1.問題
2.解答例
設問1
1. XはB社に対して甲土地を譲渡しており、平成30年の所得税の計算にあたり、譲渡所得の計算が問題となる(所得税法33条1項)。なお、この資産の譲渡は、同法33条2項1号と2号には該当しない。
2. Xは法人であるB社に対して甲土地を時価2500万円の2分の1に満たない1000万円で売った。このため、Xの収入金額は、甲土地の時価である2500万円とみなされる(同法59条1項2号、同法施行令169条)。
3. 次にXは、Aから甲土地を取得しているが、その「資産の取得に要した金額」(同法38条1項)が問題となる。X(個人)はA(個人)から平成10年に甲土地を1000万円で購入した。この金額は、当時の時価2200万円の2分の1に満たない額である(同法59条2項、同条1項2号、同法施行令169条)。このため、Xの甲土地の取得費は、Aの取得費である1400万円を引き継ぐ(同法60条1項2号)。
4 なお、Xは登記費用を支出している。この点、「資産の取得に要した金額」(同法38条1項)には付随費用が含まれると考える。なぜなら、譲渡費用が控除されるため、取得のための付随費用も含まれると考えるべきだからである(支払利子付随費用判決)。このため、登記費用についても付随費用として取得費に含まれると考える。
5 以上より、収入金額2500万円から取得費1400万円と登記費用を控除し(同法33条3項)、特別控除50万円(同条3項、4項)を控除した後、甲土地の保有期間が5年超(同法60条1項2号により平成10年から30年までの約20年)であるから平準化措置として2分の1すること(同法22条2項2号、33条3項2号)で、算出される金額が課税標準となる。
3.ケースブック租税法〔第5版〕との関係
「§222.06 無償譲渡・転々譲渡と譲渡所得計算」の「3.みなし譲渡と取得費」の⑶②において条文操作がきかれている。採点実感を確認すると、条文操作を漏れなく行うことが必須のようである。すなわち、33条2項への言及、59条2項のあてはめなどをきっちりと行うことが求められるようだ。長期譲渡所得に該当することを指摘するだけではなく、取得費の引き継ぎによる保有期間を明記すると加点になる可能性が示唆されている。あと、登記費用の取得費該当性に言及しないと減点されるようである。