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第32号『レース車両風改造の落とし穴 ~誤解だらけのタイヤグリップ至上主義~』

2014年7月12日配信(発行部数 377部)

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発行人の「車の修理屋たけしくん」です。

自動車の本来の性能を引き出す調律師です。
明らかに調子がおかしいのに「こんなものです」で片付けられていませんか?
適切に整備された車はとても調子がよく、一般的に考えられているよりずっと長寿命なんですよ。
僕はあなたにクルマを、そしてモノを大切にして欲しいと思っています。
プロの整備士の目線で役立つ情報を配信しようと思います。

さて、今回は第32号

『レース車両風改造の落とし穴 ~誤解だらけのタイヤグリップ至上主義~』

です。

自動車運転技術の巧拙がよくわかるのは曲がりくねった山坂道。

自動車に装着されるタイヤは、直進している状態とは違ういろいろな力を路面から受けます。

自動車が路面と接する唯一の大切な部位ですから不適切なものの装着は第一に避けるべきです。

そして、第二に避けるべきは、グリップ力の高いタイヤへの安易な換装。

グリップ力の高いタイヤへの換装欲求が現れるのは、現装着タイヤへの不満からだと思います。

グリップ力が不足しているとドライバーが間違った解釈をするからでしょう。

「アンダーステア」「オーバーステア」

という自動車の旋回特性を表す言葉があります。

これらは自動車個々に備わる特性ですが、ドライバーのいうアンダーステアやオーバーステアは、それぞれ

「そんな運転の仕方ではとても曲がれそうにない状態」



「そんな運転の仕方では簡単にスピンに陥りそうな状態」

を指すことが、(大変怖い思いをする)同乗で僕が感じることです。

そんな不適切な運転の仕方でも、タイヤをグリップ力の高いものに単純に換装すれば、曲がれそうにない状態でも、スピンに陥りそうな状態でも、何とか姿勢を保ってくれるでしょう。

これは運転技術の向上ではなく、誤魔化しです。

技術の向上がないわけですから極めて危険な走行状態といえます。

一方、上手なドライバーはタイヤに元々備わる高い性能を十分に引き出します。

カーブを安全に曲がるのに十分なグリップ力を各輪に与える技術。

それは、制動時に発生する減速エネルギーの一部をタイヤを路面に押し付ける力に変換し、カーブを曲がり終わるまでその力を有効に車体に残す技術です。

制動、操舵、加速のリズムとライン取りを相応の訓練を経て体得しなければいけません。

カーブを曲がるとき、狙ったラインから逸れそうになって怖い思いをするのは、

クルマの性能が劣っているわけでもなく、タイヤグリップ力が不足しているわけでもなく、サスペンションが不適切なわけでもなく、

まずは運転の未習熟と考えるべきだと思います。

《続く》

《第32号「レース車両風改造の落とし穴 ~誤解だらけのタイヤグリップ至上主義~」おわり》

それでは、次号をお楽しみに。最後までお読み頂きありがとうございました。


◆たけしくんコメント◆

ラリー初心者の頃、僕が運転席で、先輩は助手席という組み合わせで峠の下りを練習します。

「ブレーキが甘い!」
「フロント荷重が足りない!」

とカーブのたびに何度も叱られました。

「フロント荷重」、「フロント荷重」とほんと口酸っぱく言われました。

きっと助手席の先輩は、

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