第49号『暖機運転不要』は本当か? 〜クルマへの愛情が育む最高のコンディション~
2018年9月15日配信(発行部数 550部)
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こんにちは。
車の修理屋たけしくんです。
今回は第49号
『暖機運転不要』は本当か? 〜クルマへの愛情が育む最高のコンディション~
です。
近頃の自動車は暖機運転しなくてもいいとか、最近の新車は慣らし運転が要らないとか、自動車の深部に触れている僕は、どうしてそんな乱暴な噂が出てくるのか不思議に思うことがあります。
エンジン稼働の電子制御が進歩して燃調がきめ細かくなり、冷機時と暖機時でエンジンのフィーリングにほとんど差異を感じなくなりました。
いつどんな時でも簡単に始動し、よく走る自動車に乗ると、暖機などしなくてもいいんじゃないかと思うのは無理のないことなのかもしれません。
確かに、エンジンを始め、各構成パーツの精度は、以前に比較して著しく向上したと思います。
しかし、精度がいくら向上したとしても、物理現象とエンジンの基本設計は不変です。
例えば、アルミニウム合金製のエンジンのピストン。
円筒形のように見える形状ですが、燃焼ガスに晒されるピストン上部と、そうでないピストン下部では、熱膨張の量が違うため、上部より下部のほうが外径が大きく作られています。
エンジンの温度が安定するところで、広めに取られたクリアランスが適正になるように設計されているのは、今も昔も変わりません。
ピストンとシリンダのクリアランスが広い状態でエンジンに負荷をかけると、ブローバイガス(燃焼室の機密を担うピストンリングからの燃焼ガスの吹き抜け)の増加でエンジンオイルの劣化が加速します。
シリンダ壁に残ったエンジンオイルの掻き落としも十分に行われず、エンジンオイル消費も大きくなるかもしれません。
また、ピストンの上下運動の過程では、冷機時のクリアランスが広い時、負荷が掛かるとシリンダ側面にピストンが過度に接触したり、動きに滑らかさがなくなるイメージがお分かりいただけるかと思います。
エンジンにはピストンの他にも、熱膨張の差でクリアランスが変化する場所がありますので、設計上安定した温度で稼働させるのが理想なのです。
かと言って、水温が安定に達するまでの長時間アイドリングは必要ないと思っています。
近頃は、信号待ちで停車している僅かなアイドリングも止めて、燃料の節約をしようという環境配慮の動向がありますし、
駐車場所によっては、騒音・排出ガスの近隣への配慮も必要でしょう。
だから、暖かい時期だと1分、寒い時期でも2~3分程度の暖機で十分と思います。
周辺環境が許すなら水温計の針が動き出すまで、もしくは、低水温のランプが消灯するまで、暖機アイドリングできればベストです。
エンジンの暖機はそれでいいとして、他の機械機構はどうでしょう。
例えば、変速機(トランスミッション)の温度上昇はエンジンと比較して緩慢です。
さらに、サスペンションのショックアブソーバ内部のオイルや、ラバーブッシュなどは、温度が安定するまでもっと時間がかかるかもしれません。
エンジンの暖機が終了したからと、いきなり勢いよく走りだすのは、機械各部からみてあまりよい操作だとは言えないのです。
そんなことしなくても、私のクルマは10万キロ調子よく走ったよという反論があるかもしれません。
しかしそれは、機械が発揮する本当の調子よい状態ではなかったかもしれませんし、走行距離20万キロを超えて、新車の時より調子よく走っているクルマが存在するのも事実です。
そんなクルマを見ていると、「暖機運転をするかしないか」といった、クルマとの接し方をマニュアル的、局所的に励行するのが重要なのではなく、オーナーの気遣いや思いやり、もっというと注いだ愛情に、クルマという機械が素直に応えたという結果なんだなと感じるのです。
《第49号「『暖機運転不要』は本当か? 〜クルマへの愛情が育む最高のコンディション~」おわり》
それでは、次号をお楽しみに。最後までお読み頂きありがとうございました。
◆たけしくんコメント◆
近年、クーラント温度はメーター表示ではなく、簡単なインジケータ(ランプで表示)になりつつあります。
熟練ドライバーの方は、クーラント温度の常時監視が大切なことをご存じで、OBDからエンジン制御の信号を分岐して表示するモニターを装着されています。
さて、先日水温モニターの付いたプリウスαを車検でお預かりして
検査場の往復をしていたところ、日中でも10℃を下回る気温でしたが、
10kmも走行したにもかかわらず、クーラント温度がなんと
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