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海老澤剛の生い立ち72-高校の先生の思い出 物理の少林先生
高校の話に戻します。
中学のときと同様に、高校の先生方も個性的な先生が多かったです。
一番強烈に印象に残っているのは、物理のS先生です。
S先生は少林寺拳法の有段者で、毎年四国の総本山で鍛えておられ、生徒たちの間では「少林先生」と呼ばれていました。
小柄ですが、全身が、引き締まっていて、顔もエラが張って噛む力が普通の人の何倍も強そうなのが見ているだけでわかりました。
怒ると私たちの3倍ぐらい太い血管がコメカミに浮かびあがり、手を握り締めるとハガネのような筋肉がピキピキと音を立てて、力強く筋が張ります。
お腹の底から出される力強い声は聞き取りやすく、難しい物理の内容が、迫力に押されてシンプルに聞こえてきます。
高校生が睡眠不足であることは、理解してくださり、「眠くなるのは仕方のないこと」と仰ってくださいました。そして、うとうとしていると腹圧の高い声で名前を呼ばれ、わたしの場合は、
「えびさわー!顔洗ってこい!」
と言われます。
顔洗いに行かなくても、パッと目が覚めました。
3年になるとき、授業を選択するのですが、物理を選択する生徒が多く、人数が溢れているので、コマ数の少ない方を選んでくれないかと頼まれました。
わたしは、二つ返事でお答えしたら「ありがとう。面倒見るからな」と言われました。
中学のときもそうでしたが、「怖い」と言われている先生ほど、優しさを感じます。
少林先生も例外ではなく、質問に行くと分かるまで教えてくれました。
何年か前に同窓会があった時に、少林先生はどこかの高校の校長先生になっていると聞き、小柄ながら、大きな器の心を持つ先生に、みんな納得していました。