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【キャリアストーリー】「好き」を追求したらキャリアに行き詰った??~解説編~

こんにちは。堀内猛志です。
前回のnoteでは『あなたの「好き」の邪魔をする「欲」という魔物』という内容について書きました。

自分の好きな領域で、自分のタレントを活かして、自分らしく、楽しく働きたい、と思うのはみんな同じです。「仕事は辛いものだ」と考えている人も、よくよく聞くと「石の上にも3年」的な思想があり、若い時代の修業期間を経ると、自分らしく、楽しく働ける状態になると考えています。

ここまでのnoteで「強みを活かして働く」ためには「自分のタレントを活かせる職種と環境を選ぶこと」と「自分の好きな領域や業界を選ぶこと」が重要であることを伝えてきました。しかし、「好き」よりも「欲しい」が強力であることから、「好きな領域や業界」の前に「欲求を満たすことのできる領域や業界や環境」かを見極める必要があります。今回のnoteはこの点について説明していきます。

ここまで、順にnoteを読んでくれている方なら理解できると思いますが、概念的なテーマになってくるとイメージが追い付かない方もいると思うので、具体的な人材をテーマにしたストーリーを展開しながら説明を加えていきたいと思います。

パターン①好きを追求したらキャリアに行き詰まった花子のストーリー

【ペルソナ】
花子。女性。29歳。
【タレント】※本人は自覚していない
エクスクレッシブ/社交性・コミュニケーション
【好き(ブーム)】※本人は「ブーム」であることは自覚していない
可愛いモノ、服、友達との会話
【キャリア①新卒~1度目の転職】
「人と話すことが好きなので人材業界が合っているのでは?」という想いで人材派遣企業に新卒入社。営業職に従事するも、目標数字へのプレッシャーやお客様からのクレームに耐えられず半年で転職を決意。
自分が活き活きとできる場所はどこか、と考えた結果、学生時代にアルバイトで働いていた20代女性向けのアパレルショップでの接客業であることを思いつく。
元いた店舗の店長に相談すると歓迎してくれたので転職。営業職時代と比べれば少し月給は下がったが、接客は楽しいし、好きなブランドを扱えることで活き活きと働けることに満足していた。
【キャリア②転職後~現在】
持ち前のコミュニケーション力で店舗の売上をけん引する存在になっていった。一緒に働く同僚とも仲が良く、プライベートでも友人たちと食事や旅行を楽しむことができ、数年は順風満帆だった。
店長への昇格打診が何度かあったが、マネジメントは自分に向いていないと決めつけて断り続けてきた。自社の商品に関する知識も経験の中で身に着けてきたので、それ以外の自己研鑽は全く行ってこなかった。
【転機】
20代後半になってあることに気づいた。周りの友人が選ぶ飲食店や旅行先や買い物について、グレードにギャップが生まれてきたのだ。1回の食事単価が高いお店が選ばれるようになり、旅行先のホテルの宿泊費も上がってきた。自分の年収では到底支払うことができず、理由をつけて断る場面が増えた。
会社に年収交渉を行った。自分の実績だともっと報酬が上がってもいいはずだ、そう伝えたが報酬が上がることはなかった。
【2回目の転職を決意】
アパレルだから年収は低いんだ、接客業だから年収は低いんだ、そう考えて、業界や職種を変えるための転職活動を行った。将来性を考えて、IT系にしようと決意した。また、アパレル時代からお客様の集客に対して面白さを感じていたのでマーケ職を希望した。しかし、未経験で受け入れてくれる求人になかなか出会うことができず、焦りが増してきた。
「マネジメント経験はありますか?」
「マーケティングについて何か実績や独学でも勉強したりしていますか?」
「なぜ当社なんですか?」
表面的な答えでは面接官を納得させることができずにいた。来月には30歳を迎える。30代の未経験転職はさらに厳しくなるのではないか、、、エージェントから紹介される求人を片っ端から受けてきたが、いよいよ焦りがピークになり、もはや自分は何がしたいのかすらわからない思考になってきていた。

業界や職種は違っていたとしても、上記のようなパターンに当てはまる方はよくいらっしゃいます。では、この方はどこがまずかったのか、これからどうすればいいのかを考えていきましょう。

