カラスの子
今日天気もよかったので、亡き義父の墓参りがてら、妻と二人で車で出かけた。
その帰路に、景色の良い海岸に立ち寄り、その景色を楽しみながら弁当を食べた。
食べ終わり、しばらくゆっくりしてから立ち上がって車のところへ戻る途中、松の木の下に、黒っぽいものが動いているのに気づいたので、近寄って見ると、小さなカラスであった。
カラスなど、普段はゴミを荒らしたり、ずる賢いイメージが先行して、かわいいなんて思ったこともないが、そのカラスは、体も小さく、弱々しく口をパクパクさせて、まだ飛ぶこともできない感じだったので、見ていて何かかわいそうになってきた。
カラスのいる松の木の下から上を見上げると、その松の木の上のほうに、カラスの巣らしきものがあったので、おそらく巣立ち前に巣から落ちて、親鳥に助けを求めているところだろう。
また、その上空には、親鳥なのか分からないが、カラスが飛んでいた。
カラスの習性に詳しくないが、親鳥が助けずこのまま放置すれば、このカラスは衰弱して死んでしまうだろう。
この様子を見た妻が
どうする?
と私に尋ねた。
どうするも何も自然にまかせるしかない だろう
親鳥らしき鳥も上空にいることだし
と答える私。
近くにコンビニでもあれば、何か食べさ せれば元気になるかも
と言われたが、とりあえずコンビニがあったら、何か買って食べさせようということになって車をはしらせたものの、田舎道が続き、行けども行けどもなかなかコンビニがなかった。
後ろ髪をひかれる思いは残ったものの、仕方なくそのまま車を走らせて、自宅まで帰りついてしまった。
あのカラスの子は、母鳥が気付いて助けてくれただろうか、それともあのまま衰弱死するのだろうか。
その日の夕食前、いつも通り、母の遺影に手を合わせた際
カラスの子が元気でありますように
と祈ってしまった。
私も年を重ね、随分やさしくなったものだ。
カラスの子よ、やさしい心にしてくれてありがとう。
願わくば、どうか生きてくれよ。