課題とグループワークのデザイン
日々、講義のやり方をアップデートする大学教員の書いている記事です。(なのでこの記事もアップデートされていくものと思われます。)
授業の課題は何のためにあるのでしょうか?
学生の提出してくる課題の出来が悪いのはなぜでしょうか?
教員の側が認識を改めることで改善することができます。
授業の課題は、学生の評価をすることが主目的ではなく、学生が自分自身でよく考えて、手を動かして授業の内容をより効率的に身に付けるために行うものです。そう認識することで、提出して終わるのではなく、そこからさらに改善できるようにフィードバックを与えることができます。
学生の課題の出来が悪い場合、教員に大きな責任があると認識することで課題そのものを改善することができます。課題の出来が悪いのはほとんどの場合、課題のインストラクション不足です。防具と竹刀だけ与えて「戦ってみなさい」とだけ指示したところで剣道ではなくチャンバラになるだけで、それで「全然なっとらん!」とプンスカしていたらダメですよね。学生はあなたの授業で初めてその分野と向き合うということを忘れていませんか?
課題のテンプレートを用意する
とはいえ、実際の講義では学生もたくさんいるから丁寧にフィードバックするのは大変すぎるし、寝てたり聞いてなかったり遅刻してきたりするからインストラクションはなかなか伝わりません。
そこで使えるのが「テンプレートを用意しておく」という考え方です。課題を穴埋め式に近いものにして、それをプリントやファイルとして配布することで、口頭のみで指示する場合よりもはるかに正確に課題の意図を伝えることができます。テンプレートに沿って提出された課題はチェックもしやすいのでフィードバックも行いやすくなります。
これは武道で言うところの「型」に近いものだと思います。
以下は、私の授業での実例です。
最初の課題だとするともっとカチカチなテンプレを作った方がよさそうだと感じています。細かくは、授業を重ねながらちょうどいい塩梅に調整していくしかないでしょう。
応用編としては、課題2、課題3とだんだんテンプレートを減らしていって自由に書かせる部分を増やしていくことで、だんだんと難易度を上げるレベル設定を行うこともできます。
脱なんとなくグループワーク
グループワークについてもなんとなく行うのではなく、学生のトレーニングのために行うものであって、うまくいかないとすれば教員の側に大きな責任があると認識することでできる改善があります。
グループワークに生じうる3つのリスク
うまくグループワークを行うと、他の学生の考えを聞く機会、自分の考えを述べる機会が増えることに加え、教員からだけでなく相互にフィードバックすることで個人の課題を改善することにもつながります。
しかし、以下に挙げるように、グループワークがうまくいかず、狙った効果が得られなくなる様々なリスクがあります。
心理的負担:評価したりされたりすることが苦手、じっくり考えたい性格で話し合いのペースが苦手、などなど様々な要因でグループワークに大きな心理的負担を感じる学生がいる。そもそもグループワークのある授業の履修を避ける可能性もある。
フリーライド:グループにただ乗りして単位だけ取りたい学生がいる。
最大公約数:グループで共感できる考えしか成果として出てこない。とがったアイデアなどがグループワークの過程で消えてしまう。
グループワークのリスクを低減する3つの方法
リスクがあるとわかっていれば、ある程度は対策することができます。
予告する:シラバスやガイダンスでグループワークがある授業だと予告しておくこと、実際にグループワークを行う前の回などにグループワークのテーマを予告しておくことが大切です。苦手を感じる人でも、心の準備、テーマに沿った情報収集や意見の準備に十分な時間がとれれば、いきなりグループワークが始まるのに比べて圧倒的に楽なはずです。合わせて、以下のような対策を考えているということも伝えるとよいでしょう。
個人課題→グループワーク:私は必ず、まず同じテーマで個人での課題に取り組んで提出してもらった後に、それを持ち寄る形でグループワークを開始するようにしています。グループワークが苦手な人がじっくりと準備することができますし、フリーライドする気満々の人も最低限は貢献することになります。
個人課題にテンプレを用意しておけば、グループワークでの意見共有なども効率的になり、やることが盛りだくさんの忙しい授業でも時短になります。
最大公約数的な話し合いに終わってしまわないように、教員は学生の個人課題での提出物をチェックしてとがったアイデアを発掘しておきましょう。「このアイデアはとがっていていいよね」といったフィードバックをグループワーク前~後のどこで伝えるのがよいかは模索中です。
グループの分け方:少なくとも「今からグループワークをするので〇人組になってください」はダメです。トラウマを生み出しすぎているので法律で禁止するべきレベルです。
どのようなグループの分け方がよいかはやはり模索中ですが、グループワーク前の個人課題のときにどのようなグループがよいかの希望を書いてもらって、それを見ながらこちらでグループを分けるという方法を試しています。
「特定の相手とグループを組む方が安心な人」も「グループを組みたい特定の相手がいない人」も、ひどい目に合いにくい方法、のつもりです。
まとめに代えて
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