Point①『タレント』を『磨く』時間が必要だった

キャリアをミスってしまう人のほとんどは『時間軸』の思考が欠如しています。特に今回の事例のように、現職の痛みから早く逃げたいと思う人ほど視野が狭くなり、短絡的な決断をしてしまいます。

花子さんのタレントは『社交性』と『コミュニケーション』です。なので、営業職や接客業などの職種では自身のタレントは活かせるので、選択は間違えていなかったと考えます。しかし、学生時代に行っていた接客業に対して営業職は未経験であり、すぐに結果が出るわけではありません。仮に自転車をこぐことが将来的な強みになる人だって、最初は補助輪をつけた自転車から始めたはずです。原石は磨かないとただの石のままなんです。

特に、エクスクレッシブで社交性というタレントを持つ人は、良い方向にタレントが働けば「ノリの良さ」で顧客との関係を早く作れますが、悪い方向にタレントが働けば「表面的で雑」なところが出てしまい、安請け合いして結局できなかった、という事象を作り、顧客からのクレームに繋がります。エクスクレッシブは「繋がり」がモチベーションなので、人から嫌われることを極端に避けたがります。しかし、クレームにも真摯に向き合い、自分のタレントを磨くには半年という時間はさすがに短かったと言えます。

また、20代女性向けのアパレルショップでの接客業は、若いうちしかできない職種です。なぜなら、顧客が20代女性なのであれば、店員が年配者だとブランドイメージが違ってしまうからです。年齢制限が労働市場では御法度のルールもありますが、これが現実です。ゆえに、年次が上がるとともに、マネジメントや教育担当のような知的労働職に異動するようなスキル知識を身に着ける努力をすべきでした。『社交性』『コミュニケーション』のタレントを持つ花子さんには、裏方に回ることが向いていないように見えたのだと思いますが、自分にとってのお客様を「コンシューマー」から「メンバー」に変えれば、タレントを活かした働き方はできるのです。

Point②『ブーム』を『ルーツ』に、さらに『パッション』に変えるべきだった

最初は「タレント」×「好き」がハマったので、アパレルショップにおける接客業はうまくいきました。ただし、花子さんの好きは「ブーム」の好きです。そのため、表面的に「好き」でも、その「好き」を深く考えるようなことをしませんでした

「この服はどうすればもっと売れるのか」「誰をターゲットにすればいいな」このような思考を進めていけば、必然的にマーケティング思考が身に付き、知識不足の危機感から勉強も始めたことでしょう。そうすれば店舗開発や商品開発のような職種にキャリアアップができたと思います。

「お客様は何を望んでいるのか(for)」を考えると、年次が上がる自分よりも、もっと若い人が接客した方がいいのではないか、という思考にもなったかもしれません。「自分が楽しいか?」よりも「お客様にとって最適なのは何か?」を考えることができれば、向いていないと思いこんでいるマネジメント職の可能性を消すことはなかったはずです。

Point③将来的なキャリアを見据えて、『強み』を磨くべきだった

労働市場には「旬」があります。その年齢しかできないこと、その年齢であればこれくらいはできて欲しいと考えられること、これから必要とされる職種、これから必要とされない職種、があります。その年齢で求められる強み(=タレント×好き)を磨いて作る必要があります。

一般的に年齢別の求められる経験を一覧化します。

年齢別の求められる経験

20代前半は全て未経験でも転職は可能です。20代後半は、職種に●をつけていますが、職種と業界のいずれかの経験があれば良いです。30代であれば職種と業界の両方の経験が必要です。いずれかしかないのであれば、マネジメント経験があればカバーできます。30代後半になると職種と業界の両方の経験がある前提でマネジメント経験が求められます。30代後半以降でも業界は未経験でも転職できる可能性もありますが、その場合は、職種における専門性が非常に高いレベルであるか、マネジメントが経営に近いレベルであることが求められます。

