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§212.01 納税義務者の種類


1.類似の概念

 所得税法上の「納税義務者」は、「担税者」、「徴収納付義務者」とどのような点で異なり、どのような点で類似するか調べてみよ。

(ケースブック租税法〔第6版〕136頁)

 「納税義務者」は、「本来の納税義務の主体」、すなわち租税法律関係において租税債務を負担する者」をいう。これに対して、「担税者」は、「経済上租税を負担する者」をいう。納税義務者は、経済上租税を負担する者とは限らないため、担税者とは異なると考える。また、「徴収納付義務者」は、「租税法上の給付義務であっても、源泉徴収義務(所得税)、特別徴収義務(住民税・ゴルフ場利用税・入湯税等)のように、納税義務者から租税を徴収し、これを租税債権者に納付する義務……を負担している者」という。徴収納付義務者は、納税義務者から租税を徴収するため納税義務者ではない。

※ 金子〔第23版〕156頁参照。

2.納税義務の拡張

(略)

3.納税義務者の種類と意義

 納税義務者は無制限納税義務者と制限納税義務者とに分けられる。この区別は、国際的な所得課税を考える際に重要である。引用文献を読み、現行法において、非永住者以外の居住者、非永住者、および、非居住者がそれぞれどのような態様の納税義務を負っているかをまとめよ。

(ケースブック租税法〔第6版〕136-137頁)

 非永住者以外の居住者は、所得の源泉地を問わずすべての所得が課税対象とされる(所得税法7条1項1号)。
 非居住者は、「居住者以外の個人」とされ(同法2条1項5号)非居住者に対しては国内源泉所得のみが課税対象とされる(同法7条1項3号)。
 非永住者は、居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ過去10年以内において国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である個人とされる(同法2条1項4号)。国外源泉所得以外の所得、および、国外源泉所得で国内において支払われ、または国外から送金されたものが課税対象とされる(同法7条1項2号)。

4.非永住者制度の根拠と問題点

 ①非永住者制度はどのような理由で設けられたのか、②平成18年度改正前は、非永住者制度にどのような問題点があったか、の2点を調査せよ。また、この改正により、その問題点がどのように解消されたかを検討せよ。

(ケースブック租税法〔第6版〕137頁)

設問①について

 「そもそも、非永住者制度創設前は、不平等条約の影響の下、外国籍の者は課税対象として認識されていなかった(国籍主義の採用)。その後居住者外国人の数が増加したこともあり、法律上外国籍の者が我が国の納税義務者となることなどが明示された(明治32年改正)。敗戦による占領期は、事実上の措置(SCAPIN)により居住外国人への課税が緩和されていた時期があったが、昭和25年措置法改正によりさまざまな優遇措置が法令化された。
 課税上の問題(国際的二重課税と執行管轄権の制約)に対しては国外所得免除方式を採用することで対処されていた(明治32年改正・大正9年改正)。生活費を課税最低限とする生活費課税方式(昭和25年措置法改正)は、国外所得の発生や送金の事実を網羅的に把握することが執行上困難であることから手当てされた。」
 「非永住者制度は、昭和31年答申をきっかけに、昭和25年措置法改正で導入された送金ベース課税方式と国内払課税方式を基礎とした恒久的措置として所得税法に創設された。創設理由は、人材の確保という政策目的実現の際に税負担が阻害要因とならないよう税負担を軽くすることにあった。」
 以上につき、植田祐美子「非永住者制度の今日的存在意義」(税務大学校論叢105号)146-147頁参照。

設問②について

 平成18年改正は、租税回避行為を防止する観点から実施されたとされる。改正前の非永住者は、「居住者のうち、国内に永住する意思がなく、かつ、現在まで引き続いて5年以下の期間国内に住所又は居所を有する個人」とされていた(旧所得税法2条1項4号)。財務省の解説では、次の例が、非永住者制度の趣旨を逸脱する事例として紹介されている。
 「1つは、外資系企業に就職した者(日本国籍)が国外で数年間勤務した後、日本企業に転職して日本の自宅から通勤しているような場合でも永住の意思がないとして非永住者の適用を受けている事例である。もう1つは、外資系金融機関の日本支店に勤める者が平成9年に来日した後平成13年まで非永住者として申告していたところ、平成14年の途中にアメリカに帰国した後平成15年に再度来日し、平成15年から非永住者の適用を受けている事例である。
 このような事例に対処するために国籍要件が導入され、本人の意思という主観的課税要件が削除されるとともに、過去10年のうち5年間が非永住者の対象期間とされた。」
 以上につき、植田祐美子「非永住者制度の今日的存在意義」(税務大学校論叢105号)208-209頁参照。

5.関連裁判例

(略)

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