フルプライムを考える3「ギャモンを獲る2」

下記の続きです。

というわけで、続いてポジション提示。


ポジション5

White to play 3-4

まあ選択肢は単純で、「ヒットするのかしないのか」

英訳すると"To Hit, or Not To Hit" となる。バックギャモンの永遠のテーマとも言えそうだが。

ぜひ買って読んでみたいが値段が凄くてビビっている。

さて実戦ではビビってヒットしなかった。理由は相手の4プライムにビビってしまったからで、相手にブロットが出たらヒットもありかな、なんて考えていた節があるが、次にインナーにブロットが出る目はない。また、このままヒットせずに無難に進めばクラッシュするのは自分。そしてその後なんとかクローズアウトしたとしても、相手のポジションも進んでいるのでギャモン勝ちが見込めない。

スロットと異なり、ヒットには「相手の手を止める」という効果がある(注)。打ち返されたときのことばかり考えてビビってしまったが、ダンスしてもらえば、この局面で相手はフリーズしたままほぼクローズアウトに持ち込める。ということは、よりギャモン勝ちが多くなる。

(注)テンポヒット:通常ヒットするときは相手のチェッカーを攻撃するときに行うが、そうではなく相手の動きを止めたいときに行うヒット。ヒットされることで、相手は二つの目のうち一つをエンターに使わざるを得ず、結果的に一つの目しか有効に使うことができない。

実際に解析結果を見ても、勝率はほぼ変わらず、ギャモン率はヒットした方が断然高い。

ポジション6

White to play 1-4

再び「ヒットするのかしないのか」問題。

関西弁で言うと「ヒットするんか~い! せーへんのか~い!」と、一見下品で恐縮だが関西人なら知らない人はいない(はず)「〇〇ドリル」を思い出してしまった(一応自粛してみたが以下省略)。

で、話は戻るが、この時の自分はヒットせず。

「せーへんのか~い

どうもこの時の自分は「プライムの端から離れたポイントはヒットせず、次に2ポイント作ってプライムを前進させた方が良い」という観念を持っていたような気がする。

というわけでブランダーを献上

今の自分なら躊躇わずヒットすると思う。

先ほども出てきたように「相手の手を止める」という効果は強く、18ポイントを作ることを阻止しているので、次に2枚目を拾う可能性がある。また、リターンされたとしてもフルプライムはそのままでしかもその端からは離れている「脱出困難なポイント」であり、またインナーブロットもあるので、さらに2枚目を狙える。

とヒットすればいいことがたくさんあり、ギャモン率を押し上げるのみならず勝率も上げている。

ポジション7

White to play 3-3

ポジション5と同じゲームの続き。動かしたかった21ポイントのチェッカーは動けないので、実質これも「ヒットするのかしないのか」問題。

「ヒットせーへんのか~い!」

この時もヒットせず。やはり上記と同じ「フルプライムから離れたポイントは攻撃せず、フルプライムを維持する」という観念があったのだろうと思う。

「ヒットすんのかい!」

で、実際はヒットした方が勝率もギャモン率もよい。ヒットしないことで相手の手を止めずに、どんどんギャモン率を下げる結果となっている。

ポジション8

White to play 5-5

今度は「ヒットはするけど…」問題。7/2*は避けがたく、その場合もう一枚2に動かすのが自然。ということは、あと2回をどうするのか? と考えるのが普通なのだが。

「ヒットせーへんのか~い!」

これまたビビッてしまって安全策をチョイス。

「ヒットすんのかい!」ヒットすんねん。

で、ヒットした後あと3回をどうするか問題。一見1ポイントのブロットが気になる。カバーするためには6ポイントのチェッカーを動かすしかないのだが、その場合は6ポイントが空いてしまう。

ピップを数えると、実はレースは差がないことに気が付く。ということは、6を空けるのは悪手であるということに気が付く。6の目でエンターされると容易に走られるからだ。

また、1ポイントをヒットされたとして、相手のボードは崩壊しておりエンターは難しくない。むしろ相手の方が脱出に手間取るだろう。

というわけで、ヒットして1ポイントを放置する手が支持される。ギャモン率もヒットしないより全然高いし、勝率も高いという結果になっている。

ポジション9

White to play 4-4

できれば2ポイントをカバーしたかったが出来なかった。ていうかフルプライムを崩さざるを得ない目は44と55くらいか。55はまだ2ポイントカバーできるが、44ってどっちもできないじゃないか!

で、相手の5ポイントボードにもビビッてしまい、ヒットだけは避けたいとまずは2ポイントをカバーしてヒットを阻止したが、この手だけでもうあとはどう動かそうがブランダー。

2ポイントは、ヒットされても5プライムを維持している限り怖くない。複数のチェッカーに対するプライムは非常に強い。

 Bill Rbertieの名著で「501 Essential Backgammon Problems(以下「501」)」という本がある。序盤から終盤まで501のポジションを考える問題集なのだが、この「501」で出会った名言で、自分が最も好きな一つが"attack one checker, prime two checkers"である。

つまり、「バックチェッカーが1枚の場合はヒットしろ、2枚(あるいはそれ以上)の場合はプライムで対抗しろ」ということで、単純ではあるが初級者から使えて上級者でも非常に応用が利くという、とても有難い格言なのだ。この格言通りにプライムを維持する方が今回もやはり強く、ギャモン率も最も高い。

(なんと残念なことにJBSショップでは売り切れ! アメリカのAmazon.comでも売ってなさそうなので、今後は手に入らないのかも)

いやー、ギャモンって面白いですね!



いいなと思ったら応援しよう!