当然、不人気業界、不人気職種、報酬などは全く気にしない、などの条件であれば、何歳でも未経験転職可能性がゼロではありません。また、人事経験者が人事コンサルタントや転職エージェントになるような職種の転用の場合など、個別具体には上記に当てはまらないものも当然あります。あくまでも一般的な事例だと思ってください。

29歳の花子さんであれば「アパレル業界」での「接客業」の経験はありますが「マネジメント経験」はありません。よって、「IT業界」の「マーケ職」に未経験で転職するのは困難を極めるわけです。Point①②で伝えてきたように、現職でマネジメント、マーケティング、店舗開発、商品開発、教育担当、などを経験してきたら、結果は激しく違いました。年齢における旬の考え方が欠如したために起きた事象だと言えます。

Point④将来的な生活水準を見据えて『年収が上がる職種』に異動すべきだった

前述しましたが、20代女性向けのアパレルショップでの接客業は、若いうちしかできない職種です。つまり、企業としては、接客業の従業員は「キープ・ヤング」の状態がいいわけです。こういう業界と職種は他にもあります。

考えるべきは「経験や専門性のレベルと成果が大きく比例するのか」ということです。20代女性向けのアパレルショップでの接客業を例にとると、20歳の新人と40歳のベテラン社員を比較した時に、40歳の社員の方が圧倒的に成果が出るのか?ということです。差がないどころか、若い人の方が成果が出る可能性が高いですよね。それならば会社として年齢の上昇と共に報酬を上げるようなことはできません。少しずつは上げてくれるでしょうが、年収300万円からスタートした人が600万円に上がるようなことは絶対にありえません。なぜならば、年収300万円の新人を2名採用した方が業績向上につながるからです。

スーパーエンジニア、スーパーコンサルタントのような人は、一人で数億円、数十億円の成果を出す人もいるでしょう。そういう業界や職種だから年収1億円のような人が現れるわけです。ここを考慮に入れずに「うちの会社は給料が上がらない」という人がいますが、「経験と成果が大きく比例するのか」ということを考えると、合理的に考えて報酬を上げる理由がないのです。

先ほどから例にとっているアパレルを否定しているのでは決してありません。何度か例に出している、マネジメント、マーケティング、店舗開発、商品開発、教育担当、などの知的労働職になれば、人によっては成果が大きく出せる人もいるでしょう。そういう人を会社は逃すわけにはいきません。よって、報酬は上がります。経営陣が成果と報酬の関係をちゃんと考えているのであれば、ですが。

経験や熟練性のレベルと業績の関係性

Point⑤将来的な『欲の変化』を見据えて『キャリア』を描くべきだった

Point④で生活水準の話をしましたが、欲求はお金に限ったことではありません。前回の記事でマズローの欲求5段階説について伝えましたが、年齢とともにすべての欲求水準は上がり続けます。

▼自己実現欲求
「目の前の人からのありがとう」から、「世の中全体への貢献」
▼承認欲求
「近場のいいね」から、「社会的なすごい」
▼所属と愛の欲求
「仲の良い友達」から、「権威性の高い人脈」
▼安全の欲求
「衣食住の担保」から、「より良い健康的な生活」

考えてみたら当然ですよね。あなたが優秀であればあるほど、おそらく周りの友人の方も優秀でしょう。優秀な方は年齢と共に、キャリアも社会的地位も報酬も上がり続けるはずです。そういう友人を見て妬みや嫉みがないのであればいいのです。差が生まれれば生まれるほど「この人は別次元」とあきらめもつくでしょうが、日々の外食の単価差、持っている服や小物のグレード差、旅行先での散財レベル差など、地味な差が実はボディブローのように効いてくるのです。

20代の頃は人を表面的に見ればそこまで差がないように見えます。ただし、将来を見据えて努力し、タレントや好きを磨き、知識や能力を身に着け、旬を見越してキャリアを変化させ、欲の変化を考えて環境を自ら作ってきた人と差が出始めるのが30代です。ずっとストックし続けてきた人に、後から気づいてもなかなか追いつくことはできないのです。

花子さんはこの後どうすべきか?

気づいたらめっちゃ長くなったので、次回の『転職編』で外さない転職方法について説明しようと思います。お楽しみに!



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それでは今日も素敵な一日を!

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