【読書録】ぶんけい『腹黒のジレンマ』(KADOKAWA)
ぶんけい『腹黒のジレンマ』(KADOKAWA)
5月30日読了
上手い文章、いい文章とはどういうものかというのは難しい。
文章を読むことも書くことも好きなので、自分の中でいいと思う文章はあるのだけれど、大人になると自分の思ういい文章と世間一般で言われるそれの解離みたいなものを感じることが多い気がする。(そしてそれは自分が出版社にいることと不可分ではないとも思う)
そんなジレンマを意識しながら読んだのが『腹黒のジレンマ』だった。
ぶんけいさんのことをYouTubeで知ったのだけど、僕は彼のことが好きだ。才能とかバイタリティとか本当に凄いと思う。あと顔が好き。
あまりYouTubeに興味を持てていないのだけど、彼がやっていたパオパオチャンネルはずっと見ていたし、なんならぶんけいさんと同じ美容室、美容師さんに髪を切ってもらっている。
僕は普段、ネットで本は買わない。本は本屋で買うものだと思い込んでいるからだ。(餅は餅屋で買うものらしい。餅屋って見たことないけどそういうものらしい)
ところが、ぶんけいさん初の著書が予約段階でAmazon2位になっていて(確か1位がはどう森の攻略本だったと思う)、そこに加勢する意味でネットで予約してしまったのがこの本である。
ちなみに木曜のうちに水曜に届いていたらしいのだが、元来ズボラなのでこれを書いている日曜まで郵便受けで眠っていた。
予約して買う意味が全くないのだがかまわない。郵便受けで熟成されていたのでだこれは。
ところで文章が上手いとは何か、である。
最近なるほどとおもったTweetがある。
ぶら下がっている一連の呟きを読んでなるほどなあと思った。
そして、であるならば文章が上手というのは何を指しているのかである。
おそらく文章力というのは「文字にしたときにバエるようなことを考えられるかどうか」ということのような気がする。
例えば本書の帯にある「感情のシャトルラン」という言葉。この言葉だけでは全く意味が分からない。
ところが中を読むとははーんなるほどと思わされることが書いてある。
あるいは前書き(というかこの本の書き出し)にある一文。
ぼくには変な癖がある。そう、「アデリート」だ。
この一文なんか最高である。僕はここで既に掴まれていた。
「アデリート」などという言葉を我々は知らない。
読めば分かるのだがこれは文章を書くときに「a」とデリートを交互に押してしまうという手持ち無沙汰を表す著者の造語である。
今打ったばかりの文字を消すのはデリートではなくバックスペースであるというのは置いておこう。(いま思ったけどぶんけいさんはMac使いなんだなこれ)
「アデリート」などという素敵な言葉を思いつくのも素敵だし、この後に続く言葉の説明もエモいし、なんならあとがきでも「アデリート」なる言葉を使うという構造すべてが素敵だと思った。
こういうよくわからない概念とか、自分だけが分かる何かをいろんな人に伝えられるかどうかというのが文章力の本質ではないかと思うのだ。
冒頭でも書いた通り、僕はぶんけいさんが大好きだ。
いつかこの人とお酒を飲める日が来たらいいなという妄想をしながら、さらっと読めてしまうエッセイだった。
こっちは電子版