§232.02 権利確定主義⑵ – 発展問題
1.事件のその後
(略)
2.一審判決との比較
この点、「どちらの判決も『原告の側がなすべきことをすべて終わったか』という基準で、権利の確定を判定しようとしていることに違いはありません」と解説されている(佐藤〔第4版〕261-263頁)。つまり、本件判決は、「明渡しの期限までに当該土地を明け渡しさえすれば、その後は他の一般国民と同様に国の使用権の行使を受忍する義務を負うのみであって、そこには継続的な役務の提供行為を観念することができず、また、右明渡しの不履行でさえ収用法72条の補償金の保持に影響するものではない」ことし、土地の明渡しにより、「原告の側がなすべきことをすべて終わった」ため、本件の補償金を受領した年に権利が確定したと判断した。これに対して、一審判決は、「本件補償金は、Xらがその所有する土地を一定期間国に使用させるという役務を提供することにより、その期間に対応する対価として支払われたもの、すなわち土地使用の対価であると解すべきである」とし、土地使用を認めることで「原告の側がなすべきことをすべて終」えるため、使用収益させる期間が経過するごとに、時々刻々と、権利が確定すると判断した。