第50号『幻の添加剤との出会い ~二硫化モリブデンを考える~』
2019年1月26日配信(発行部数 561部)
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こんにちは。
車の修理屋たけしくんです。
今回は第50号
『幻の添加剤との出会い ~二硫化モリブデンを考える~』
です。
僕は、エンジンオイルにユーザーが注入するタイプの市販添加剤に対して否定的な意見でした。
メインで取り扱うエンジンオイル、 MOTUL の製品は、ベースオイル(基油)が大変優れていて、各種添加剤がバランスよく配合されています。
酸化防止剤、清浄分散剤、減摩調整剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤など…
メーカーが発行するSDS(安全データシート)を参考にしますが、詳細は不明で、ベースオイルに対して添加剤は数割程度含まれるといわれます。
目的の作用を期待して混入する各種添加剤ですが、ベースオイルに配合すると相互作用しますので、添加量や添加方法などバランスがとても大切です。
そんなデリケートなエンジンオイルですから、ユーザーレベルで市販添加剤を注入して、元々配合される添加剤の均衡を崩しては、元も子もありません。
MOTUL のような素晴らしいエンジンオイルに市販添加剤を加える行為は、一流シェフの作る完成された料理(作品)に、食卓塩や市販調味料を加えるのと同じ。
幻の添加剤に出会うまでは、その考えは揺るぎませんでした。
『幻』の所以は、その入手の困難さ。
お一人の巡回販売で、新規取り扱い店を積極的に求めず、旧来からお付き合いのある自動車整備事業者のみに卸売りするスタイルのためです。
さて、大掛かりな修理になることの多い、エンジンオイル消費という症状があります。
外部にエンジンオイルが漏れ出ていないのに、エンジンオイルが徐々に減っていきます。
国産、輸入車問わず、エンジンオイル消費に悩むユーザーは少なくありません。
ピストンリングとシリンダの隙間から燃焼室にエンジンオイルが混入して燃焼し、排気ガスと共に排出される、いわゆる「オイル上がり」が比較的多いと思います。
近年、低燃費志向の技術開発で、ピストンリングの形状や機能に以前とは違う試行錯誤があるという話を聞きます。
単純に多走行で摩耗が進んでオイル上がりになるエンジンの他、エンジンオイル交換管理の行き届いた車両であっても、オイル消費傾向にあるエンジンがあり、長期間オイル消費量にほとんど変化がないのが特徴です。
そんな話を、ある同業者にしていたら、「これは本当に良いから是非一度試してみて!」と分けてくださったのが
『丸山モリブデン』でした。
主成分は二硫化モリブデン。
何十年も前から各社が販売する二硫化モリブデンのエンジンオイル添加剤に目新しさは無く、
最初、特別な印象はありませんでした。
二硫化モリブデンそのものは大変優れた性質がありますから、それを否定しません。
その証拠に、僕はエンジンを分解組み立てする際、要所に二硫化モリブデン配合グリースを適量塗布します。
それは分解整備して最初の作動時、エンジンオイルが循環して安定するまでの間の金属同士の「カジり」を予防するためです。
ニ硫化モリブデンの結晶構造は、重ねたトランプをイメージすると良いかもしれません。
重ねたトランプに手のひらで鉛直方向に強い圧力を加えても、ほとんど変形しませんが、横方向には簡単にスライドします。
1マイクロメートルに1600枚分の積層構造があると言われています。
この結晶構造は、極圧性と潤滑性を併せ持ちます。
にもかかわらず、僕が同種の添加剤に懐疑的なのは、二硫化モリブデンがエンジンオイルに溶解しない「固体潤滑剤」だからです。
固体潤滑剤は、エンジンオイル内での分散性と、金属表面への吸着(定着)性の向上・効率化が同種の添加剤の課題であり、各メーカーのノウハウと思いますが、今まで試した二硫化モリブデン添加剤は、垂れ流し的で体感できる効果は薄いかほとんどなかったのです。
調べると、丸山モリブデンは二硫化モリブデンの粒が小さく(平均粒径100ナノメートル(計測法不明)とのこと)まず他社製と大きく違うところでしょう。
一般的に粒子は細かくなりすぎると分散媒体への攪拌が難しい上、「二次凝集」が起きやすく、かえって粒が大きくなってしまうことがあります。
丸山モリブデンは、主成分の効果を高めるために、ニ硫化モリブデン粒子を細かくした上で、二次凝集を防ぎ分散状態を保つ難易度の高い技術に挑戦したのではないかと察します。
そんな丸山モリブデンが、エンジンオイル消費を緩和させる効果があるというのです。
~次号に続く~
《第50号「幻の添加剤との出会い ~二硫化モリブデンを考える~」おわり》
それでは、次号をお楽しみに。最後までお読み頂きありがとうございました。
◆たけしくんコメント◆
このメルマガを配信したちょうど3ヶ月後
Youtube動画で丸山モリブデンが大ブレイクしました。
僕はブログ、メルマガの読者様に「幻」のまま細々とご提供しようと思っていたのですが
2019年4月末からはしばらく供給が滞り、ネットでは転売に次ぐ転売で価格が異常高騰する事態にもなりました。
同年秋頃にようやくブームも落ち着きましたが、全国にその名は知れ渡り、「幻」感は薄れてしまった印象です。
さて、僕に丸山モリブデンを紹介してくださったのは詳しくは明かせませんが、お一人で整備工場を経営されている大先輩の社長です。
そのお方は
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