4級審判員 —「4級審判のくせに」と言われてもー【Short letter】
4級審判員は下に見られます。
例えばJリーグの試合で微妙な判定があった場合、その判定についてSNSで意見するとお決まりの言葉を浴びます。
「4級審判のくせに」と。
SNSで言われる分については、何も気にはなりません。しかし、実際の試合では、審判ワッペンの色で態度を変える選手から言われることもあり、寂しい想いをすることがあります。
この「4級審判のくせに」という言葉には、2つの理由が込められています。
審判登録制度とは
1つ目の理由として審判の登録制度を説明します。
日本サッカー協会は審判登録制度を設けています。カテゴリーごとに担当できる審判資格が異なります。Jリーグの試合、日本サッカー協会が主催するJFLや天皇杯の試合では国際審判員または1級審判員が担当します。対する4級審判員は、市区郡町村サッカー協会が主催する試合を担当できます。つまり、サッカーのルールを熟知し、SNSで説得力のある意見を述べたとしても、上位カテゴリーの試合での審判経験がないという理由で言われるのです。
2つ目の理由として、4級審判員の資格は講習代を支払えば誰でも取得できるからです。
講習内容は、4時間程度の座学と筆記テストがあります。この筆記テストは講習内容に沿った内容が多く、サッカーのルールと知識さえあれば合格できます。また、4級審判員の資格は選手経験がなくても、サッカーのルールを勉強したいという動機さえあれば受講は可能です。サッカー番組に出演する女性タレントが4級審判員にチャレンジする企画は、こういった背景があります。
因みに、4級審判資格を取得する場合は日本サッカー協会に登録し、活動地域のサッカー協会主催の審判講習会に申し込みます。
4級審判員はSNSで色々と言われるだけではありません。実際の試合でも、判定に対して出場する選手、ベンチにいる選手、監督そしてコーチから何かとヤジを言われます。試合後に「あの判定は良かったよ」と褒めてもらうことが数年に1回あれば、まだ良い方です。
色々と言われて、肩身が狭い。にもかかわらず、なぜ4級審判員を続けるのでしょうか。
4級審判員を続ける理由
4級審判員を続ける理由として、審判資格を取得するまでの経緯が関係します。
都道府県のサッカー協会に登録している社会人サッカーチームは、チーム登録規定の中に審判員数が決められています(神戸市サッカー協会では3人以上の登録が必要)。また、ジュニアカテゴリーでコーチ登録するにあたり、4級審判員資格は必須となっている場合があります。そういった事情で、ほとんどの方は4級審判員の方は必要に迫られて取得します。
僕は社会人サッカーチームに所属しているので、4級審判資格を持っています。取得した経緯は上記の通りです。4級審判員の肩身の狭さを感じながらも、チームに所属する限りは審判も続けなければなりません。今年のJFAラーニング*1で4級審判員の資格を更新をしました。
*1 JFAラーニング
審判資格を更新する方法として2パターンあります。
更新講習会またはWeb講習eラーニングを選択することができます。
Web講習は2014年ごろから導入された資格更新システムです。
著作権上、講習内容の動画などを残念ながらお見せできません。
試合中に4級審判員がヤジを言われる状況
1級審判員が試合中にヤジを言われるほとんどは判定についてです。4級審判員の場合は判定だけではありません。主審の場合は自信をもって笛を吹いていない時、副審の場合はレフリーフラッグを中途半端に上げた時にヤジを言われます。初めて審判をする方や審判経験が浅い方は、この状況に陥りやすいです。そして、色々と言われてパニックとなり、試合が荒れることがあります。
しかし、自信を持って笛を吹くべきタイミングで正しく吹いてもヤジは言われます。そもそも審判は選手としての技術が低いというイメージを持たれていることが多いからです。
「審判、どこ見てるねん」
「ルールを知っていても、プレーを知らない」
「怪我させる気か」
と選手から高圧的に言われます。このような言葉を吐けるのは、審判が言い返さないことを知っているからこそ出てくる言葉です。
中でもオフサイドの判定については特に酷いです。
ルール改定通りのタイミングで副審がレフリーフラッグを上げて主審にオフサイドを知らせます。攻撃側からは「今のはオフサイドでない」と言われるのは全く気になりません。しかし、守備側からはレフリーフラッグを「上げるタイミングが遅い」と言われます。選手はオフサイドルールが改定されたことを知っていても、身体がまだ覚えていないことが原因にあります。にもかかわらず、ヤジを言われてしまうのです。
当然のことですが、4級審判員のレベルはワールドカップやJリーグ、JFLなどの1級審判員より低いです。しかし、カテゴリー関係なく、ルールに沿って試合をコントロールしています。ただし、1級審判員と同じような状況で笛を吹いても、説得力がないと4級審判員は見なされます。
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