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§312.04 法人成り
1.法人成り
(略)
2.引用文の検討
(略)
3.同族経営者と給与所得控除
⑴「個人事業主、同族会社、給与所得者の課税のバランス」というとき、それぞれに関する課税ルールがどのように異なるがゆえに、バランスが問題になるのか。
個人事業主は、事業所得に対して必要経費を控除できる(所得税法37条1項)だけではなく、一定の範囲で、事実上、親族間での所得分散を図ることが認められている(同法56条、57条1項)。したがって、課税ルールは、所得税法の超過累進税率を緩和することができるようになっている。
同族会社は、法人税法が所得税法と異なり、超過累進税率が採用していないという課税ルールを利用して、法人成りして所得を同族会社に帰属させることで、所得税法の超過累進税率を緩和することができる。
給与所得者は、給与所得控除が認められており(同法28条3項)、実際の支出の裏づけなく、課税標準の低減が認められている。親族を雇用する等の方法で、この課税ルールを利用して、超過累進税率の緩和を図ることが考えられる。
たとえば、国が、法人税率と給与所得控除を高めたとすると、事業所得者は、法人成りするよりも、親族を青色事業専従者として給与を支払うことで、親族全体としては税額を低減することが考えられる。
このように、法人税率、給与所得控除の水準など次第では、納税者の意思決定を左右し得ることから、バランスを意識しなければならないということを説いているのではないかと考える。
⑵(略)
⑶「正規の簿記による青色申告の普及を含め、記帳水準の向上を図」ることに触れているのは、いかなる理由によるか。
事業所得のある個人事業主の記帳水準が向上すると、信頼できる帳簿組織にもとづいた申告が可能となる。同時に、貸借対照表と損益計算書への個人事業主の理解が深まり、政策立案者の企図する前述の「バランス」に沿った、意思決定を行うことになりえる。このため、記帳水準の向上に触れているのではないかと思う。
⑷ 法人成りにより個人事業所得が法人から受ける給与所得に転化することと、給与所得控除の水準の設定は、どのような関係にあるか。
たとえば、個人事業所得が6000万円の事業所得をえており、利益率が高い(80%)とする。必要経費(1200万円)を控除後4800万円となるため税額は1944万1800円となり、手取りは2855万8200円となる。
かりに、法人成りすると、益金6000万円、損金1200万円となる。4800万円全額を給与として支払ったとすると、現行法の下では、給与所得控除額は195万円となり、税額は1856万4300円となり、手取りは2943万5700円となる。
給与所得控除額だけ減額され、手取りが増えるため、給与所得控除の水準を高く設定すると、法人成りする誘引となりうるという関係にある。「なお、所得税・法人税に加えて社会保険料を考慮すると、法人成りにより負担が増加する場合が多いことに留意すべきである。」(ケースブック租税法〔第6版〕366頁)という指摘には留意すべきである。
なお、計算に用いたエクセルのスクリーンショットは以下のとおりである。
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4.相互参照
(略)
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