Corporate Innovationの組織論
不要不急の外出を控えてます!!!!!!!!!!!!!!!!!
今回は、Corporate Innovationを実施するに際して、どのような組織・体制がいいのか、また、どのような職務を規定すればいいのか、という論点に対して主に下記の古典のフレームワークを参照しつつ考えてみます。
1. Corporate Innovation組織あるある
まず、理念型の話をする前に、現状のあるあるから。オープンイノベーションや社内新規事業を実施してくに当たって主に日本でどのようなパターンがあるのか簡単に見てみましょう。
1-A. 新規事業部門@出島
体感的にはこれが一番多いパターンな気がします。新規事業専門の部隊を事業部門の外部に設けて、必ずしも本業に縛られない飛び地の事業領域なども含めて事業連携・開発を行っていくパターン。場合によってはコワーキングスペースに常駐し、物理的にも本体と切り離していたりします。
メリット:本業に縛られない、本体に縛られないため意思決定が早いこともある。働き方などのカルチャーもスタートアップに合わせやすくなるので、物理的・心理的距離が縮まる。場合によっては潤沢な予算もある。
デメリット:本体との距離が遠いせいで、事業部を巻き込んだ新規事業・協業が難しい。(従って、新規事業がスケールし辛い)CINO(Chief Innovation Officer:日本にはあまりいないが)や新規事業担当役員、CEOのコミットやサポートがないと存在理由を理解してもらい辛く、風当たりが厳しいことも。場合によっては予算も小さく、ちょっとしたPoCしかできない。
1-B. 新規事業部門@事業部
事業部門の中に新規事業開発を担当するチームがいる。主に既存事業を補完するテーマや、既存事業のDX、新規技術の応用などを追っていることが多い。
メリット:本体の中にあるので、事業部を巻き込んだ新規事業・協業はやりやすい。予算もそこそこあることが多い。
デメリット:既存事業領域からほとんど飛ばないので、経営層との期待値とずれることがある。また、単なる市場取引(受発注関係)で済ませてしまうこともしばしば。
1-C. 兼務が新規事業を担う
新規事業部門を設けず、事業部の中で新しいことに強い興味がある人間を集めて兼務で実行するパターン。アベンジャーズ型。
メリット:熱意が高い人間が自発的にやっていることもあり、社内合理性に縛られない動きができる。また、各部門とのネットワークを兼務であるが故に活用できるので、事業部に持っていきやすい。
デメリット:兼務であるが故にリソースに限りがある。また、予算が限定的なため、PoCまでのハードルが高いように思える。
このカテゴリーに綺麗にハマらないパターンもあるかと思います。(むしろこんなパターンがある!みたいのあれば教えてください🙏)
どのパターンが絶対的に良い/悪いというのはなく、事業ドメインも変数として成否に影響するように思えます。(例えば、出島型はメーカーとの相性はそこまでよくなさそう?だが、、、)
2. 理想的なCorporate Innovationの組織のあり方
それではBeyond The Championを参照していきましょう。ここでは、基本的には、新規事業部門は以下の3つの機能から構成されるとしてます。
Discovery, Incubation, Acceleration
2-A. Discovery
文字通り社内外の"探索"が目的になります。(なので部署・担当のKPIとしては探索数などがある)
少なくとも以下の役割を分担して持つべきとのこと。(リソースに応じて、兼務が発生すると思いますが)
Opportunity Generator -将来トレンド予測を自社の戦略とかけあわせて考ええる。社内外でネットワークを構築。(社内ではワークショップやコーチングでアイデアを戦略的な機会に変えていく)
欧米のケースだと6ー12人で担当するようです。(多い・・・)
Opportunity Domain Leader - 探索した事業アイデア・アライアンス案件の中から、どれを実行に移していくか決める役割。各OGとのチームワークが必要となるかつ選抜を実施するため、ファシリテーター的な経験が求められる。OGが作ってくる個別のスカウティング・トレンド調査を綜合して社内で承認されるものに整理していくことが大事。
Director of Discovery - OG、ODLの上長に当たる。主に管理・モニタリングが役割。
2-B. Incubation
最も大変なプロセス。Discoveryチームが持ってきた案件を事業化するための仮説検証を実行。複数のプロジェクト(事業)の検証を回しつつ、失敗から学習しつつ、大きくグロースしそうな事業を探していく。(プロジェクトはどしどし失敗してもらう。失敗したプロジェクトの人員はうまくいってるプロジェクトに回す。組織内でBusiness Developperの循環が生まれる。)
