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【キャリアストーリー】新卒入社した大手企業に16年勤め上げて課長目前だけどいまだに確固たる自信がない

こんにちは。堀内猛志です。
前回のnoteでは『「好き」を追求したらキャリアに行き詰った??~外さない転職編③~』というキャリアストーリーについて書きました。

ある20代女性をペルソナとして、よくあるキャリアの悩みについて、どこがダメだったのか、どうすべきなのか、ということを4部作で書いています。

大変好評をいただき、自分も同じ悩みがある、友人に転送をしました、という有難いコメントや感想を多数いただきました。

具体的なペルソナがあると想像しやすいことがわかったので、今回も具体的な事例をもとにしてnoteを展開していこうと思います。

パターン②積み上げてきたのに自信がない太郎のストーリー

【ペルソナ】
太郎。男性。38歳。
【タレント】※本人は自覚していない
ドライバー/責任感・最上志向・学習欲・慎重さ・競争性
【好き(ルーツ)】
電気機械系統
【好き(ブーム)】
経営
【キャリア①新人時代】
長男として育てられ優等生に育ってきた太郎。大学生活も真面目に単位を取得し、きちんと準備をして臨んだ就職活動もうまくいった。理系の太郎が希望していた大手機械メーカーに入社後5年間、開発職として従事した。
【キャリア②海外駐在時代】
結婚をし第一子を授かったころ、海外駐在の打診が来た。妻も快諾してくれたので一家でアメリカに移り住み、新製品の開発とマーケティングに3年間従事した。
【キャリア③主任時代】
帰国後すぐに主任へと昇格した。大きなプロジェクトを任されるようになり、業務もより上流へ変わっていった。マーケティング部門での業務も多岐にわたり、仕事の面白さを実感していた。第二子も誕生し、公私ともに非常に充実している状態であった。
【キャリア④課長代理時代】
36歳になったタイミングで経営企画部門に異動した。制度改革、業務改善、企業買収など、全社に関わるプロジェクトのPMOをこなしていくたびに、より一層仕事に邁進し、上司から更なる大きな期待を感じるようになった。
ある日、久しぶりに新卒時代の同期会が行われたので参加した。日本のメーカーらしく8割は現職に残っているが、残りの2割は早々に見切りをつけてスタートアップに就職したり、自身で会社経営を行っていた。同期での出世スピードがはやい太郎は退職する気がさらさらなかったので、辞めた元同僚を少し冷ややかな目で見ていた。
【キャリア⑤初めての大きな壁】
経営企画部門の中で新規事業企画を任されることになった。アメリカで新製品開発を行っていた時から新規事業企画部門に行きたいと思っていたので、太郎は自分の鼻息が荒くなるほどの気合を実感していた。
しかし、ここで太郎は今までにない壁を感じることになる。半年かけて練ってきた事業企画がボツになったのだ。しかも、理由を聞いても上司からの返答は自分が納得できるものではなかった。そこに追い打ちをかけるように新型コロナの影響で業績の見通しが立たなくなり、経営企画部門全体で予算縮小を言い渡された。今まで全力で仕事に向かっていた太郎には、仕事以外のことを考える余裕ができてしまったことがマイナス思考を加速させることとなる。
【キャリア⑥大学院へ進学】
キャリアに対して不満も不安もない状態で30代後半を迎えた太郎には、このモヤモヤに気持ち悪さを感じていた。先が見えない中で現状維持への不安がある一方で、やるべき職種を経て念願の新規事業開発に来た太郎には他に移りたい部署も見当たらない。かといって、すぐに退職するほどの不満があるわけでもないし、特に他にやりたいことがあるわけでもない。
アメリカ時代に出会った先輩が言っていたMBA取得を思い出したのはその頃だった。早速先輩に話を聞き、自分でも調べた結果、仕事を辞めずに通うことができる国内MBAの取得を決意した。行先のない気持ちのぶつけ先、とまではっきり自身で意識していたわけではないが、次の目標ができたことで少し気持ちが楽になっているのを感じた。
【キャリア⑦自信の揺らぎ】
大学院での学びは想像以上に充実したものだった。もともと学習意欲が高い太郎にとって授業は毎回刺激的で、モチベーションの高い仲間もでき、上々のビジネススクール生活がスタートした。
責任感が強く、負けず嫌いの太郎は授業のグループワークでは毎回リーダーとしての手腕を発揮していたし、プレゼン用の資料作成も人一倍力の入った資料を提出していた。周りの友人からも一目置かれているような雰囲気が生まれていた。しかし、裏腹に太郎には言葉にできない違和感があった。
2年生の春学期が始まった。太郎は1年生の自己紹介を聞きながら1年前の自分を思い出していた。当時は肩に力が入っていたため、周りの自己紹介をちゃんと聞くことよりも、自分の自己紹介をどううまくやるかに必死だった。しかし、2年生になったことで冷静に1年生の自己紹介を聞くことができたために、あることに太郎は気づくことになる。
