🇹🇭鼓膜切開サミティヴェー
カバンの奥に保険証書と連絡先の書いてある紙があった。
今や電子媒体が主の時代。
それでもホテル予約書やチケットなどなんでも紙でも念の為持つ
スマホの電池切れでも確実なる安心が欲しい。それが元バックパッカーの性である
現地連絡先窓口にかけると予想通りサミティヴェート病院を紹介された。トンロー地区の超ハイソな病院だ。
タクシーに乗る。相変わらず水の中で沈んでいるかのような聴力。ドライバーが「健康な俺はモテてモテてたまらんよ。健康がなきゃ何もできないぞ。」などと言ってくる。
「ドウゾコチラデス」
無料の水ボトルがある待合室で5本ぐらい飲み干した。緊張で喉が渇くのだ。なぜ緊張するか?
(もう覚悟はできている)
ドクターの診察。若い男性通訳。症状を伝えた。診てもらった。診断結果は早かった。
通訳曰く
「アナタのコマクの向こう側が血ダラケにナッテイル。次のヒコウキにノルノハいつだ?」
「明日の夜の便」と答えると通訳も医師もナースも皆んな固まってしまった。
通訳曰く
「アナタのコマク、ホッとけばナオル。デモ明日ヒコウキニノッタラコマク破れる。イマカラ切ってアナをアケマス。血をスイトリマス」
分かっていたよ。覚悟はしていたよ。私はなんたって薬剤師。抗生物質だけでやり過ごせるものではない。
通訳曰く
「ダイジョウぶ。コマク、穴アケレバ、着陸のトキ、イタクナイ」
知っていたよ。穴を開ければ気圧の増減に関係なく鼓膜は安定し、中耳内が負圧になることも無く鬱血もしない。
実にシンプルだ
地獄の治療が始まった。