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「デジタル看護入門」第10回 〜聴診器とICT〜

 聴診器は、日常的に医師や看護師さんが医療現場で用いられている、ごく身近な医療機器です。聴診器は、開発されてから、約200年ほどの歴史がありますが、実は今まで、あまり進化してこなかった、ある意味、めずらしい医療器具でもあります。といいますのも、おおくが患者さんの呼吸音や心音を直接、聴診器で聴診する方法に、あまり不便を感じていなかった部分もあり、聴診器を使用する医療従事者もある程度、限られていたため、あまり新しい技術の投入や、聴診器の改良などが行われなかったという背景があります。

 しかし最近では、ICT技術の進歩により、聴診器から聞こえる聴診音をデジタル化して、より聞きやすい音源に変換したり、聴診器そのものの形状も改良され、イヤホンタイプや、ワイヤレスタイプのものが開発されるようになりました。

 じつは聴診器による「聴診」は、看護師さんにとっては、わりと難易度が高い技術が必要であり、聴診部位の選定、聴診音の聴取、聴診音のアセスメントには、多くの訓練と、実際の患者さんへの聴診の実施経験などが必要です。かなりの看護学生さんや新人の看護師さんにとっては、「聴診」がまず最初の「鬼門」でしょう。私もそうでした。

 そういった状況の中、この聴診音のデジタル化は、いろいろなメリットがあり、たとえば、熟練者でも聞き取りにくい聴診音を、内蔵アンプで音量が調節できたり、他の雑音が多い空間でも、正確な聴診が行えるようになりました。最近、流行の、ノイズキャンセリング機能ができるものもあるようです。

 そのほか、デジタル化により、データ収集も容易となり、たとえば、遠方の対象者に聴診用の機器を取り付け、聴診音のデータを、かかりつけの医師の病院などに通信機器を使用して、発信し、聴診音を遠隔的に診断するというような「遠隔医療」の試みもすでにされています。

 聴診器については、まだこれからという感じですね。これからもっと新しい可能性を持った聴診器が、最新のICT技術とともに開発されることを期待しています。

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小池武嗣(こいけたけし)
フライトナースや離島の保健師の経験を還元できるようなバーチャルリアリティ環境の構築およびコンテンツ作成が主な研究分野です。研究のための寄付を募っております。研究の成果はこのnoteで公表していく予定です。どうぞよろしくお願いいたします。