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§221.02 配当所得の意義

1.配当所得の判断基準

⑴ 本件判決は、「配当所得とは法人の利益の配当の実質を有するものを指す」と判示したといえるか。ある所得が「配当所得」を構成する「利益の配当」に該当するか否かについての、本件判決が挙げる判断基準をまとめよ。

(ケースブック租税法〔第6版〕166頁)

 法人の利益の配当の実質を、会社法上の分配規制などの規制に従った金銭の支払いであると解するならば、本件判決は、利益配当の実質を有するものに限定していないと思われる。なぜなら、いわゆる蛸配当の禁止に違反する金銭の支払いも配当所得に含まれると判示しているからである。
 本件判決は、「所得税法上の利益配当とは、必ずしも、商法の規定に従って適法になされたものにかぎらず、商法が規制の対象とし、商法の見地からは不適法とされる配当(たとえば蛸配当、株主平等の原則に反する配当等)の如きも、所得税法上の利益配当のうちに含まれるものと解すべきことは所論のとおりである。」としており、会社法に違反する配当であっても所得税法上は、「剰余金の配当」に該当しうるとする。ただ、「本件の株主優待金なるものは、損益計算上利益の有無にかかわらず支払われるものであり株金額の出資に対する利益金として支払われるものとのみは断定し難く、前記取引社会における利益配当と同一性質のものであるとはにわかに認め難いものである。」とし、まったく、出資者に対する利益の分配としての性質を有しないものについては、所得税法上の「剰余金の配当」に該当しないと判示した。

⑵ 株主平等原則に反して一部の株主にのみ支払われた配当は、判例の考え方では、配当所得に当たるか。また、1,000株以上を保有する株主に一律に与えられる時価3万円相当の「株主優待利用券」(当該法人が経営する遊戯施設を無料で利用しうるもの)は、判例の考え方では配当所得に当たるか。

(ケースブック租税法〔第6版〕166頁)

 株主平等原則に反して一部の株主にのみ支払われた配当は、判例の考え方では、配当所得に当たる。なぜなら、判例は、「商法の見地からは不適法とされる配当……の如きも、所得税法上の利益配当のうちに含まれると解すべき」と判断しているからである。
 設問の株主優待利用券は、損益計算上の利益の有無にかかわらず、1,000株以上を保有する株主に一律に与えられている。このため、判例の指摘する「損益計算上利益の有無にかかわらず支払われるものであり株金額の出資に対する利益金として支払われるものとのみは断定し難い」性質を有する。このため、配当所得に当たらないと考える。

⑶ (略)

(ケースブック租税法〔第6版〕166頁)

2.利益の配当から剰余金の配当へ

(略)

3.配当所得の計算

 所得税法23条2項と24条2項とを比較し、配当所得と利子所得の金額の計算方法の差異を指摘せよ。

(ケースブック租税法〔第6版〕167頁)

 利子所得の金額は、その年中の利子等の収入金額とされており、控除が認められていない(所得税法23条2項)。これに対して、配当所得の金額は、その年中の配当等の収入金額とされている点で一致している(同法24条2項本文)。しかし、株式等の元本を取得するために要した負債の利子でその年中に支払うものについては、控除を認めている点で異なる(同項但書)。(なお、佐藤〔第3版〕70頁を参照。)

4.総合課税と申告不要制度

⑴ 配当所得が総合課税される場合に適用される特徴的な制度は何か。また、それは何のために存在する制度であるといえるか。

(ケースブック租税法〔第6版〕167頁)

 配当所得が総合課税される場合に適用される制度として、配当控除がある(所得税法92条)。この制度は、個人で事業を行っている者と、一人会社で事業を行っている者が税引き後利益を配当として受け取っている場合との間で、手取額を調整することを目的とする制度であると考える。なお、どのように調整するのか立法政策の問題である。(佐藤〔第3版〕71-72頁参照)

⑵ 現行制度の下では、上場株式に対する配当は、原則として15%の源泉徴収の対象となり(租特8条の4)、それについての申告は不要(給与所得者の確定申告の要否を判断する給与所得、退職所得以外の所得が20万円以下かどうかの要件についても、これらの配当の金額は除外されている。§223.04 N&Q 5.参照)とされている(租特8条の5)。ここで、通常は確定申告書の提出義務を負わない給与所得者がこれらの制度が適用される相当額の配当所得を受け取った場合に、この制度が持つ機能について検討せよ。また、§221.03を参照し、このような制度とされた理由を考えてみよ。

(ケースブック租税法〔第6版〕167頁)

 配当所得について、課税関係を源泉徴収で完結する制度は、かかる給与所得者が、課税実務の観点から、配当所得を獲得しやすくするという機能を有する。
 設問の制度がなければ、給与所得者は、配当所得が総合課税される場合には、確定申告書の提出義務を負うことになる。しかし、確定申告書の作成は、事務作業が煩雑となりかねず、源泉徴収と年末調整により課税関係が完結する制度に慣れている給与所得者は、配当所得を獲得するような行動を起こしにくいと考えられる。この点、政府は、貯蓄から投資への国民資産の移行を政策としており、その実現のためには、確定申告書の提出義務を負わない給与所得者にも、株式等への投資を通じた配当所得の獲得を促進する必要があった。このため、上述の機能を有する制度を導入したと考える。

5.法人取引と配当所得

(略)

6.関連裁判例

(略)

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