経営陣と現場の、信頼関係のデザイン。〜副社長がプルリクエストの巻〜
この記事は、2018-06-29に執筆されたものです
こんにちは。UXデザイングループ マネージャーのアタラシです。
やってますね〜ワールドカップ。試合終了間際の劇的なゴールが多く、どの試合も本当に楽しいです。個人的には、世間からの下馬評が低いチームや、日本と同じアジア地区の代表チームを応援してます。ところが、アジアの代表チームは、残念ながら、日本以外すべて敗退。唯一、決勝トーナメントへと進出した日本には、ぜひ勝ち進んでもらい、アジアのレベルの高さを世界に見せつけてほしいところです。
さて、日本代表の躍進の中で注目されているのが、監督と選手のあいだの信頼関係です。日本代表の監督が、大会直前に交代となったのは、みなさんも記憶に新しいかと思います。前任のハリルホジッチ氏は、「選手との信頼関係が不可逆なほどに崩れた」という理由で解任されています。
信頼関係。結局はこれがすべて感、ありますね。
クラウドワークスは、実は◯◯だった?
突然ですが、間違い探しです。以下の2つの画像の、違うところはどこでしょう。(飛ばしてくれて大丈夫です)
A
B
わかりましたか?答えは、ここ。
A
B
サービスロゴ上にある「BETA」の有無。実はクラウドワークス、最近ようやく「BETA」がとれました。そうなのです、クラウドワークスはリリースから6年ほど、ずっとベータ版だったのです・・・
この「BETA」ってなに?邪魔だから消し去りたい
クラウドワークスのサービスロゴに「BETA」という文字が付いていることに気づいていない人は、実は社内でも割といました。たぶん。なぜなら、利用規約にも「ベータ版」「β版」のような記述は存在せず、さらにこのサービスロゴのベータもグレーで視認しにくいものだったからだと思われます。
しかし我々デザイナー軍団は、もちろんずっと気づいていました。そして思っていました。「このBETA、マジで消したい」と。でも実行してきませんでした。「ベータ版を卒業するって、サービスとしては大ごとだから、何か大きなリリースがあったときじゃないと消せないよな・・・」という理由で。
でもでも、やはり考え直しました。「やはり、そんなの待っていられない!BETAを消すのは、ベータ版を卒業するわけじゃなく、そもそもベータ版じゃないサービスなのにBETAが付いていた今までの表記が誤表記なのだ」と。
要は、イライラしていたのですw
誰が消す?
とはいえ現場のメンバーだけで勝手に削除すると、大ごとにならないとも限りません。ということで、創業メンバーでありサービス責任者でもある副社長の成田に了承をとりました。そして、せっかくなので、このブランド的負債は、創業メンバー自らの手でケリをつけてもらうことにしました。
成田のPCに開発環境を整え、エンジニアが横でアドバイスしながら作業を進めます。成田はコードに触れたことがないわけではないので、開発を進めてから90分くらいで、無事にプルリクエストまで進みました。ということで、いともあっさりと「BETA」はクラウドワークスから消えていったのでした。
経営陣が現場メンバーとともに開発をおこなった、ということの意味
話は元に戻ります。今回の一連の取り組みで一番大事だったのは、「BETA」のありなしではありません。経営陣である成田が、エンジニアやデザイナーとともに開発作業を進め、ともにゴールまでたどり着いたプロセスこそ、最も大切なものでした。経営陣と現場メンバーの、信頼関係のデザインです。
経営陣と現場には、ギャップがあるのが普通
サービスづくりをしている現場メンバーと、事業成長や会社成長にコミットする経営陣は、よく対立構造で語られがちです。特に、クラウドワークスのようなベンチャー企業が急速に大きくなっていく過程で、元々なかったギャップが徐々に生まれ、大きくなっていくようです。
ほんとは対立なんて存在していなくて、事実だけ見れば、お互いの持っている情報の偏りや、邪推のキャッチボールがおこっているだけのことも多いと思うのですが、人によっては、お互いの正義をぶつけあう宗教戦争のような理解をしていたりして、なかなかギャップは埋まらない。正直に言えば、クラウドワークスにもそういったものが一部あったりします。
でも、対立風なものの多くは、信頼関係さえあれば、問題にすらならないことも多いのかなと思います。信頼関係があれば、相互にリスペクトしつつ対話しながら、単なる事象としてのギャップに、向き合えます。立場や見える景色が違うのですから、何かしらのギャップがあるのは普通のことです。そのギャップを、越えられない壁としてとらえるか、さらに相互理解を進める余地があるととらえるかは、大きな違いです。なるべく後者でありたいですよね。
相互理解を進めるためにはリスペクトの表明から
信頼関係の構築に必要なのは、「信頼の体感」だと思います。「あ、自分へのリスペクトがある」という体感を、経営陣からでも、現場からでも、とにかく、まずどちらかから相手へ与えること。すると、相手が受け取ったリスペクトは、自分へのリスペクトとなって返ってきます。この作用は「返報性」と呼ばれ、人間の心理的原理です。
今回の事例でいけば、まずは現場のデザイナーから「一緒に開発してみましょうよ」というリスペクトボールを経営陣である成田へ投げかけたところから始まりました。その後「開発やってみたい、やり方を教えて欲しい」という形でボールが返ってきて、リスペクトのキャッチボールが始まり、最終的にはお互いの信頼関係をひとつ深める結果へとつながっていったのかなと思います。
成田と開発をともにしたエンジニアの澤田は、「最初はスゲーびっくりしましたよ、副社長が開発すんの?って。でも、現場を知ろうとしてくれてるんだ、って感じられて嬉しかったですねえ」と後日話してくれました。
やっぱり信頼関係をつくるには、「同じものを見る、やる」というのが一番ですね。
最後に、実際に開発してみた成田の感想をご紹介します。
よかった点
・自分も開発プロセスを少しでも把握できると各メンバーと話す時の理解度は全然変わりそう
・単純に、めちゃくちゃ楽しい
その他
・ロゴのsvgファイルでBETAと本体ロゴが分けて管理されていてデザイナーの考えが垣間見えてありがたし
・デプロイの仕組みすごい、slackと連携して自動化されててすごいスムーズだしスピーディ
・一緒にリリースした別のコードのバグでエラー祭りになり大変迷惑をかけましたw
今後
・継続的にやりたい
・もっと深いところもやっていきたい
・デザインもやりたい(勉強会とかも参加予定)
(左から、副社長成田、デザイナー上田、エンジニア澤田)
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