ビジネススクールの自己紹介は、所属企業名や役割を紹介することが多い。「●●という企業で、××の役割を担っています」このシンプルな自己紹介で、大体は何が得意な人なのか、一言でこの人は何屋さんなのかわかるのだが、中にはずっと聞いていてもわかりづらい人がいる。そういう人の特徴は、自己紹介でシンプルに何屋かを明示せず、経験をダラダラと話すという共通点がある。そう、それは太郎にも当てはまる。「自分は何屋さんなんだ?」それこそが太郎の中にある違和感の正体だった。
総合的に力をつけてきたと言えば聞こえはいい。確かに開発、営業、マーケ、経営企画、新規事業開発などをこなし、有名企業で若くして課長代理というポジションではある。このまま1社に人生を捧げるなら全く問題はなかっただろう。しかし、様々な業界、様々なステージ、様々な価値観、様々な生き方をしている仲間に出会ったことで、総合力の一言で片づけるには、自分はあまりにもちっぽけであると太郎自身が自分を評価してしまった。
開発は行ってきたが4年ほどだ。今さらエンジニアとして生きることはない。営業やマーケ等の攻めの職種は自信がないわけではない。しかし、新規営業やGo to marketを経験しているわけではないし、上流を行ってきたのでデジマを自らぶん回すようなこともできない。経営企画部門にはいたが経営管理はかじった程度だ。ファイナンスのプロには遠く及ばない。今の会社に残らないという決断をしたとして、自分には何ができるのだろうか。。
【キャリア⑧思考停止と決断の先延ばし】
周りの友人を見ると、キャリアを縦に伸ばす人、横に広げる人など様々だ。
自分だってまだまだ30代。今からだってどうとでもなる。そう言い聞かせながらキャリアを模索することにした。
まずは自分の市場価値を知ろうと大手人材紹介会社に登録した。職務経歴書を初めて作ることにはてこずったが、キャリアの棚卸ができたし、担当のエージェントからも1社経験と言うキレイなキャリアであることや、これまでの経験や成果を評価してもらえた。ただ、紹介された企業や条件を見て愕然とした。紹介されるのは現職の競合ばかり。それも現職よりもランクが落ちる企業が多い。業界を変えると年収維持をすることが難しいこともわかった。自分の報酬が毎年上がっていくことが誇りだったが、今さら気づくことになる。市場価値と釣り合っていない上がりすぎた報酬は自身のキャリア選択の足かせになるのだ。
ビジネススクールの授業や仲間の影響でスタートアップ転職や起業にも興味を持ち始めていた。元来負けず嫌いの太郎である。「いつかは!」という想いは昔からあったが、これほど強く思えたのはビジネススクールに通ったおかげだ。しかし、「いつやるの?」の問いに「今でしょ!」と答えるには太郎のヒットポイントはもはや十分ではなかった。
新型コロナが落ち着き始めたと同時に、太郎の現職での業務も以前の忙しさを取り戻しつつあった。目の前の仕事があるのはありがたいことだ。太郎自身は気づいていないが、何かに集中できるということは余計なことを考えなくていいということだ。いつしか太郎はキャリアを考えることを止めていた。「状況が好転し、自分のやりたい新規事業が通ればこの悩みは片付くのではないか。」太郎の思考は易きに流れて行った。
季節は秋。2年間のビジネスクール生活も残り半年となっていた。太郎は何とか落ち着こうと自分に言い聞かせていた。焦らずに卒業のタイミングで決断をしよう。そこまでに自社の決算期もある。今の業績であれば自分の事業計画も承認される可能性は十分にある。40歳を迎えるまであと1年半もある。その間に決めればいいだろう。それよりもビジネススクール卒業のための論文に今は力を入れるべきではないか。本業にも集中しないといけない。自身の評価を下げてしまうと元も子もない。
まだ見ぬ未来が好転することを信じ、時間さえあれば自分ならできるはずだと思い込むようにした太郎。将来予測が甘く、刹那的な考えになるのは人間誰しもが陥る病気だ。しかし1年後、現状と全く同じ状態であることなど今の太郎は知る由もない。

花子さんに比べて長くなってしまいましたが、太郎のタイプや状態はよく理解できたのではないかと思います。

太郎と似た思考になる人は実は多い

業界、キャリア、年齢、思考性、環境などなど、違いを言い始めればいくらでもあるでしょうが、抽象度を上げると自分に近しいと思う40歳前後の方は多いのではないでしょうか。特に日系大手企業の中間管理職にいる男性から多く寄せられる悩みの多くは、太郎のストーリーと当てはまらずとも遠からずの方が多いように思います。

こういう方をモチーフにしたケーススタディはアカデミックの世界ではたくさんあります。しかし、キャリア論をいくら勉強しても、「ではどうしたらいいの?」の問いにアカデミックは一般論でしか答えをくれません。

よって、ここから数回にわたって、太郎と似たような状態の方を救うべく、アカデミック的な解説と、実務的な解決策を論じていきたいと思います。

抽象的回答と違い、具体的回答の論述は反対したいポイントも多々あるでしょうが、あくまでも私個人の見解であると認識してもらったうえで、次回以降読み進めてもらえれば幸いです。


太郎のストーリーを読んで他人ごとではないと思った人は下記よりご連絡ください。

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それでは今日も素敵な一日を!

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