アパレル用語の煩雑さを解決するには、
先日、アパレル用語に対して企業やブランド、個人でも違うということに問題を感じている方々と話合う機会があり、ウェブミーティングに参加させていただきました。
デザイナーさん、パタンナーさん、工場さんなど、多くの方の意見が聞けたこと、その場を作っていただいたことに第一に感謝させていただきたいと思います。
私はその際に、以前いた会社でしか通用しない前立ての名前のお話をさせていただきました。そのカットソーメーカーでは「坊主べり」と呼んでいた仕様です。私自身が転職して入った会社だったので、聞いたこともない名前に驚いてしまいました。創業100年以上のメーカーだったので、独自の用語を使っていたのかもしれません。
私の習った覚えでは「切り(込み)前立」もしくは「続き前立」くらいが通用する用語だと思います。自分の作成する仕様書には、おそらくどこの工場さんでも通用するであろう用語を使用するようにしていました。
しかし、先日のウェブミーティング後には、これは「片持ち」とも呼ぶことが分かりました。おそらく”片側だけ持ち出し”がある前立ということだと思います。
また、ここで問題が一つ。
「前立て」と「持ち出し」
役割や使う部分としては、ほぼ同じものであるにも関わらず、違う言葉も存在しています。私はこの場合は「持ち出し」を「下前立」と呼んでいました。
しかし、パンツやスカートに関しては、何故か「持ち出し」で統一されているようにも思います。っが、これも私の感覚でしかありません。
このポロシャツの前立は、先の「片持ち」に対して、「両持ち」という工場さんもおられるようです。私は「額縁前立」と呼んでました。
それぞれ認識の異なる単語を統一していくことは、難しいのではということで、やはり図解することが間違いないというお話も出ました。
図解は少し専門知識がないと難しいという問題点、そして上のカーディガンのスラッシュポケットのポケット口のように縫い代に切り込みを入れたり、捻って縫製する部分の図解は難しく、工場さんそれぞれの縫製方法もあります。
私はスリットの仕様を詳しく書いたところ、少しやり方が違うから、自分達の方法で縫製させて欲しいと言われたことがあります。特に外観が変わるわけではなかったので、OKして進行してもらったのですが、詳しく書き過ぎても工場さんとしては困る場合もありそうです。
絶対にこだわらないといけない部分の仕様なのか?
外観さえ同じなら、少々縫製方法が違っても良いのか?
この辺りの判断は、ある程度縫製の専門知識が無いと判断できない生産管理やデザイナーも多いように思います。自分で判断が出来なければ、問い合わせに対して、「頑として書いている通りに縫製して下さい!」と言われた経験はおそらく私だけではないでしょう。
どちらが正しいのか分からないアパレル用語
「見返し」と「身返し」
これは、ジャケットなどの内側のパーツで折り返って外から見える部分です。文字としてはどちらもあり得るので、どちらを使っていても、まあ間違ったりトラブルになることはないでしょうが、統一しておいてほしい気持ちもあります。
「明き」と「開き」
これは、袖口の開く部分であったり、身頃の開く部分のことのはず。ですが、古めのファッション用語の辞典などでは、大抵は「明き」となっています。最近調べた中では、少し混在してきています。ですが、テーラードスーツ等の昔からの技術をイメージさせる場合は、ほぼ「明き」と表記されています。文字の意味からすると、変なこだわりなく「開き」にすればいいのにって、ずっと思ってきました。
分かりやすさと、引き継がれてきた言葉との共生
先日のウェブミーティングでは、用語の統一は難しいのではということでした。確かにこれまで企業や工場で使ってきた言葉があって、それを全員が認識を変えることは、そうそうできることではないでしょう。
意見としてお話させていただいた、Wikipediaのように書き込んでいくシステムは有効に働くように思います。同一の仕様であっても、A社では〇〇で、B社では××と呼んでますと認識できれば問題は軽減されると期待しています。
一番の目的は認識のズレを無くして、実際に製品を作る工場さんが間違わないようにすることに他ならないでしょう。
まだまだ問題はありますが、同じような問題意識を持ってアパレル業界を良くしようと考えておられる方々と現在交流できていることに感謝して、日々研鑽していこうと思うところであります。