漕日#1|白鳥たちの港にて
探検家といえば、どこか個人的な表現活動とも捉えられる現代だけれど、昔は軍人の仕事に探検が含まれる場合が多く、交易のための陸路や航路の開拓に命を張った。チリ海軍のエンリケ・シンプソン提督もまた、探検家だった。無数の水路が張り巡らされたフィヨルド、いわゆるパタゴニアと呼ばれる地域を調査し、開発を試みた。1872年、シンプソン提督はある水路の川が流れ込む小さな湾に立ち寄り、数百羽の白鳥の群れに遭遇し、その湾に「白鳥たちの港(プエルト・シスネス)」と名付けたらしい。そんな白鳥たちの