「RESONATE」と「イトマゴイ」という楽曲のダウンロード・カードでした。
以前、この2曲に関しても言及して欲しいというご意見を頂いたので、今回の記事で軽く触れておこうと思います。
RESONATEは90~2000年代風のJ-POP風のメロディーに、古き良きプログレハードのエッセンスをまぶしたような感じだと思っています。
アーティストで例えるならday after tomorrow (misonoさんがボーカルを務めていたユニット) っぽい雰囲気ですかね。
この曲はライブで演奏したことがあるので、当時のアレンジを覚えている人が今回のバージョンを聴いたら、かなりの変貌ぶりに驚いてもらえたんじゃないかと思います。
初めはかなりインパクト重視のアレンジでしたが、歌重視の普通の曲(笑)に生まれ変わりました。
サビの歌詞は、元々SHALが考えていた案のハマりがあまり良くなく、仮歌録りの現場で即興で考え直した案を、取り敢えずの形で収録しています。
飽くまで仮詞なので、アルバムに収録するなら後で書き直したいと言っていました。
因みに間奏のベースソロは弟がプレイしています。
イトマゴイもライブで演奏したことがある曲で、こちらもその時とは若干アレンジを変更しています。
2ndアルバムへの収録は見送りましたが、この曲はとにかくSHALが気に入っていた印象が強いです。
個人的にはWITNESSとJANUSを足して2で割ったようなイメージですかね。
イトマゴイ(暇乞い)という言葉には”別れを告げる”という意味があって、簡単に言うと「これまでのヘヴィ・メタルなTHE UNCROWNEDにサヨナラします」という決意表明みたいな曲なんです。
なので、自分達の新しい音を模索したアルバム、「WITNESS」の制作はこの曲から始まったと言っても過言ではありませんでした。
そんな事や歌詞に込めた想いもあって、SHALのお気に入りだったんじゃないかと思っています。
これら2曲がアルバムの購入特典になったのにもちょっとしたお話があります。
癌が再発するまでは、SHALはアルバムのリリース後にライブをすることを希望していて、東京、名古屋、大阪とSHALの地元、宇都宮の4ヶ所をワンマンライブでツアーしようと計画していました。
その後SHALの癌が再発し、体調的にライブをこなすことが難しくなってからは、ライブが出来ない代わりに2023年の1月、SHALの誕生日頃にRESONATEとイトマゴイ等の未発表曲を収録したミニアルバムを何かしらの形でリリースしようと話していました。
それが今年の夏前になるとSHALの体調が更に悪化し、”2023年まで生きていられるかどうか分からない” と思った彼女は「私が生きている間に皆に未発表曲を聴いて貰いたい」と希望しました。
その希望を叶える形でRESONATEとイトマゴイが今回のアルバムの購入特典となったわけですが、残念なことに彼女はアルバムのリリースを待たずして亡くなってしまいました…。
最期の方は苦しさで音楽のことなんて考える余裕も無かったかもしれませんが、自分が命を削りながら作った作品のリリースを見届けたかったのは間違いないと思います。
最期まで自分自身に”頑張れ”と声を掛けていたというSHAL…。
彼女がどんな気持ちで最期を迎えたのかを想像すると今でも胸が傷みます。