最大のKPIは失敗からの学習の度合い、仮説検証数等。
New Business Creation Specialist - Disoveryチームのポートフォリオから選抜したアイデア・アライアンス案件をテストする。テストしまくることが主な業務。仮説検証スペシャリスト。外部のパートナー探しなどもやる。実験思考。(Pepsicoではこの機能は業務委託で切り出し外注しているとか。)
New Business Platform Leader - 事業部を早いタイミングで巻き込んでいく役割。大きな絵を描いて事業部とコミュニケーションが取る。社内折衝機能。
Director of Incubation - NBCP、NBPLの上長。管理・モニタリング・外注マネージメント。
2-C. Acceleration
学習・実験からスケールに。スケールが目的なので、既存事業部からのリソースの引き出しが重要。ここでのメトリクスは収益性よりもグロース。トップラインどれくらい増やせるか。このフェーズで事業部移管すると収益性が求められてそれがコンフリクト起こす可能性があるので、この時点ではあくまで事業オーナーは新規事業部門。
Functional Manager - 社内の各機能のプロ。(例:デジタルマーケ、プロマネ、Enterprise Salesなどから集める。)
事業として成立するためのプロセスデベロップメントが主要な機能。
顧客への提供価値、売上増加、収益化が見込めるかの順で評価される。
Innovation Council - 事業の進捗をモニタリング。月に1度くらいで開催。事業部からもチームを招いて8ー12名程度で実施。
2-D. その他の機能
DIAが中心で機能する新規事業部門の組織外(組織の上部)の役割として、以下のようなものも挙げられてます。
Innovation Facilitator - 社外のカンファレンスに出たり、コンサルと仕事したり、イベントやったり、インキュベーションチームにコーチングしたりする何でも屋。(=Innovation Coach)
The Orchestrator - イノベーションを組織の機能に落とし込み、自社のイノベーションキャパシティと整合性をとる。CNO(Chief Innovation Officiar)のアソシエイト。ポートフォリオの事業のチャーンレート、サイズ、構成、自社の戦略的意図との整合性、コスト、ポートフォリオ間でのシナジー、経済的リターンなどのKPIをモニタリング。
CNO - イノベーションの予算、人材プール、持続的イノベーションとのバランスなどモニタリング。全てを統括する者。
2-E. つまり、何?
この本で示されているのは、出島型でありつつも、出島型を超える可能性がある仕組みなのかなと思ってます。DiscoveryやIncubationは固定的な人員(新規事業ばかりやっている人)で支えつつ、事業部移管をする前の緩衝材としてAccelerationフェーズを設けて、そこは社内の各機能の人材を選抜して実行していく。北米の場合、そもそもDiscoveryやIncubationでかなりの人数を置いていて、新規事業に対するコミットメントも高いので実装可能な仕組みですね。
また、ここでは新規事業とオープンイノベーションを機能的に分ける意味はほぼないとされています。(Disocveryは社内からの事業アイデア公募と社外の探索がセットになっています。)日本ではたまに部署が分割されていることがありますが、私もこの二つの機能を別部門で担う必要性は薄いと考えます。
日本では、新規事業となるとどうしても個の力に目がいきがちです。(良くも悪くも、イントラプレナーを過剰に賞賛したり、オープンイノベーション担当者にフィーチェーし過ぎたり。)しかし、仮説検証がめちゃくちゃ得意な人間と、アイデアへの情熱を持っている人間、また、社外のネットワークを広く持っている人間と、社内のネットワークが強い人間はすべて別人格です。
新規事業部門に配属されて、「何をすればいいのか?」となる方は日本では多いと思いますが、北米はよくも悪くもJob Descriptionがこのようにしっかりしています。新規事業部門に複数名配属されている企業の場合は、このような分業体制を構築してもいいかもですね!
以下Beyond The Championのその他メモです:
- 出島型に関しては、IBMのEBOのような成功事例もあるが、プログラムとしては終了してしまう。(機能として定着し辛い。)
- スピンオフは従業員がそもそも"起業家"ではないので難しい。従業員から起業家へのトランスフォーメーションはほぼ無理
- CVCは事業部に落とし込めないのでむずい
- 創業者不在の企業でイノベーションを"文化"として定着させるのはほぼ不可能
有難うございました🙏
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