乗り鉄その3〜くま川鉄道
アナログの魅力🎵
先日、妻と熊本県南部の山間部を走る
くま川鉄道
まで足を運び、乗り鉄を楽しんできた。
くま川鉄道は、熊本県人吉市と球磨郡湯前町を結ぶ第三セクター方式(自治体と民間の共同出資)の鉄道会社で、平成元年10月から運行を始めたが、令和2年7月4日に人吉・球磨地方を襲った豪雨による災害で沿線沿いの橋梁や列車が被災してしばらくの間休業を余儀なくされたらしい。
しかしその後の復旧工事を経て、現在はその一部である「肥後西村駅」と「湯前駅」の間で営業運転を再開している。
その日私が乗車した区間は、「おかどめ幸福駅」と「湯前駅」の往復であった。
おかどめ幸福駅は、日本で唯一「幸福」の名がつく駅として、一時期は全国から鉄道ファンや、その名前にあやかって
幸福になりたい人
が押し寄せたらしいが、今ではそれほどでもないようで、訪れたのは日曜日であったにもかかわらず、人はまばらであった。
しばらくこの駅で待っていると、クリーム系統の落ち着いたカラーリングの二両編成の列車、それも都会では目にすることがなくなったディーゼル車両がやって来た。
私はこのディーゼル列車が大好きである。
一番好きなのは蒸気機関車であるが、やはり内燃機関というものは、エンジンそれぞれの音も楽しめるからだ。
(かく言う私は、音鉄の素質も有するのかもしれない)
無人駅だったので、そのまま列車に乗りこむと、なんとお客さんはまだ誰も乗っていなかった。
乗車前には駅前にちらほら観光客らしき人が集まっていたので、列車を待っている人かと思ったが、私たち以外は誰も乗ってこなかった。
どうもその人たちは、おかどめ幸福駅そのものが目的の「幸福にあやかり たい人」たちだったようだ。
車内は、このように内装に凝っており、この列車を貸し切りしているようで、とてもゴージャスな気分に浸れた。
この列車は、利用客の8割が、平日沿線沿いの高校に通う高校生らしいので、それでなんとか採算は取れているのだろうか。
それにしても、こんな豪華な列車で通学する高校生が羨ましくも思われた。
まだ全線が開業していないこともあり、日曜、祭日等に来れば、私のようにリッチな気分を味わえるので休日利用がお薦めである。
しばらくすると、男性の車掌さんが回ってきたので、切符を買い求めた。
すると、開口一番
今日はどちらからおいでですか?
と聞かれた。
素直に、県外からこの列車に乗るためにきたことを話すと非常に喜んでくれ、しばらく沿線沿いの観光名所まで簡単にレクチャーしてくれた。
その場で終点の湯前駅までの往復料金を支払ったが、貸し切り料金(笑)は、車掌さんのミニ観光案内もついて二人で1520 円☀☀️と破格の安さであった。
その後途中の駅で乗降したお客さんがちらほらと見受けられたが、ほとんどが地元の方と思われる人であった。
おかどめ幸福駅から終点の湯前駅までは、わずか30分くらいであった。
終点に着くと、約10分後くらいに発車となる同じ列車で、そのまま復路を楽しんだ。
往路では気づかなかったが、復路途中右手に昔の寝台列車、いわゆる
ブルートレイン
らしきものが目にとまった。
調べてみたら、やはり、過去に熊本と東京の間で運行されていた寝台特急「はやぶさ」で、くま川鉄道沿線上にある「多良木町」という自治体がJR九州から購入して、平成22年から
ブルートレインたらぎ
という名称で、簡易宿泊施設として開業していることが分かった。
現在では、寝台列車というものが、東京と島根県出雲市や香川県高松市を結ぶ
サンライズ瀬戸・出雲
だけになっているので、手軽に寝台列車の雰囲気を味わえる施設として、興味のある方は利用してみたらどうだろうか。
再びおかどめ幸福駅についたので、出口に行くと、先ほどの車掌さんが笑顔で
またお越しください
と言った。
わずか往復1時間あまりの短い乗り鉄であったが、ほぼ貸し切り状態で楽しめたこと、好天にも恵まれて沿線の景色を愛でながらゆったりとした時間を過ごせたこと、車掌さんとの会話を楽しめたことなど、都会の電車では決して味わえない贅沢な時間を過ごさせていただいた。
そう言えば、都会の電車にありがちな無機質なデジタル改札や定型的な車内放送もなく全てがアナログチックであったことにも思いが及ぶ。
昔の列車はこんな風だったなあと、自分が高校生の頃、ディーゼル列車で通学していた頃も思いだし、昭和の郷愁まで味わうことができた素晴らしい乗り鉄であった。
全線開業したら、ぜひ再訪したい。