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ドイツ・昆虫保護法をリサーチ
チリで取り組むサーモン産業の取材の一環として、地元紙や専門誌のウエブ版をチェックするようにしている。日ごろの取材領域でも、結構知らないことが多くて面白い。これに味をしめて、最近は自分の関心テーマがその土地でどんな風に報じられているかをリサーチするようにしている。今、チリサーモンの次に気になっているのが、ドイツ・バイエルン州の昆虫保護法。いろいろ調べてみると、日本に入ってくる情報は今年4月の時点で止まっているけれど、実はもう8月に施行されたらしい。
昆虫保護法
そもそも「昆虫保護法」とはなんぞや、ということで以前書いたnoteも振り返って整理しておこう。
昆虫保護法は、バイエルン州が有機農業の推進によって農薬や肥料から自然環境を保護する法律として、「ハチを守ろうぜ!」との号令に端を発した試み。このニュースは、今年2月にAFP通信を介して日本に入ってきた。4月にも関連記事がAFPのサイトにアップされていて、見出しは「『昆虫保護法』請願に署名175万人、住民投票せず法制化へ 独バイエルン州」だった。法律制定に必要な住民投票「ミツバチを守ろう」の実施を申請するための署名が、開始から2か月で175万人分に達したというもの。
州政府の資料を見ると、実際には「昆虫保護法」という名前ではなく「バイエルン自然保護法」を改正する形で、8月1日に施行されているみたい。
◾️ピオトープのエリアを2030年までに、州の空き地の少なくとも15%(23年までに10%、27年までに13%)に拡大
◾️23年までに、国有林の10%を長期的に林業に使用されない天然林にする
◾️国内の農地を2025年までに少なくとも20%、2030年までに少なくとも30%を有機農業の農地にする
◾️屋外照明設備を設置する場合、昆虫の動物相への影響を考慮に入れる
◾️騒音保護システムとしての道路脇や公共スペースの緑化
◾️自然保護支援プログラムの拡大
などなど
とまぁ色々と盛り込まれている。バイエルン州とは別に、ドイツは国としても「昆虫の保護に向けた行動計画」を策定して、農薬や夜間照明についての規制や昆虫保護のための研究費を拠出する取り組みを発表している。
誰でもできる地元報道の取り方
現地の「南ドイツ新聞」のウエブサイトを訪れて「バイエルン自然保護法」で検索をかけると、記事がたくさん。ほとんどは、AFP通信が報じているものと同じような内容だった。ただ、州政府のサイトからは8月1日に施行された改定内容が拾えた。
実際、いつもどんな風に現地媒体を読んでいるかというと、まずは関心テーマからどの地域の報道をチェックすればいいかを調べる。昆虫保護法ならバイエルン州だから、「バイエルン州 新聞」とかで調べる。サイト内検索で記事を引き出して、Google翻訳。はい、すんません。ドイツ語は全く読めません。ただ、Google翻訳にとりあえず仕事をさせて、その上で必要な単語を中執してそれをまた調べたりと、一つの記事を読むのに何度も検索を重ねる。
チリサーモンについては、スペイン語が分かりるのでよっぽどマシ。翻訳がいらなそうな場合は、辞書を片手に原文を読む。専門用語が多く分かりにくい場合は、やはりGoogle翻訳を使い、翻訳ページと原文ページを並べて理解している。日ごろの取材でも、後から音声をスローで聞いて辞書で調べることはよくある。
スペイン語の場合は、咀嚼すれば情報を正確に理解できる。ただ正直、この方法を使って得た、全く知らないドイツ語の情報をアウトプットするときには、どれくらいの確かさを守れているか怪しい。このnoteで前述した内容は、色々読んだ中である程度の確かさを持っている情報だけを抽出したものだから、書かなかった情報もたくさんある。とはいえ、記者を標榜しておきながら、こんな適当な方法で得た情報を発信するのは気が引ける。今回のnoteは下調べ・メモ的な感覚のもので、主題は「リサーチ方法」として理解してください。
日本は情報弱国?
今日は1日、アルゼンチンで取材していた「メルカド・リブレ」という日本でいう「楽天市場」を運営している事業者の決算説明資料(英語)をひたすらGoogleに翻訳させながら、原文と照らし合わせて読んでいた。英語もスペイン語と同じく、咀嚼すればほとんど完璧に理解できる。ただこういうとき、本当に日本人は損だなと思う。はい、言い訳しないで英語勉強します。
国内では、情報弱者がうんぬんとたまに言われるけれど、日本は言語的に「情報弱国」だと思う。インド人が普通に拾えている情報をぼくらは拾えてない。ドイツに留学していた知り合いによると、ドイツ語話者は大抵英語も話せるらしいから、おそらくヨーロッパ圏の多くの人は英語の決算説明資料を読むのにぼくほど苦労しないはず。だからといって何もしないと取り残される。「この分野ならこの媒体」という海外メディアを自分の関心テーマによっていくつか持って、現地報道をリサーチすることは情報弱国なりにすべきことの一つだと思う。
ドイツ行ってみてえ
実はぼくは、中学時代は「自然科学部」という部に所属し、虫を(特に蛾)を採りまくっていた。大学では「昆虫学研究室」に所属して、チョウの幼虫に生える角の役割を卒論テーマにした。こんな風にドイツ・バイエルン州の昆虫保護に関する取り組みを調べていくと、今度ドイツ訪問を繰り返して、この法律とバイエルン州の歩みを長期間かけて追ってみたい、なんて考えがつい脳内に湧き上がる(まだチリサーモンの取材だって形にしていないのに・・・)。
ゴリゴリの虫屋、というわけでは全然ないし、研究肌でもないと思うけど「人間と自然」というテーマが関心の一つとしてある。その点でドイツの昆虫保護法は面白い。チリサーモンがひと段落したら、これまでとは違った形で昆虫と関わっていきたいなあ。ひとまず、これからも「昆虫保護法」をウォッチしていこう。
※ちなみにトップ画は「クロウスタビガ」という蛾で、最も好きな蛾のうちの一つです。
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